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恋愛蹴球  作者: ひろほ
67/72

トレーニングマッチ11


仕切り直しだ。

といっても、相手の攻撃は及び腰で、頼りの7番へのパスも容易にカット出来た。

即座に守備ブロックを形成されるが……いや、させておいて、一旦GKまでボールを戻す。

先ほど見せたのは、サイドへ偏りを敢えて作った上での奇襲である。

真骨頂はここからだ。

俺はCBの高さに下がり、両SBが中に絞っていく。

既にサイドハーフの両翼はめいっぱい横に開いていた。

右のCBにボールが入り、ボランチ、SBへのパスコースは完璧に空いている。

何故か?

守備ブロックを綺麗に八人で作るとなると、ボールへのチェックを含めれば、残りは一人しか居なくなる。

そう、そもそもここでも人数が足りていないのだ。

ラインを上げてコンパクトにしない限り、ドン引きブロックでは対応が出来ないだろう。

そして、両翼が開いた事により、中央のスペースも大きくなる。

故に、中に絞ったSBにもボランチにもパスコースが空くのである。

と、とても良い事づくめの戦術に思えるが、欠点だらけでもある。

内側にSBが居るとなれば、サイドはガラ空きになる。

もちろん、ボランチが下りたり、CBが開いてケアするけれど、空いている事は空いているのだ。

つまり、サイドからのカウンター……コレはどうにもならないほど弱かったりする。

攻撃面での弱点で言うと、先ほどの通り、縦にコンパクトにされると実はキツイ。

スペースが狭いというのに、中央に人数が居るとなれば、それはもう渋滞してしまうのだ。

そういった場合、破壊力のあるサイドプレイヤーが輝くのではあるが……うちのサイドハーフもとい、SBだった選手にそこまでの破壊力が無い。

それに、まだまだ未熟で俺を含め、中盤の動きのバリエーションが少ない。

と、チーム事情的な弱点も相まって、実戦投入は今回が初めてだった。

とはいえ、指揮官がやれと言う以上、不安でもやる他ない。

そして、出来ると思ったから課したのだ。

無謀や理想、妄想を俺たちに強いるほど、俺たちの指揮官は無能ではない。

さて、一度俺へボールが戻り、プレスをかけに来た選手をかわす。

そのまま、三人でボールを回し続けた。


「はい、そこ」


機を見て、斜め前にパスを入れる。

それを受けるのはCBだ。

俺たちのSBが中に絞って出来たサイドのスペースに、じわじわと展開していたのである。

そのままドリブルで相手を十分に引き付けた後、開いたMFに縦パス一閃。

無人のサイドを駆け抜け、多数の味方がひしめく中央へとセンタリングを行った。

ミートしきれなかったヘディングは、キーパーの正面。

得点にはならなかったが、相手がベンチをチラチラと見ているのを見逃さなかった。

どうする?

何か攻略法は思い付くか?

いっそ、もっとドン引きした方が、得点は防げるだろうけど。

このまま何も変わらずに過ごすというのなら、蹂躙させてもらおうではないか。

攻守が変わり、俺たちの守備は、相手と同じく引いた状態からスタートした。

プレスも果敢に仕掛ける訳でもなく、後ろで回すのなら回せと言わんばかりである。

七番への対応、本職ではないSB、そして、組み立てからの攻めが出来るとなれば、ハイプレス・ハイラインを無理に行う事もない。

外へ外へと押し出され、サイドでつまらない攻防を繰り広げていた。

苦し紛れに仕掛けてくるものの、タッチラインを割り、こちらのスローイン。

貴重な攻めを終わらせてしまったようだ。

GKへスローインでボールが渡される。

足元で受けたGKは、そのままゆっくりと前へドリブルを開始。

それを機に先ほどと同じように俺は下がり、所定の位置に選手が配置されるのと同時に、ボールが来た。

さて、バックラインへボールが入った事で、守備のスイッチが入る人間は少ないように思える。

どうせ後ろで何度か回すんだろ? と、テレビなんかでサッカーを見てて、俺もそう考える事は少なくない。


「はい、ドーン」


目まぐるしいポジションチェンジも、サイドへの展開も、一切無視するように、フィールドの中央を一本のパスが切り裂く。

横に間延びした相手のDFライン、マークのズレ、分断された前線、そして、相手の気の緩み。

それが折り重なって、中央の危険地帯に居るFWがフリーになっていた。

俺たちDFラインは、仕方なしにボールを回されている訳ではなく、攻めのスイッチなのだ。

サイドからガリガリ来ると思ったか?

それともパスワークで崩しにかかると思ったか?

はたまたジワジワとラインを押し上げて行くと思ったか?

まぁ、全部やるけどな。

サッカーの可能性を、全ての要素をもってして、サッカーの魅力を、存分に発揮させながら、お前らをサンドバッグにさせてもらう。

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