15
『大丈夫〜?のんちゃ〜ん。あたし気にしないから教えてよ〜。』
『2組の田村さん知ってる〜?あの子のね…』
『え〜。そうなの〜?こわ〜い』
『あの子もそうなんじゃないの〜』
『やだ〜。』
『きも〜い。』
『彼氏もビビってんじゃないの〜?』
『一緒だよ〜。だって…』
私は違う。関係無い。
嫌…。嫌だ。
こんなの、私。
もう、どうすればいいの。
わたし…何も…してない…よ…。
ようちゃん…何で…。
「!!」
目覚めは最悪だった。
動悸が激しくて…。
手のひらで顔を覆う。
指先に触れた水。
涙なのか汗なのか、知りたくもない。
悪夢。
もういいかげん逃れられたと思ったのに。
悪夢は定期的にやってきて私を苦しめる。
「ようちゃん…。」
彼女の名前は切なすぎる。
陽子。太陽の陽。
彼女はもう、完全に翳ってしまった。
涙が頬をつたう。
私はただ、静かに泣いていた。
涙は止めどなく頬をつたっていく。
彼女の白過ぎる肌。
やせ過ぎた体。
錠剤の散らばった部屋。
あの日から私はひとりになった。
たったひとり。
今もずっと。
でも。
最初からひとりだったのかもしれない。
彼女は私に何も言わなかった。
何ひとつ残さなかった。
それだけが事実。
涙はまだ止まらない。
今日はもうどこにも行けない。
いなくなった彼女に囚われてしまったから。
ねぇ、佐藤くん。
佐藤くんと会わなくなって、まだ数日しかたっていないよね。
佐藤くんと一緒にいる時は、悪夢は見なかったのに。
弱ってしまったのは、妊娠したせいかしら?
少しだけ会いたいと思うのは、私のわがままだよね…。