表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋愛蹴球  作者: ひろほ
5/72

横浜龍

で、時は流れ、その龍は今―――


「抜かせるか、コノヤロー!」


―――と声をあげながら、荒っぽいタックルで俺を吹っ飛ばした。当然笛が鳴る。

入学式から、三日後、セレクションの話が来た。

で、ユースチームに混じって、ミニゲームを行っている最中である。


「てめぇ、龍!」

「あの程度のタックルで吹っ飛ぶとは、か弱くなりましたねぇ!」


龍は真理の双子の兄で、やっぱりコイツも幼馴染である。残念ながら。

俺は本来、守備的ミッドフィルダ―(ボランチ)としてプレーをしていた。

ボランチは守備と攻撃の切り替えやアクセントをつけるポジションで、やや下がり目の中央に位置する。当然、両足で蹴れたほうが望ましい。

そして、事故以降は、左足の感覚の不安から、サイドプレーヤーとして希望していた。そして、今回与えられたポジションは、右SB(サイドバック)

正直、今だけは失敗だったと思っている。

龍をマークしなければならないからだ。

コイツは左利きの攻撃的なプレーヤーで、トップ下を主戦場に、左のWG(ウイング)MF(ミッドフィルダー)と攻撃的なポジションを主戦場にしている。

で、攻撃大好きなコイツは、普段は手を抜きまくっている守備を今日に限っては積極的にやりやがる。しかもわざわざ左のWGにしてまで。


「来いよ千紘、本気で。まさか、そんなもんなのかよ。とっとと部活にでも行ってろよ」


この野郎……なら、お望み通り―――


「本気でやってやる!」


ペース配分なんて知ったことか。

フリーキックからゲームが再開され、俺は右サイドを駆け上がる。

上手くスペースを見つけ出し、ハーフウェイライン付近でボールを受けたと同時に、トップギアに入れる。

相手チームが引き気味で、ドリブルをするスペースは大いに空いている。

右サイドから中央へ斜めに切り裂きつつ、外側へMFが顔を出せるスペースがあるのを確認する。


「やらせるかよっ!」


予想通り、躍起になって龍がくっついてきていた。

トップスピード時に体をぶつけられバランスを崩し、ボールはまだ保持しているものの完璧に追いつかれてしまった。ここで取られてしまえば絶好のカウンターになる。

しかし、打開さえしてしまえば、大チャンスだ。

どうする? 考えろ!

並走しながら、右サイドのMFのフォローを待つか?

それとも、前線のフォワードに放り込むか?

もしくは、バックパス?


「おら、いい加減ボールを俺によこせ!」

「つっ!」


左側にいる龍が荒っぽい削り方をしてきやがる。


「日本代表なんざ諦めろ!」


―――決めた。


「ぶち抜いてやる!」

右足の外側(アウトサイド)で真横へスライド。足が地面に着いた瞬間、ストップする。


急ブレーキをかけた俺に喰らい付こうと、身体をこちらへ向けながら、龍も同じく止まる。

―――喰らえ。

あの時、俺がキレイに引っ掛かった、依子式ストップ&ゴー。

龍なんかに、依子さんの得意技を使うのはもったいないが、出し惜しみなんてしてられるか。

やはりあの時の俺と同じように、身体のバランスを崩している。

問題は、崩したバランスをどちらに傾けているか。

確認。龍の身体は完璧に止まっていた。

ならば勢いそのまま右斜めに切り込んでいく。


「じゃあな、龍!」

「くっそ!」


倒れこむ龍を抜き去り、ペナルティエリアの手前まで来た。俗に言う、アタッキングサードというエリアだ。

龍のフォローに来た相手DF(ディフェンダー)の背後のスペースへ、グラウンダーのパスを通し、FW(フォワード)が走りこむ。

タイミングは上々、FWは誰もマークに付いていない状態でボールを受けた。

が、しかし、放ったシュートはキーパーの手をすり抜けるが、ポストに当たってしまった。

弾むボール。

その行方は―――


「え、俺?」


惰性でペナルティエリア内まで進んでいたら、なんと運良く俺の目の前にボールが跳ね返ってきた。

おもちゃに群がる猫の集団のように、敵味方まぜこぜになった人の波。

それより一瞬だけ先にボールを押し込むことが出来た。

反則めいたスライディングを四方八方から喰らいながら、ボールがゴールへ収まるのを確かめ、審判の笛の音が耳に入ってきた。

―――ゴールだ。

ボールがネットに収まる音は、何時聞いても心地いい。

味方の荒っぽい歓迎を受け、ポジションに戻りつつも、つい顔がにやけてしまう。

そして、そんな余韻に浸りながら、審判が再開の笛を聞く。


「千紘ー!」


と、雄たけびをあげながら、龍がつっかかってくる。

キックオフした直後、ボールを受けると周りの人間を置いてけぼりにして、一目散にこちらに向かってきた。

あぁ、そういえば、コイツは馬鹿だった。

戦術もへったくれも無い。

さっき無様に抜かれた借りを返したいだけなんだろう。

しかし。


「アホかぁっ!」


いかに故障明けの身体といえど、フェイントもかけずに直線的に向かってくる相手を吹っ飛ばすのは容易かった。

さらに、普段、やりなれないディフェンスを必死になっていたもんだから、疲れのせいかキレは皆無。

綺麗にボールごと両足を刈り、でんぐり返りのように宙を舞う馬鹿。

そのまま大きくボールを蹴りだし、一気に前線へ。

龍のせいでオタオタしている相手に、容易に数的有利を作り出し、うちのチームは追加点をあげた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ