第7話
そろそろインフレしてきます
こちらに手を振っている見知った顔立ちの、それでいて見慣れない色彩を纏った人達。
穏やかに微笑みながら、軽く手を振ってるのは
落ち着きのある深緑の髪と明るい緑色の瞳の長身のイケメン。
にこにこしながら手を頬に当てているのは
肩までの青みがかった銀の髪と尖った耳に、深い青の瞳の美女。
全身を使って、大きく手を振るのは
灰色のウルフカットに金色の瞳の犬耳がついた美少年。
飛び跳ねながら手を振ってるのは
ポニーテールの赤茶色の髪と琥珀色の瞳の猫耳がついた美少女。
うん、間違いなくあれだわ。
全員初期装備だから美形が台無しだけど…
何を思ったのか、猫耳娘が叫びながらこっちにダッシュしてきた。
何かめっちゃ早いな
「お兄ちゃーーーん!!!」
周りがびっくりしてるじゃないか。
腹の辺りに飛びかかってきた朝陽…いや、アリアを受け止める。
「おいおい、危ない行動はするなって」
「えへへー、お兄ちゃんなら大丈夫だと思って!」
「反省が見られないな?」
「ごめんなさーい」
「よし」
横でくすくす笑ってるセレーネと
びっくりしたのか俺の頭の上に避難した精霊たち。
「仲良いねぇ」
「昔からこうだからな」
「いつものことだよ!」
「少しは落ち着いて欲しいんだけど…」
ジト目気味に言うと、途端に顔を逸らすアリア。
「元気なのは良いことだよ?」
「そうそう!良いことなんだよ!」
「調子に乗らない。ほら行くぞ」
猫耳の間を少し乱暴に撫でてから、姉さんたちのとこに向かう。
嬉しそうにアリアが腰に抱きついてるから少し歩き辛いが…
これぐらいなら問題ないな。
「アーちゃん嬉しそうね~」
「やっとお兄ちゃんとゲーム出来るもん!」
「こうして全員揃うのも初めてですしね」
「そういやこっちではどう呼べばいいんだ?シェイド兄とセレーネ姉?」
那月…ヴォルフが呼び方を聞いてきたけど、語呂悪すぎるな…
「名前は入れなくていいんじゃないか?」
「そうだね、ちょっと聞き取りづらいし」
「わかったぜ!」
周りがさらにざわついてる…
うっすら「兄妹!?」って声も聞こえたし。
目立ってんなぁ…
「あらあら~目立ってるわね~」
「ですね。移動の前にフレンド登録しておきましょうか」
「フレ登録って思いながら握手すれば出来るよー!」
「無断は出来ないから安全だぜ!」
なるほど、楽だな。
ティユル兄さん…兄さんと握手したら目の前にウィンドウが開いた
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[ティユル]とフレンドになりました
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これなら分かりやすいな、全員と握手して登録完了。
「で、どこ行くんだ?」
「さすがにこの人混みは…」
「そこの喫茶店に入りましょう」
「そうね~」
ということで近くにあったオープンカフェに入っていくことに。
何か後ろ着いてきてるけど…
兄さんが店員と2、3言葉を交わして、そのまま奥にある部屋に案内された。
なんでもここは少し割高になるけど、防音の個室だから内緒話に最適だそうだ。
着いてきた人達も入れないようになってる
まぁ当たり前だよな。
そしてここで改めて自己紹介タイムだ、全員ちらちらと精霊たちを見てるしな。
「僕は人族のティユル。片手斧と盾でタンクをやっていくつもりです」
「私はエルフのシャルよ~。魔法攻撃全般の予定よ~」
「私は猫獣人のアリア!短剣使って遊撃予定だよ!斥候もね!」
「オレは犬獣人のヴォルフ!無手格闘の接近戦担当だ!回避盾も出来ると思うぜ!」
「私は人族のセレーネだよ。回復とか補助をしたいと思ってるの」
ふむ…つまり防御担当の兄さん、魔法攻撃担当の姉さん
遊撃や斥候担当のアリアに、格闘と回避盾担当のヴォルフか
随分と攻撃的なパーティだな。
セレーネはヒーラーとバッファー希望と…
「俺はエルフのシェイド。生産関係をやりたいと思ってる」
どうせなら普段出来ない事やりたいしな
ステータス的に戦闘も出来ると思うが…
そういや皆はスキャンか?現実そのままの顔だが
「私達みんなリアルスキャンよ~」
「ステータスでそれぞれ役割を選んだのもありますね」
「やっぱ慣れた動きが出来る方が楽しいよね!」
「おかげで魔法はからっきしだけどな!」
「私もリアルスキャンだよ。だから運動はちょっと…」
なるほどな。
姉さんは頭良いけど体力あんまり無いし、アリアは身体動かすのが一番!って言ってたし
兄さんはどっちも出来るんだったか?
ヴォルフはアリアと似てるし…類友か。
セレーネは確かテストでいつも2位にいたが、運動は…うん…よく転けてるもんな…
「シーくんは~?」
「俺もリアルスキャンだよ」
「お兄ちゃんの身体能力なら戦闘もありだと思うんだけど」
「兄ちゃん頭も良さそうだしな!」
「テストいつも1位だし、確か運動も得意だったよね?」
「まぁそれなりにな。皆と一緒に戦闘も出来るとは思うけど…」
ステータスは…いや
基本的にステータスやスキル構成は人に聞かないのがマナーだったか…?
分からんことは聞くべし。
「そうですね。大まかなステータスを教える人もいますが」
「だから大体どのステが高めか教えるのよ~」
「3桁行ってるステが2、3個あれば十分って言われてるぜ!」
「うーん…全部のステータス3桁行ってるんだが…」
「お兄ちゃん十分高いよ!」
「すごいね。私も運は高めなんだけど…」
結構な差があるみたいだな…
これスポーツ選手とかヤバイことになりそうだけど、大丈夫なのか?
まぁそこら辺は運営が何か対策してるか。
さて、そろそろ紹介するか。
頭に乗ってる精霊たちをテーブルの上に移動させて
「この子たちは精霊だ。それぞれ色がそのまま属性になってる」
「初めてみたわ~」
「光を見たっていう報告はとても少ないんですよね」
「お兄ちゃん昔から動物に懐かれやすいけど、精霊もなんだ!」
「元気だな!」
「よく動くよね」
みんなが感心したように精霊たちを見ると
緑の子は飛び回り、青の子は飲み物をジーっと見つめ
黄色の子は俺の手の平に座り、赤の子は俺の指で滑って遊んでいる。
とても癒やされる…
じゃなくて、姉さんもエルフなのに見えないのか…
とりあえず俺には小人に見えること、声が聞こえることも伝えると
SSを見せて欲しいということで撮り方を教えてもらう。
遊んでるところを撮ってメールで送ると
「可愛らしいですね」
「かわいいわ~」
「小人さんだー!」
「ちっこいなー!」
「すごく癒やされるねー」
みんな笑顔になって眺めてる。
癒やしだよなー
それと見えない事に関しては恐らく条件がありそうとのことで
ステータスの確認を勧められたので見てみる。
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【名前】シェイド
【種族】エルフ
【レベル】Lv.1
HP :2500
MP :1900
STR :155
VIT :125
INT :190
MIN :140
DEX :170
AGI :160
LUK :300
BP:0
SP:10
【固有スキル】
《精霊魔法》《森の友》
【通常スキル】
《精霊言語 Lv.MAX》
【EXスキル】
《神眼》
【称号】
『創造神の加護』『精霊の親愛』
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んん?何か変なのがあるんだが…
ジッと見てみると
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『創造神の加護』
社長がダーツで当てた地域限定で仕込んだ
福引で本品を入手した者だけが得られる称号
〔EXスキル《神眼》会得〕
『精霊の親愛』
精霊に好かれた者に与えられる称号
精霊の好感度が上昇しやすい
〔スキル《精霊眼》《精霊言語》会得〕
《※精霊眼は神眼に統合されました》
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…社長って運営のことだよな…なにしてんの?
精霊の親愛は素直に嬉しいが…
とりあえずスキルは
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《神眼》
様々な視覚系スキルが一纏めになったスキル。
スキルレベルが存在しない。
常に最大効果発揮。
《精霊眼》
精霊を視る事が出来るようになる。
スキルレベル次第で視える段位が変わる。
(※精霊の親愛によりレベルMAX済)
《精霊言語》
精霊の言葉が理解でき、精霊の言葉を話せる。
理解度や話せる限度はスキルレベルによる。
(※精霊の親愛によりレベルMAX済)
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あぁ…そう…
だから視えてるし、言葉もわかると…
とりあえず伝えるか
「称号にEXスキル…ですか。またすごいのが出てきましたね」
「便利ね~精霊ちゃんたちもかわいいわ~」
「社長面白いねー!」
「すごい効果だな!」
「そういうスキルもあるんだね」
うん、大らかだね…
ただEXスキルは人に言わない方が良いらしい。
確実にうるさい人はいるんだとか
まぁ分からんでもないが…どこにでもいるもんだな。
精霊と精霊に関する称号の情報を掲示板に上げて良いか聞かれたので快諾しておいた。
あとは牽制の為に俺とセレーネのキャラ名の公開も
しつこく聞かれても面倒だしな。