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無敵状態

「剣神様、こちらです」


 俺たちはエルフ達の案内で、エルフ達が魔界に侵入するために作ったという『ゲート』を通り帝国に侵入し、世界樹の巫女とやらが幽閉されているという帝国城内にある地下牢へ向かうことになった。


 数日間、トカゲと喧嘩し続けたクロエは突入メンバーから外れた。


 クロエは大丈夫だと言い張っていたが、なんとか魔王が説得に成功した形だ。


 俺とクロエを入れ替えないかな?

 なんで、俺は当然の様に突入メンバーに入ってるの?


「城攻めとは心躍りますなぁ。 師匠、如何して落としますか?」


「魔王はわかってねぇなぁ。 城攻めの基本は正面突破だろうが」


 俺は城攻めの基本なんて全く知らないが、正面突破が基本ではない事だけは断言できる。


「ほぅ。 コッコよ、まさか経験者か?」


「昔、ドラゴンの間で流行った時に幾つか落としたなぁ。 オイラにかかれば、ブレス一発でボンッよ」


 なんて物騒な流行なんだ……

 その時代に生きていなくて良かった。


「まぁ、見てろよぅ」


 そう言って、トカゲはぐんぐん大きくなっていく。


「グルルァァアアアッ!!!!」


 城に向かって火を吹いた。


 城内にいた人々は悲鳴を上げながら逃げ惑っている。


「主は神様だから殺しは嫌いだろぅ? 加減したから多分死人は出てないぜ!」


 そ、そうか。トカゲなりに俺の気持ちを汲んでくれていたんだね。

 

「ほぅ、死者を出さずに城を落とすとは…… これは良い鍛錬になりそうですなぁ」


 なんでも鍛錬に結びつけるのやめてくれよ。頼むから。


「さぁ、行きますか」


「よっしゃ!久々の城攻め開始だぜぇ!」


 威勢のいい言葉とは裏腹に動き出そうとしない魔王とトカゲ。


 まさか……俺に先行しろとでも言うつもりか?


「師匠、どうかされましたか?」


「…ふむ」


 いや、お前らが先に行けよ。

 クソ雑魚な俺が先行してもどうにもならねぇよ。


「ああ、燃やしちまったから正面がどれかわからねぇんだな? 確かに何処が正面なのかわからねぇなぁ」


「むぅ? 何処からでも良いのではないか? 」


「全く、魔王には美学がねぇ。 オイラ達が向かった先が裏口だったらどうする気だぁ? 裏口から城攻めするなんて恥ずかしい真似、神様にさせる気かよ?」


「な、なんと…… 師匠、考えが足らず申し訳なく」


「わかればいいんだよ。 なぁ、主?」


「…ふむ」


 謎の美学を持つトカゲの暴走のせいで、地下牢にこっそり侵入してバレないように巫女を救出するという選択肢はすでにない。


 ならば、


「魔王、アレちょうだい。アレ」


「むぅ? アレとは?」


 トカゲのブレスを無傷で耐えきったアレだよ。多分魔法。


 無敵状態で正面から巫女様を救う。

 これしかないだろ!


「おお、わかりましたぞ!」


 魔王が何やら唱えると、手の付近に黒いモヤが発生した。


 魔王は、そのモヤの中に手を入れる。


「さぁ、どうぞ。 お召し上がりくだされ」


 そう言って、水が入った容器を俺に渡す。


 無敵状態は魔法ではなく、この水のおかげだったのか。


 こんな水、飲んだことあったかな?

 魔王城で飲んだ水がこれだったのだろうか。


 俺は蓋を開け、一気に飲み干した。


「ひっく」


 喉が焼けるほど熱い。

 だが、非常に気分が上がる!


 なんだか思考が上手くまとまらない気がするぞ!!


「魔王、何を飲ませたんだぁ?」


「酒だ。 その名も『魔王殺し』 一口飲めば、頭がパーになる代物よ」


「な、なんでそんなもの城攻め前に飲ませたんだ!?」


「鍛錬を見てもらう対価に、魔王殺しを用意すると約束していたのだ。 魔法ではなく、ドラゴンブレスであったが斬れぬ物を斬る鍛錬には変わりないのだ。 ならば、用意するべきであろう」


「今じゃなくてもよくないかぁ?」


「ふっ。 まさかコッコは師匠を心配しているのか? だとすれば、過ぎた心配であろう。 師匠が頭パーになったところで、負ける姿など想像もつかぬ」


「確かにそうだなぁ。 じゃあいいか」


 魔王達は何やらぐちぐち話しているようだが、どうでもいい。


 俺は今、非常に気分が良いのだ!

 巨乳幼女エルフをさっさと救って祝杯をあげようぞ!


「行くぞ、我が使徒たちよ! その力、格下神に見せ付けてやれ!」


「はっ!」


「よっしゃぁあ! 燃やすぜぇ!」


 俺は魔王とトカゲを従え、ゆっくりと歩を進める。


 クソ雑魚とはいえ、今は魔王のおかげで無敵状態なのだ。神様ムーブでも楽しむ事にしよう。


「くっ! 剣神! 覚悟せよ!」


 帝国兵が斬りかかってくる。


 俺は、何もせずにそれを見つめていた。

 だが、勝手に剣の方から逸れていく。


 喉が焼ける水のおかげで、しっかり無敵状態に入っているようだ。


「ふっ。貴様はまだ、神に挑む資格はないようだ」


「資格が無い奴は攻撃が当たらないのかぁ?」


「当然。 誰でも挑めるほど、神という存在は安くない」


「そうかぁ。 そりゃあそうだよなぁ」


 呆然とした表情でこちらを見てくる兵士達。


 俺たちは気にせずに歩を進めると、兵士達が慌てた様子で、俺たちが通る道を空ける。


「むぅ、敵意を失っておりますなぁ。 つまらぬ……これでは、鍛錬にもなりませんぞ」


「魔王は人間相手に期待しすぎだろ。 神様と、その使徒二人を前にしてるんだぜ? 萎縮してなにも出来ねぇのが普通だぜぇ」


 いつの間にか、俺の使徒になっていた魔王とトカゲ。


 俺は使徒を従え、萎縮して動かない兵士達を置き去りにして、ゆっくりと地下牢のほうへ歩を進めた。

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