エルフ
エルフの森。
世界樹を柱とした強固な自然の要塞と人族に恐れられたその森は、今はその姿を成していない。
帝国による猛攻。エルフ達の防戦も虚しく、エルフの森は焼け野原になってしまった。
敗北したエルフ達は、唯一世界樹と交信できる『世界樹の巫女』を最後の希望に帝国による支配に耐えていた。
いつの日か元の生活に……
そんな希望をちらつかせながら、帝国はエルフ達を強制労働に従事させているのだ。
「女神様からの命令だ。 お前たちには魔界で暴れてもらう」
「魔界? 何故だ?」
魔族にとっては住みやすい土地だが、人間にとって住み辛い土地なはず。
土地を巡り戦争を仕掛けるのはいつだって人間。
その人間にとって住み辛い土地なのだ。
人間と魔族は住み分けが出来ているものだと思っていたが……
「魔界に建設されるある建物を破壊。及び建設を妨害せよ」
「建物? 何の建物だ?」
魔族は帝国に抵抗する為に要塞でも建てるつもりなのか?
「道場だ」
道場……?聞き間違いか?
「もう一度言ってくれ」
「道場だ」
聞き間違いではなかった。
「何故だ? わざわざ妨害する意図がわからないのだが」
「ふっ、お前達には女神様の考えなど理解できるはずがないだろう」
エルフを見下した態度を取る人間。
だが、いまいち怒る気になれない。
道場建設を妨害する女神の意図など、理解したいとも思わないからだ。
「道場は……危険だ」
「え?」
道場が危険?
エルフと人間では道場に対する認識が違うのか?
「勇者様が負けてしまう可能性がある」
勇者。その単語を聞いて、溢れ出しそうになる怒りを何とか抑える。
巫女様を人質に取られている今、反抗するわけにはいかない。
「何故、道場を建設されると勇者が負けるのだ?」
巨乳幼女にしか興奮できぬ変態だが、実力は確かな勇者。
それが何故、道場が建設されると負けるのだろうか。
「勇者様の寿命が尽きるのだ」
「は?」
「道場を建てられると勇者様の寿命が尽きる」
何を言っているのだ、この馬鹿は。
「ふっ、お前の疑問に一々答えてやる必要もないな。 命令に従わぬなら……お前達の大事な巫女を勇者様がどうするか、わかるな?」
巨乳幼女の巫女様の貞操が危ない!
「ッ! わかった。 道場を破壊。及び、その建設を妨害すれば良いのだな?」
「そうだ。 俺が監視の任につく。 失敗は許さんからな?」
「ふんっ」
女神の意図は全くわからないが、巫女様の貞操を守るために道場を破壊させてもらうぞ、魔族達よ。




