第1話
ゲーム導入までは長いです。
しばらくは日常にお付き合いください。
お昼休み―…それぞれが各自グループを作って一緒にご飯を食べたり
売店に走ったりする時間。
「でさでさ!これがまたすげーんだ!」
「へー」
「って朔夜…俺の話聞いてる?」
「聞いてない」
「なんでだよ!ずっと話してたろ!?」
「だってお前すげーしか言わないし」
「ぐっ…いやでもな、もう少し聞いてくれたって」
「せめて分かりやすく言え。すげーじゃ何もわからん」
「うっ…」
のんびりと飯を食ってる俺の隣で喋ってるのは友人だ。
友人の名前は宮下 勇気。爽やか系のイケメンだがそのウザさで全くモテない
運動は出来るけど勉強はからっきしのアホである。ゲーマーでもある。
さて食べ終えたし、少しは聞いてやるか…後がうるさいしな
俺はため息を一つをついてから話を聞いてみることにした。
「はぁ…で、なんだって?」
「一緒にEWOやろうぜ!」
「EWO…進化する世界だっけか」
「そうそう!プレイヤーの行動次第で色々進化するんだ!」
「色々って?」
「種族とかスキルとか!プレイヤーそれぞれで独自の進化を遂げるんだ!」
「ふぅん…」
Evolving World Online(通称EWO)は最近発売されたVRMMOだ
舞台はありきたりだが剣と魔法のファンタジー。年齢制限はR-15だったか?
やりたい事を自由に出来るオープンワールド型とかなんとか。
スキル制で職業という概念はないが、自称する者は多いそうだ。
そして行動によってスキルを入手することも出来るから、人それぞれ異なった構成となる
ちなみにVRギア自体は結構昔に作られたが
医療用がほとんどでゲーム用はこれが初めてだ。
俺もCMで流れたデモムービーを見て興味は持ったんだが…
「ってことで一緒にやろうぜ!」
「VRギアがどれだけ高いと思ってんだアホ」
「うっ…」
冷めた目を向けると黙り込んだ。
VRギアはそれなりに高価だ
一介の学生(一人暮らし)にはそんな余裕はない。
こいつ何気に裕福な家だしな…何か条件を飲んで買ってもらったんだろう。
「ほら、もう予鈴鳴るぞ」
「おう…」
キーンコーンカーンコーン・・・
勇気が席に着くと同時に予鈴が鳴った。
興味はあるんだが、だからと言ってそうほいほいと高価なものは買えない。
親に言ったら速攻で送ってくるのは目に見えるが…さすがにな
うちの親…いや家族全員は俺に甘すぎると思う。
すでに家から遠いこの高校に入る際にマンションの手配やらで手間をかけさせたしな
明らかに仕送りが多い気がするけど、余計な物は買わない
これを言うと真面目だとか言われるけど、甘ったれにはなりたくないんだ。
さすがに勇気も俺の言いたいことが分かったのか
休み時間の度に来るが、EWOの話はしても勧めてくることはなくなった。
もうすぐ授業も終わるか…帰る前に本を返してこないとな
今日は3時で授業が終わってそのまま夏休みに入る。
「これで休みに入るが、あまり気を抜きすぎないようにな!宿題もしっかりやれよ!」
「「「「「はーい」」」」」
っと考え事してたら終わってたな
さて図書室行くか。
「朔夜ー!帰ろうぜー!」
「俺図書室よってくから先帰っとけ」
「また図書室か…ほんと本好きだな」
「だからココに来たしな」
「俺には理解出来ん…」
「お前教科書ですら眠そうにしてるもんな…」
俺が呆れた目をすると勇気は罰が悪そうにそっぽを向いた。
「まぁそんじゃあな」
「おう!俺は今日からゲーム三昧だ!」
「それは良いが宿題はしとけよ。分からんとこは連絡くれれば教えるから」
「う…分かったよ…」
俺の言葉に若干へこみながらも嬉しそうに帰っていった。
あの様子だと休みの最終日に泣きついてきそうだが…
自業自得だしその時は放っておこう。
さて図書室っと
この高校の蔵書量目当てで入学したから、俺にとっては宝の山だ。
俺とクラスメイトの女子しか利用してないんじゃないかって程に人を見ないが…
着いた着いた
ガラガラガラ――・・・
相変わらず立て付け悪いな…
ガタンッ
ん…?誰かいるのか…?