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命懸けのオ○ニー

 色々と酷い日々だった。本当に疲れた。

 

 魔王からゲートが完成したと報告を受けた俺はすでに纏めていた荷物を持ち誰よりも早く完成したゲートに向かった。


 俺の迅速すぎる行動に、弟子達は呆気に取られていたが構うものか。


 俺は早く魔界に行きたいのだ。

 できれば、魔王と二人で。


「師匠、早すぎです! そんなに魔界が楽しみです?」


 そうだな。少なくとも、魔界の貨幣を持っていない俺は、魔界では無意識のうちに貢ぐ心配がないからな。


「流石だな師匠! 地獄が楽しみとか頭おかしいぜ!」


 そうだな。でも、全身に砂糖を塗りたくってカブトムシに求愛するよりはマシだと思う。


「ごめんなさい師匠。 ちょっとカトリーヌを持ってもらえないかしら? 私両手が塞がっているの」


 そうだな。お前の両手はステファニーとジョナサンで塞がっているな。新しいぬいぐるみを気に入ってくれて貢いだ俺も嬉しいよ。



 俺はカトリーヌと自分の荷物を両手に抱え、魔界が怖いから……と、俺を盾にする気満々のルナを背負いながらゲートへたどり着いた。


「ふっ、貴方が剣神様かしら? あまり強そうじゃないわね? 魔王様の目は節穴なのかしら」


 誰だろ、この巨乳なお姉ちゃん。

 

 誰だかわからないが、俺はもしかして煽られているのか?じゃあ残念だったな。

 俺もぬいぐるみ片手に少女背負ってる謎の男が強そうだとは流石に思わないよ。


 煽られたにも関わらず、全く態度を変えずにじろじろとおっぱいを観察する俺にルナがチョップした。


「そんなにおっぱいが好きです? かーわいい弟子と密着してるのにいけない師匠です。 おっぱい成分はクレナで満足しろです」


「あのおっぱいはお金が掛かるから嫌」


「人間界にお金の掛からないおっぱいなんてないです」


 そうか……じゃあ余計に魔界産のおっぱい成分を補充しないといけないな。


「信者に随分甘い神様なのね〜。 本当に神様なのかしら?」


 何故か俺を煽りたくて堪らないらしいおっぱいには申し訳ないが、その煽りは全く俺に刺さらない。だって俺神様じゃないもの。


 

 だが、その煽り文句がぶっ刺さってしまったやつがいた……魔王である。


「貴様ぁぁあああ!!!! 貴様には迷惑をかけたと黙っていれば好き放題言いおって! 我が師の神々しいお姿を見て何も感じぬなら……死ね。 我が師より賜った剣術で真っ二つにしてくれようぞ」


 やべぇ、魔王がキレた。

 というか、魔王には俺が神々しく見えてるのか……意味がわからないな。


「んひぃぃぃぃ!!!!」


「そこへ直れ、一太刀であの世に送ってやる」


 巨乳なお姉ちゃんが魔王の威圧感のせいでお漏らししてしまった。

 ついでに言うと、俺の腰辺りが濡れている。


「ルナ……お前……」


「…………言うなです。 兄弟子のせいで三回目です。 もうお嫁さんにいけないです……」


「…ふむ」


 犯人(魔王)と結婚すれば良いんじゃないかな。

 王様なんだからお金持ちだろうし。


「責任とって結婚しろです!師匠!」


「勘弁してくださいお願いします」


「何が不満です! 今ならクレナも付いてくるです!」


 オマケでクレナが付いてきても貢ぐ金額が増えるだけである。つまりマイナスじゃねぇか。


 責任とれ!勘弁してください。そんなやり取りをしていた俺たちの目の前で魔王が剣を抜き、構えた。


「やめよ、魔王。 つまらぬ事で剣を抜くな」


 目の前で殺人とかやめてまじで。


「し、しかし……神である師匠を貶めたのですぞ!」


「…ふむ」


 信仰する神が貶められたら、激怒するのは当たり前だろう。でも、俺が原因で人死は勘弁してほしい。


 だって俺、神様じゃないし。


 俺はどう魔王を宥めようかと考え、魔王に火をつけてしまったおっぱいに目をやると、


「はぁはぁはぁはぁ…… んっ」


 非常に気持ちよさそうな顔をしていた。


「ルナ、あれどう思う?」


「感じてるです。 気持ちはわかるです」


「…ふむ」


 つまり、俺を煽って魔王に火をつけたこの茶番は命懸けのオ○ニーという事でよろしいか?


 俺は一気に面倒になって魔王に命じた。


「魔王よ、やれ」


「御意」


「お待ちください!!魔王様、剣神様、どうかステラにご慈悲を!!」


 変態の側にいた疲れた顔をしたダンディなおじさんが魔王と変態の間に入った。


「どけ、シグ! 貴様の娘だからといって容赦はせぬ!!」


「そこをどうかご慈悲を…… 娘は、娘は……」


 命懸けでオ○ニーする娘を持った父は大変だなぁ。そりゃあ疲れた顔してるわ。


「謁見のあの日から、魔王様にその……恋心を抱いておりまして。 なんとか魔王様の気を引きたいと考え、神を貶めるなどと子供じみた事をしでかしたのではと愚考いたします」


「ぬ、ぬぅ?」


 やりおるな、この父。

 娘の尻拭いに慣れてやがる。

 

 娘の変態ぶりは隠しつつ、魔王の気を引きたいだけの素直になれない乙女ってことにしやがった。


 この詐欺師め。その話術、俺に教えてください。


「ぬぅ。だが、しかし……」


 魔王は迷っている。

 変態は「はぁはぁ」言っている。

 父は疲れている。


 ここは先輩詐欺師のために俺が動くか。


「魔王よ、やめよ」


「しかし……」


「人の心とは剣のようだと思わぬか?」


「ぬぅ?」


「千差万別、人それぞれ。 似たものはあっても同じものは無い。 その全てを理解するのは神でさえ不可能」


 命懸けでオ○ニーするやつの考えなんて神様もきっとわからないよ。


「それを否定したいのであれば、まずは理解することから始めよ。 お主はまたクロエの剣を否定した時のような過ちを繰り返す気なのか?」


「……申し訳ありませぬ、師匠。 我は「己を知り、相手を知り、誰よりも正しくあれ」と言われたあの日から、この言葉に過ちは繰り返さぬと誓ったというのに」


 その妄言、まだ忘れてなかったのか。

 酒でも飲んで忘れてください、お願いします。


「ふっ、過ちを繰り返さぬか……傲慢、愉快なほど傲慢だな魔王よ。 だが、それを貫け。 さすれば……」


 魔王がごくりと喉を鳴らした。


「立派な魔王になれるだろう」


「はっ! 必ずやなってみせますぞ!」


 こんな感じでよろしいでしょうか先輩。

 俺の妄言能力も中々のものでしょう?



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