光条
“”おい、そこのトラック停まれ
ノッポの七三がバールでボンネットを制すと、その後ろに居た丸刈りのデブは
うすら笑いを浮かべる。
“この辺りで怪しい二人連れを見なかったか?”
ノッポの誰何に、サイドウインドを半分だけ開けて、曹が顔を出す。
“いや見ないですが、何かありやしたか?
こちとら、急ぎの納品がございますので先を急いでいるんですがね、、”
ノッポの顔つきが変わると同時にデブが後ろの荷台に向かう。
“おい、確か今日は市場は休みだったよな。”
“えっ”
“何をそんなに急いでいるんだ、よお” ノッポがトンと叩く。
後ろに回ったデブが、荷台の幌に手を掛けた刹那
トラックは突如急発進した。
“いや、毒魚が食べたいって金持ちがいましてねぇ! すまねぇが、急ぎでして”
トラックに引っ張られてたたらを踏んで、顔から血面に落ちた。
奔り際にノッポのバールはフロントに蜘蛛の巣を作っていたが、
それを撥ね退けて、ノッポの手首を使い物にならなくしていた。
ダンスのように一回回って手を抑えてうずくまるノッポだが、
最低限やらねばならぬ仕事は、当然仲間への連絡だ。
傷めていない手で懐から携帯を取り出すと、
意の一番に、上に連絡する。
おおよその男の特徴とトラックの車種を伝えたノッポは、
“ちっ、この役立たずが” と、まだ起き上がらないデブの横腹に三発蹴りを入れた。
港湾を疾走するトラック、それほど大きな港でもない限り、メイン通りは限られる、
もう少しで出られるというところで、大型のトレーラーが横やりに猛スピードで突っ込んできた。
慌ててハンドルを切りタイヤが悲鳴を上げながら、弧を切りつつ、資材置き場に雪崩こむ。
トラックは横転しながら、中の三人を吐き出しながら、鋼材の山に突っ込んで爆発した。
由花を抱えながら、瞬慈はケガの無いことを確かめると、すぐに反対側の鋼材の陰に身を隠す。
曹も自力で這い出して、その脇に逃げ込んだ。あせる息を何とか落ち着かせていると、
もうもうと煙を上げるトラックの向こうから、一人二人と集まるのが見え、やがて
10人ほど集まったところで、こちらに向かってきた。
“運転ドアが開いたままだ。奴らはきっとこの中だ”
凶悪そうな風貌の男がそう云うと、数人が前に出て、ゆっくりとこちらに進んでくるのが見えた。
“クッ” いよいよ追い詰められた状況に、唇を噛んで、舜慈の由花を抱える腕に力がこもる。
その時だった。
規則正しい、高音のリズム音が、遠くに聞こえ始めたかと思うと、
突如資材の山を飛び越え、曹たちと黒襲の間に割って入った。
風圧で前に出た数人がたじろぐが、奥の凶悪な男は、そのサングラスのせいで、目は
生きていた。
懐から大型銃を取り出そうと、そのスーツに手を入れた瞬間。
ヘリがふわりと揺れて、回避と同時に胴体下から、機銃が発射された。
“タタタッ”
三連射だったが、男は数mはじき飛ばされ、銃はさらに10mも飛ばされていた。
そしてもう一度くるりと輪を描いて、今度は周りの手下たちを封じていく。
男たちはなすすべもなく、制圧され、やがてふわりと着地すると、西洋人が
一人出てきた。
パタパタとアイドリング続けるヘリに曹が飛び出していく
“あんたが楊の言ってたセキュリティーか? 派手にやりやがってどうすんだ!
まったく、とりあえず、あの二人を頼む、あとは楊が教えた通りだ。”
そう言うと、急いで二人を手招きしてヘリに乗せた。
“一応暴徒鎮圧用のゴム弾だから、死んではいないが、しばらく寝ていてもらう
あんたも早くな、”そう云うと勢いよくグランツはドアを閉め、上昇していった。
それを見届けると曹は、おっかなびっくり顔で凶悪男の横をすりぬけ、さらに銃を鋼材の下に蹴り飛ばして、一目散に逃走した。
振動で少し揺れる機体に身を預け、舜慈は呼吸を整えていた。
すでに夜の闇がかぶさり暗黒の空で破あるが、町の灯が眼下に見えている。
“ニイハオ”と呑気な挨拶をしてくる前方のパイロットであったが、
さっと赤い光が横切り、次の瞬間操縦席の前方に、硬貨ぐらいの光点を結ぶと、
瞬時にパイロットが猛禽類のように反応し、一気に機体が傾き、地上から、一筋の光条が
常勝してくるのが見えた。




