12
店を出る頃には辺りは薄暗く、慌しい夕方だった。
「今日は本当にありがとうございました。」
ペコリと頭を下げた。
小西さんは笑っていた。
「のんちゃん。」
さようならを言おうとしたら、小西さんにさえぎられた。
「僕、思うんだけど。のんちゃん、彼氏ともう一回ちゃんと話した方がいいよ。」
「えっ。」
「頑固なのんちゃんの彼氏なんだから、そんなに悪い奴には思えなかったよ。」
悪い奴ではないけど…。
「まぁ。僕の言う事なんてあてにならないかもしれないけど。またおいでよ。この時間はのんちゃんの為にあけておくよ。あとこれおかえし。」
赤い紙袋。
中にはリンゴとグレープフルーツ。
「こんなものしかなくてね。今度はブリュレを食べにおいでよ。おすすめだよ。」
「ありがとう。」
夕方の町をひとりで歩く。
赤い紙袋1つぶら下げて。
佐藤くんの事を思い出した。
コーラが飲みたくなった。
小西さんは不思議な人だ。
私はすっかり心を開いてしまっている。
でも、もう店に行くのは止めよう。
これ以上の事は知られたくないんだ。
でも…。
佐藤くんは、私の事何も気にしてないみたいだしもう少しこのままでいようかなぁ。
小西さんのブリュレも気になるし…。
帰り道コーラを買った。
その場でペットボトルを開ける。
シュワシュワ炭酸の音がした。
一口飲んでふたを閉じた。
私には炭酸がキツイ。
こんなものをゴクゴク飲むなんて、佐藤くんは意外と図太いのかしら…。
急に佐藤くんがわからなくなった。