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恋愛蹴球  作者: ひろほ
19/72

風太郎、語る

時は少しさかのぼり、試合終了後。

ミーティングと反省会を軽くして試合会場から出ると、なんと依子さんが出口に立っていた!


「お疲れー、千紘君。出待ちなんてしてみたよ。へっへっへ」


なんて意地悪な表情を浮かべるが、それもカワイイ。


「な、なんで依子さんがここに!」


もしかして、わざわざ来てくれたのか!


「なでしこの練習でこっちに来てて、お兄ちゃんが教えてくれたの。千紘君の試合会場が近いよって」


と、いうことは……。


「お疲れさま、千紘君。次はフルで出場いけそうな出来だったね」


やっぱり居たー! くそう……。


「ありがとうございます!」


しかし、無駄な失点はしてはならないと、即座に風太郎さんに頭を下げる。


「千紘ー、その人達、誰?」


腹を空かせてご機嫌ナナメな暴君が、眉をひそめて俺たちを見る。


「あー、小平の14番の子だー!」

「あぁ、あのドリブラーの」


龍を見て、依子さんと風太郎さんのテンションが上がる。


「……横浜龍」


ぶっきらぼうに答える龍。


「私は川崎依子。私もサッカーやってるんだよ、すごかったねー」

「僕は川崎風太郎、依子の兄で、千紘君のトレーナーをやらせてもらっているよ、よろしく」


しげしげと二人の顔を見て、口を開く。


「千紘、飯行くぞ、腹減った」


と、二人をまるで居ないかのように話し始めた。


「私もお腹減った! お兄ちゃん!」

「はいはい、すぐそこのファミレスでいいかな?」


というわけで、この四人で食事となったのであった。




で、話はファミレスに戻り、風太郎さんが今日の試合を振り返っていた。


「あの柏の大きい子はすごいね。ちゃんと動けるし、逆転されても動じないって、ちょっとユース離れしてる選手だよ」

「はい、手を焼かされっぱなしでした。最後も加地にやられましたし。フィジカル……コンタクトもちょっと歯が立たないかと」

「千紘でも駄目だと思うのか、あいつと競り合いは二度とやりたかねぇな。今度はブチ抜いてやるけど」

「怪我明けの人間にあんま期待すんなよ」

「じゃあさっきの話に戻そうか」


風太郎さんが俺たちをニコニコしながら見て話す。


「体が色んな動きを覚えるって話だったかな?」


俺と龍がそろって頷く。


「サッカーに限らず、スポーツには色んな動きが詰まっているんだよ。横浜君は、サッカー以外に何かスポーツをやったことはない?」

「えと、水泳」

「水泳か、これは良い例を挙げてもらったね。サッカーのキックと水泳のキック、同じキックと言うけど、全く別物だよね?」

「そうですね、俺は龍ほど泳げないですけど、それは分かります」

「けれども、実は共通する動きなんていうのは少なくない。例えば、クロールなんかは足の振りや姿勢制御を養ってくれる。この足の振りや姿勢制御なんて言葉はサッカーにおいても良く聞かれる言葉だと思う。それに筋肉でいえば、ダンベルだろうと腕立てだろうと、何かスポーツで鍛えようと、使われた筋肉が鍛えられるのは間違いない」

「はい、姿勢制御って言葉はボディバランスって言いかえられますよね」

「そうだね、色んな足の振り、体の捻り、その時に合った姿勢制御の形があって、水泳やサッカーにそれぞれ合った筋肉や神経を刺激していく。結果、体はその時に応じた使い方を、引き出しから取り出して対応していくものなんだ」

「せんせーい、よく分かりませーん」


依子さんが手を挙げ、あっけらかんとした表情をしながら質問をする。

こんな天使の教師を一度やってみたい。

っといかん、また話が聞けなくなってしまう。


「つまり、一見関係がなさそうな運動でも、実は関係があるってことですか?」


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