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シードちゃん

 俺はもう大抵の事では驚かない。


 俺の予想の斜め上の行動を取る魔王に鍛えられているのだから当然だ。


 鍛え上げられた俺は悟りの境地に達していると思っていた。


 今日、朝目覚めるまで。


「パパぁ、おはよー」


「…ふむ」


 目覚めると、隣に幼女がいた。

 全裸で俺をパパと呼ぶ幼女。


 ……誰だこいつ?


 ちょっと待て。俺はいつ一児のパパになった?

 

 そもそも子供を作るには、相手が必要なのだ。

 ソロプレイヤーの俺には不可能……


 ということは、間違えて俺の部屋に入ってきた、他人の子?


「君、お名前は?」


「パパどうしたのぉ? シードちゃんのこと嫌いになったぁ?」


 いや、そもそもお前は誰だよ。


「いや、嫌いじゃないよ。 シードちゃんって言うんだね」


「悪い子したから嫌いになったぁ?」


「悪い子?」


 幼女が俺の頭を指差して言う。


「勝手にパパの生気を使って人の姿を作ったから……」


「はい?」


 俺は指差された自分の頭を触った。

 髪の毛は……ある。セーフだ。


「魔力は全部使ったら足りたけど、人の生気がないと無理だったから……ごめんね?」


「…ふむ」


 物騒なことを言う見知らぬ幼女。

 知らないうちに生気を取られてるなんて、どんなホラーだよ。


 俺は自分の変化が怖くなり、鏡で自分を見ることにした。



 そこに写っていたのは、


「白髪になってる」


「ダメだったぁ? カッコいいと思うよぉ?」


「主ぃ、おはよー。 イメチェンしたのか?オイラとお揃いだな!」


 なんだ、それだけか。


 どうせ、心労で白髪になる日も近いと思っていたのだ。それが、一思いに白髪になって心が軽くなったまである。


 俺はその後、シードちゃんが愛剣『神怒』だと説明され、とりあえず服を買いに行くことにした。





###





 トカゲとシードちゃんと共に朝の素振りを眺めていた。


 全員が白すぎる影響からか、神々しく見えるらしい。


 クレナに跪かれ「神よ。私良い子で頑張っていますの。だから……新しいぬいぐるみがほしいですわ」との、祈りの言葉を聞いた俺は「カトリーヌを大切にせよ」と答え、クレナの顔を真っ赤にすることに成功した。


「師匠、その子誰です?」


「剣の巫女」


「巫女様かよ、すげーな! なんで師匠は白くなってんだ?」


「元の姿に戻っただけだ。 シードちゃんにより封印が解かれてな」


 俺のめちゃくちゃな言葉に何故か納得して素振りに戻ったルナとカイ。


 純粋な少年少女など、詐欺師からすれば騙すことなど雑作もないのだ。


 素振りに戻ったカイだが、なにやら魔王とクロエから質問を受けている。


 しばらくすると、俺たちの前に二人がやってきた。


「師匠、封印の解除おめでとうございます」


「おめでとうございます!」


「…ふむ。 ありがとう。 とはいっても、あと百七つあるのだがな」


「な、なんと……」


 煩悩の数と同じだけ、俺は封印を施されている設定なのだよ。


 だから弱いのでクロエさん、斬りかかってくるのはもうやめて下さい。


「封印などどうでも良いことよ。 我には剣があり、お主らがいる。 それで十分」


「「し、師匠!」」


 何故か感動している様子のところ悪いが、封印されたままでいい理由は、封印が解かれたとしても、パワーアップしないからだ。


 そもそも封印ってなんだよ。

 俺は邪神か何かなのか?


 ……自分で言い出したんだった。


「それにしても巫女様可愛いですぅ」


「おい! よせ! クロエ!」


 魔王の静止を無視して、シードちゃんに抱きついたクロエ。


「きゃぁぁぁああ!!!!」


「だから止めたであろうが……」


 シードちゃんに抱きついたクロエが悲鳴をあげて倒れた。


 え、何?この子怖い。


「やはり、神怒なのですな。 我でもきつい吸魔を受ければこうなるのは必然」


「…ふむ。 クロエ生きてる?」


「水でもかけたら起きましょうぞ」


 そう言って、何やら唱えた魔王の手から水が出てきた。そしてそれを、間髪入れずにクロエにぶっかけた。


 びちょびちょである。

 魔王は容赦というものを知らない。


「はっ!? ここは……?」


「神怒に抱きつくのはやめよ」


 理由を説明され納得した様子のクロエ。


「なぜ、神剣が人の姿を模しているのですかな?」


「…ふむ」


 知らんよ。


 答えに窮した俺は、シードちゃんの方を見た。


「わたしはずっとひとりぼっちだった。 剣士を殺してしまう剣なんて誰も使ってくれないから」


 何やら語り出したシードちゃん。

 皆さん真剣に聞いていらっしゃる。


「わたしは魔力なんて好きじゃない。 でも、力の代償に魔力を吸い取る様に作られているから、勝手に吸ってしまう。 吸わないで済んだのはパパが初めて。 多分———格が違うんだと思う」


 何言ってんだこいつ。


 魔力ゼロの俺からはどう頑張っても吸えないだけじゃないのか?


「わたしはひとりぼっちは嫌なの。寂しいし、怖い。 でも剣のわたしが誰かと一緒にいるには剣として使われるしかない……そして使用者を殺す、酷いよね」


「な、なんと……」


「可哀想ですッ」


「わたしは勇気を出してパパに相談したの。 じゃあ、何でもないような顔をして「シードちゃんは今日から巫女だ。剣は引退」って言ってくれたの」


 ッ!?


 相談なんか受けてないぞ!?


「だからわたしはパパの巫女になったの。 みんなも認めてくれる?」


「もちろんですぞ! 巫女様!」


「師匠以外触れないとか、凄く巫女様っぽいです!」


 巫女様巫女様うるさい弟子達に聞こえない様に「パパ、これでよかったぁ?」と聞いてきたシードちゃん。


 まさか、これ……


 俺の影響なのか?


 教育に悪そうだし、詐欺師なんてやめようかなぁ。

 

 

 

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[良い点] 詐欺師を自称する割に根が善良で笑う
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