表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋愛蹴球  作者: ひろほ
6/72

横浜龍2

「―――じゃあ、結果は、後で電話するから」

「ウィッス。ありあとあしたー」


といいながら、コーチに一礼して練習場を後にする。


「千紘」


門の壁にもたれかかりながら、龍が話しかけてきた。


「おう」

「ん、お疲れ」


ペットボトルのスポーツドリンクを差し出す龍。


「サンキュ」


横に並び歩きながら受け取る。


「まぁ、あの感じなら受かったんじゃね?」

「どーだろな。どっかの馬鹿のせいで、逆に心象が悪くなったかもな」

「あぁ?」


チンピラのようにガンをつけてくる龍。サッカー選手はなんでこうもヤンキーみたいなやつが多いのだろう。

それでも、真理と同じ顔なもんだから、凄みなんて全くない。


「お前なぁ、あんだけ派手に俺にやられてたら、ワザとだと思われるだろうが」


龍は俺に吹っ飛ばされた後、守備に走り回り過ぎたせいで、途中から完全に足にキテいたみたようでプレーに精彩を欠いた。

とくに走りは最悪だった。追いつけない、抜かれる、当たり負けとバラエティ豊かであった。

俗に言う『チンチン』にされるというやつだ。

いやらしい意味ではない。


「ふん。慣れないことはするもんじゃないな」

「だな。龍はディフェンス苦手なんだしさ。まぁ、懐かしかったけどな、小学生ん時とかみたいで」

「あぁ、真理も一緒にやってて、サッカーじゃなくて、ボール追いかけてるだけだったけどな」

近所の公園で、暇さえあれば、ボールを蹴っていて、真理もなんとか混じって遊んでいた時を思い出す。

「なぁ、千紘。お前、もし駄目ならどうするんだ?」

「部活に入るだろ、そりゃ」

「そうだよな……。今、お前、告白したんだって?」

にやりと、悪い笑みを浮かべながら龍は尋ねてきた。

「―――ブッ!」


口にしていたドリンクをつい噴き出す。


「おま、それ誰に聞いた?」

「んー、山葉にー」

「あのヤロー……」

「あれはあれで心配してたんだぜ、ずっと。お前が交通事故にあってから、ボール蹴れるようになって、ちゃんとチームに復帰できるか、とか」

「あの姉がねぇ…」


正直、信じられん。


「そうだよ。さっきもどうだったかメールで聞いてきた」

「マジか……。つか、お前ら何時の間にそんな仲良くなった……」

「あー、お前が事故って、Jrユース居なくなったときかなー?」

「大分前から、そんなやりとりを……」

「で、今、付き合ってる」

「はぁっ!?」


待て待て、超絶ドSの姉と、気分屋で訳のわからん行動ばっかするヤンキーみたいなやつが付き合っているだと?


「ちなみに、何もしてないから安心しろ」

「そんな心配なんぞするか、気持ち悪い!」


肉親と知り合いのラブシーンなど、想像するだけで身の毛がよだつ。


「つーか、お前、あんなのの何処がいいんだ?」

「え、そーゆーの聞いちゃう? マジで?」


何ウキウキしてんだ、このバカ。


「怖いもの見たさでな」

「優しいし、美人じゃん?」

「び、美人? まぁ、そういう見方もあるのやもしれんが……」

「俺にとっては美人なの」

「はぁ、そうか……。にしても、あいつはもっとゴツイ男が好きなんだと思っていたわ。男ってより漢って感じの……」

「なんかちっこいのが良いんだって、年下のが良いってもあるらしい」

「あー……」


龍は背が低い。せいぜい160前半ってところだ。

それを本人も気にしていた。サッカープレイヤーとしても、いち男としても。

ユースに上がる際、体格を理由に落とされるやつも多い。

見た目は真理と同じ顔をしているだけあって、中性的な可愛らしい顔でモテそうだとは思うのだが、告白されただの、彼女がどうのと聞かされたことはない。

まぁ、中身が口の悪いヤンキーだしな。


「正直、俺も信じられないけど、世の中ちっこい男が好きな女性もいるらしい」

「ほぅ」

「俺はお前が羨ましいけどな、そんなガタイ。ほんとフザケんな」

「ん?」


龍がジトッとした目で睨みつけてくる。


「身長180超えたか?」

「まさか、まだ175超えたくらいだ」

「でも、お前のお母さんデカイもんな。どこの人だっけ?」

「あー、イギリス」


そう、俺は俗に言うハーフである。もちろん山葉も。親父の血が濃いのか、全く英国人の要素はない。純然たる和風顔である。

ちなみに英語なんてまったく喋れない。

あと、ハーフだからモテるというのも、幻想である。でなければ、俺も山葉も彼氏や彼女の一人や二人、家に連れてきているはずだ。


「イギリス人って不細工っていうけど、山葉は美人だよなー」

「……おぇ」


幼馴染のノロケなんかに寒気を感じていると、ケイタイが鳴る。

相手は―――依子さん!


『やっほー♪

元気かな?忙しくて連絡できなくてごめんね?

日本にやっと帰ってきたよ!

まだ少し忙しくて、一緒にサッカー出来ないけど……

紹介したい人がいるから、明日、いつもの時間に来れる?』


との内容だが、何だ紹介したい人って……?


感想・評価・ブックマーク登録なさって頂けると、とても励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ