魔王素振りの刑
「カイ達がいない?」
「はっ。 この国の王を脅し、捜索させましたが、カイと新入りの姿を見たものはいないと……」
「ドラ一とドラニもいないっぽいぜぇ? 王様脅してきたけど、ドラゴンなんて見ていないの一点張りだったからなぁ」
王様を脅してまで作った捜索網に引っかからないなんて、カイ達は何処にいるんだ?
というか、こいつらは何故、平然と王様を脅しているんだ?馬鹿なのか?
「もしかすると…… いえ、何でもないです」
クロエが気不味そうな顔で、言いかけた言葉を飲み込む。
「どうしたんだ?」
そんな顔されたら続きが気になるじゃないか。
「そ、その…… まだ、公国にたどり着いていないのでは?」
「…ふむ」
それならそれで構わない。
カイとオトコが生きているなら細かいことはどうでも良いのだが……
「師匠、一度道場に戻りますか?」
「…ふむ」
「オイラの背中に乗れば一瞬だぜぇ? ドラ三も魔王に回復してもらったし、放って置いても後から帰ってくるだろうしな!」
「じゃあ、一度帰るか」
俺は、ここまで運んでくれたうえに、共に竜騎士として戦ったドラ三に別れを告げ、巨大化したトカゲに張り付く。
「乗ったなぁ? じゃあ、いくぞぅ!」
「ちょっと待て!」
飛び立とうとするトカゲを止めて、懐から取り出した魔王殺しを一気に煽る。
「主ぃ…… 飲酒飛行は危険なんだぞぅ?」
トカゲが咎めてくるが、俺は気にしない。
落ちたら死ぬのに、魔王殺しを飲まないなんて、それこそ危険だからな。
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行きの半分にも満たない時間で道場に帰ってきた俺たちを待っていたのは、慌てた様子の弟子達の会話だった。
「何で兄弟子達を騙したの!? 師匠はなんとかなりそうな気もするけれど、兄弟子達に騙したことがバレたら絶対に怒るわ!」
「うぅ…… だって、師匠が心配だったです……」
クレナの追及にルナが答えるという、珍しい会話が聞こえてくる。
魔王達を騙す?俺は気になって、小声で魔王達に待機を命じ、聞き耳を立てた。
「心配な気持ちはわかるけど、師匠は剣神なのよ?」
「で、でも…… 師匠、剣も持たずに行っちゃったです……」
「それは確かに心配ね……」
ルナの答えに納得した様子のクレナ。
確かに剣神なのに剣の一つも持たずに戦場に突撃したら心配されるよな。
俺は剣神じゃないし、剣を持って行かなかった理由は、あっても荷物になるだけだからだが、弟子達を心配させてしまうなら形だけでも剣を腰に差していけばよかった。
「そ、それより、師匠が帰ってきたら打ち合わせ通りするですよ?」
「う、うん。 でも、素直に謝るのが一番じゃないかしら?」
「師匠は色仕掛けで攻めるのが一番です」
何やら不穏な会話が聞こえてくる……
それ以降、会話が無くなったので、俺は意を決して道場の扉を開いた。
「師匠ぉ、おかえりですぅ!」
「おかえりなさぁい」
薄着で際どい格好をした、ルナとクレナが近づいてくる。
「え? うん、ただいま」
動揺して変な声が出た。
こいつら何を企んでいるんだ?
「頑張った師匠にご褒美です! 今日は私とクレナがサービスするですぅ」
「そうね、だから…… 許して欲しいことがあるの」
クレナがそう言うと、二人は上目遣いで俺を見上げる。
随分息があってるな……この連携を打ち合わせしていたのか?
「カイとオトコは、気分転換にカブトムシ捕りに行ってたです」
「ドラ一とドラニは、近くの川で仲良く水浴びをしていたらしいわ」
「…ふむ」
ルナとクレナは衝撃の事実をさらっと口にして、俺の両腕を抱きしめた。
そして、胸を押し当て、上目遣いのまま、
「「許して♡」」
と、口にした。
「魔王……こいつらどう処す?」
「そうですなぁ」
考える素振りを見せる魔王。
ルナとクレナが慌てた様子で会話に割り込む。
「だ、駄目です! 可愛い弟子達のちょっとした勘違いなんて、笑って許せです!」
「そうよ! 悪気なんてなかったの。 だから、許して?師匠ぉ……」
確かに悪気は無かったのだろう。
だが、俺は戦争地域に突撃させられたんだぞ!?
「やはりあれですな…… 我が素振りを教えてやりますか」
「もしかして、昔カイにやったあれか?」
「そうです」
魔王に背後から手を掴まれ、そのまま目にも止まらぬ速さで素振りをされるという地獄の鍛錬なら罰に最適だな。
「い、嫌です! 師匠、絶対に嫌です! 腕が曲がっちゃいけない方向に曲がる素振りなんて鍛錬じゃないです!拷問です!」
「駄目よ師匠! 何でもするからそれだけはやめて!」
焦りに焦って、胸をぐいぐい押し当ててくるルナとクレナに、俺はニヤリと微笑む。
「魔王素振りの刑に処す」
「「いやぁぁあああ!!」」
俺を戦地に放り込んだ罪に知るが良い。




