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恋愛蹴球  作者: ひろほ
25/72

仙台ユース5

泉の立場になって考えてみよう。

まず予想外の一つ目、お地蔵さんの龍がそこまで下がってボールを貰いに行く事。これには俺もびっくりした。

二つ目、あいつが泉との距離が空いている状態で、ドリブルを選択しなかったこと。あいつがまさかシンプルに、バイタルエリアを他人に任せるようなプレーをする可能性はなさそうだった。

最後に、我がチームが龍を頼らず、龍以外の人間で攻撃を組み立てる事は今まで見せていない。

暴君である龍がいるチームにそのような連動性があるとは考えなかった、といったところだろうか。


「てことは、アイツももしかしたら、龍と同類なのか……?」


さらに、そこから飛躍して考える。

泉自身も仙台というチームは自分がいなければ成り立たないと思っているとしたら?

きっと泉は不本意だろうけれど、チームに頼られて、それに応えないほど冷酷でもない。

全て予想でしかないが、確信を持てる材料はある―――泉もまた、チームの王様だから。

そういう意味で龍と同類ではあるが、暴君と名君だ。


「龍も成長してそうなったりするんかねぇ……」


先制点を挙げた際、泉の予想を裏切る俺の動きが起点となった。その直後の同点に追いつかれた際も、チームを動かしつつも個人技で攻めていった泉。以上のことから仙台は、泉がいなければ成り立たないチームと考えてもいいかもしれない。

また泉は龍を危険視しているから、守備はマークに専念してカバーリングまでは難しいだろう。

それなら攻撃については何とでもなるだろう。

さて、こちらのコーナーキックからのリスタート。

俺もヘディングで競り合う要員の為、ペナルティエリア内に入る。

キッカーが助走をすると同時にポジションの争いを始め、ボールが蹴りこまれると、その軌道を予測し走りこんだ。

マークの相手が体を寄せてくるが、軽い! 柏の加地に比べれば、何ということもない。

体の軸を崩されることなく自分のコースを保ちながら、コースに入る事が出来た。

俺の方へ、いよいよボールが向ってくる。

―――ヘディングシュートのチャンスではあるが、俺はヘディングが下手だ。

おそらく、龍を始めとしたチームメイトは、「あー千紘の方へ行っちゃったー」とでも思っているだろうな。

しかし、いつまでも弱点を放っておく俺ではない。

風太郎さんの肉体改造を経て、ヘディングに必要な上半身の体幹とかそういうのを徹底的に鍛えてある。

練習や試合では日の目を見ることがなかったが、ついに今日、報われる時が来た!

跳ぶ。

まったく体が崩されることなく、頭でボールを捉えた。

ヘディングの下手な原因は主に二つ、当てどころが悪い事とボールの勢いに頭が負ける事。

しっかりとデコの部分で捉えられるように、首と背中の筋肉を鍛え、柔らかくする。

同時にボールの勢いに負けずに、押し込めるように喉から鎖骨にかけての筋肉を鍛えた。

もちろん、その筋肉痛とやらは地獄のような痛みである。

しかも場所が場所だけに、不意に動かしてしまい激痛を味わう回数も多かった。

その血と汗と涙で作られたヘディングシュートを渾身の力で叩き込む。

しっかりと地面に叩きつけるように放たれたボールは、キーパーの手をかいくぐりネットを揺らした。


「どうだコラぁ!」


一番馬鹿にしていて、期待をしていなかった龍を指さしながら吠える。

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