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選手交代
「結愛ちゃん、監督が『シンプルに』だって」
変わって入ってきた選手が私にそう伝える。
監督も無理に攻めるつもりがないようだ。依子相手にこれは助かる。
「で、私が入ってきたってことは分かっているよね?」
私の目をジッと見つめ、人差し指を向けながら意図を確認してきた。
「はい。カウンター狙いですね」
「そう、プレーエリアは自陣で十分。よーいドンで勝負ね」
今度は親指を立てて、ニヒヒと笑う。
「私を一番上手く使えるのは結愛ちゃんだからね。良いパス期待してるよ」
「はい」
しっかりと見つめ返し、強くうなずく。
「女王様みたいにこのチームを引っ張っていってね」
私に背を向けながら、プレッシャーになるようなこと言って去ってしまった。
けれども、この重圧が何故だかとても心地いい。
来なさい依子。
きっと貴女には敵わない―――私一人ならね。
来なさいヴェールズ。
きっと貴女達は敵わない―――私の出すパスにはね。
やることはシンプル、故に強固。そして一番私が得意なこと。
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