ぜーんぶ忘れられるです!
本当にこれで良いのだろうか。
俺は人類滅亡の手助けをしているんじゃないのか?
「師匠、この辺りでどうでしょうか? そう簡単に発見できる場所ではないと思いますが」
「…ふむ」
侵略の足掛かりにされたりしないよな……?
お伽話では悪として描かれる事が多い魔族。
だが、実際はどうなのだろうか?
多分、良いやつ。
きっと人族と魔族は仲良しになれる。
そう自分に言い聞かせ、魔王に許可を出した。
「ここで良いだろう。近いし」
「御意。 ではここに魔界へと繋ぐ『ゲート』を設置しますぞ」
全員で魔界へ行く移動手段が無い。
魔王一人なら飛んで帰るらしいが、魔王とトカゲ以外は飛べない。だって人間と剣だもん。
トカゲに「俺たちを乗せて連れてけ!」と頼んだが、流石に六人乗っけて飛ぶのはしんどいと言われた。
ならば……と、魔王が考えた移動方法が、人間界と魔界を繋ぐゲートとやらを設置することだった。
双方から行き来できるそうだ。
多分、大丈夫。俺は信じてる。
「では、我は部下を呼びに行ってきますぞ。 おそらくですが、完成まで十日ほど猶予をいただければ」
ゲートの設置はお漏らし魔王と他数名が担当するそうだ。
王国に魔族の侵入がバレないようにしてもらいたい。俺、売国奴になりたくないし。
魔王がいるし、今更か。
「…ふむ。 頼んだぞ、魔王」
「御意」
侵略するにしても俺の名は伏せてください。
お願いします、魔王様。人類の敵として歴史書に乗りたく無いので……
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魔王が魔界へと帰るのを見送った俺は、今更ながら罪悪感に苛まれていた。
「師匠、どうしたです?」
「……なんでもない」
そう、なんでもないのだ。
俺は人類を売ったりしてない。
「落ち込んでるです」
「……落ち込んどらん」
「ぜーったい落ち込んでるです」
そう断定してから、ルナはクレナのほうに歩いていった。何やら話している様子。
しばらくして、
「師匠、可愛い弟子二人とデートに行くです!」
「慰めてあげますわ!」
デート?デートかぁ。
悪いことは良い思いして忘れろってことかな?
今日は、シードちゃんとトカゲは魔界に行く前に要望を全部伝えてくる!と、張り切って建築ギルドに行ったし、魔界に行くために休暇をくれとギルドマスターと交渉(脅迫)しているため、クロエもいない。
人外が全員いないのだ。
かつてこんな日があっただろうか。
今思えば、人間の俺が人外達とずっと一緒にいるのは心をすり減らすほど大変なことだったと思う。
だからこそ、必要以上に落ち込んでいる。
そう、だったのか……?
「師匠ぉ、両手に花です! 嫌なことぜーんぶ忘れられるです!」
「…ふむ」
両手に花……か。
良き良き。確かに、人類の敵認定されてもおかしくない俺の所業を忘れられそう。
「たまにはいくか〜」
たまには良い思いしてもいいよね。
「ちょろいです」
「ルナ、これでぬいぐるみ買って貰えるの?」
「余裕です。 連れ出すのさえ成功したら後はあまーい声でおねだりするだけです」
「ルナみたいに可愛くおねだりなんかできないわ……」
「クレナは自分の武器がわかってないです。 胸をわざと当てて、戸惑ってる師匠に向けて「当ててるの」って言えば家が建つです」
「ッ! 私、頑張るわ!」
「その意気です!」
何やら二人がぼそぼそと話している。
俺を慰める計画でも立ててくれているのだろうか。
「でも、ちょっと申し訳ないわ」
「師匠は私たちに無茶な試練を課すつもりです。 先払いでご褒美があっても良いはずです!」
「そうかしら?」
「間違いないです!」
なんと素晴らしい弟子達なのだろう。
やはり弟子は人間に限るな!
「師匠ぉ、行くですよー」
「…………」
右腕にルナ、左腕にクレナ。
二人に抱きつかれ窮屈だが……それが良い!
特にクレナ!胸が当たってるぞ、胸が!
「すまないが行ってくるぞ、カイ。 お土産は期待していろ」
「お、おう、いってらっしゃい……」
ハーレム状態の俺を何故か哀れむような目で、言葉少なに送り出してくれたカイ。
純情な少年にはまだハーレムは早かったようだ。
だが、いつかわかる日がくるさ。
……騙された。
我が弟子達は落ち込んでいる師匠を誑かし、搾り取る悪女だった。
ルナはまぁ、いつも通りだ。だが、クレナ!お前もか!!!!
カイは知っていたのだ。
俺が侍らせているのは、可愛い弟子などではなく、ハエだと。
それはハーレムなどではなく、ウンコに群がるハエとウンコそのものだと。
なんと滑稽な話だろうか。
俺は、
貢に貢ぎまくった。
「今日は、楽しかったです!」
「また行きましょうね、師匠!」
弟子はカブトムシキチに限るな。
カイと二人でカブトムシを捕まえに行きたい。
明日誘ってみようかな……
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