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部屋に戻って百合子さんと寛いでいるとドアをノックする音が聞こえた。
僕がドアを開けると怯えながらも夕食を乗せたカートを押して入ってくる料理人の男。
速やかに手配すると言っていた通り夕食が持ってこられたようだ。
料理人は手早くテーブルに料理を並べ、一通りの食材の説明をして早々に帰っていく。
どの料理も一目で分かるぐらい手が込んでいる。
あまり減っていなかった腹は急速に消化を始め、胃袋に収納するスペースを作っていく。
百合子さんは既に食べ始め料理に舌鼓を打っている。
僕もその勢いに乗り食べる。
どれもこれも美味い。
がしかし、高級レストランのような感じで毎日だと飽きてしまいそうだ。
昼に食べたあの定食屋の方が毎日食べるのに向いている気がした。
前世から高級な物とは縁がなかったからそう思ってしまうのだろうか?
≪美味しいのだけれど脂っぽくて毎日食べたら太っちゃいそうねぇ≫
と百合子さんも美味しさは認めつつどこか不満気だ。
今後の夕食はどこかの店で料理を持ち帰りにするかな。
のんびりとそんな事を話しながら夕食を食べ進める。
満腹感に2人で浸りながらグデーンとだらしなくソファーに横たわる。
また再び眠気に襲われる。
さっき仮眠をしたはずなのにと不思議に思いながらも強烈な眠気には抗えず眠りに落ちる。
憎悪と悪意が満ちた真っ暗でドロドロとした世界。
僕は血の涙を流しながら呪いの言葉を吐き何かを抱きかかえていた。
神様がいるとするならば何故こんな運命にしたのだろう。
悲しくて憎くて苦しくて痛くて…目に映る全てを破壊したい。
何より自分自身が何よりも許せず破壊してしまいたい。
だったら壊してしまえばいいんだ…。
自分自身を壊し尽くしてしまえばいい…。
僕は僕を僕自身の手で完全に壊してしまおう。
それが終えた時きっと僕は僕じゃなくなって。
終わりのない孤独を共に生きることになるのだろう。
モウソレデイイ…。
「つ!」
嫌な汗を掻いて飛び起きる。
心臓がバクバクと激しく鼓動し、胸が苦しく手が震える。
どんな夢を見ていたかまた覚えていないけど勝手に涙が溢れ出る。
手のひらで受け止める涙は透明で何故がほっとした。
≪どうしたのよ!?≫
百合子さんが慌てて駆け寄って涙で濡れた僕の頬を舐めてくれた。
ザラザラとした猫科特有の舌は少し痛いが、それよりも百合子さんが傍にいてくれる安心感で僕は救われた。
目を閉じ僕は百合子さんに抱き着く。
温かくてモフモフなその毛に顔を埋め、湧き上がる不安と恐怖を押し込める。
≪…怖い夢でも見たの?大丈夫よ、アタシが傍にいるから何も怖くないわ≫
ぐずる子供をあやす様な優しい声色に僕は目を閉じる。
部屋がノックされるまでの間僕は無言で百合子さんに抱き着いていた。
来訪者を告げるノックの音に僕はゆっくりと離れ、顔を服の袖で拭う。
多少目が赤くても問題ないだろうと対応にあたることにした。
「あ、マッサージをしに…き、き、きまし、た!」
緊張しているのか目を忙しく泳がせているギョロ目野郎。
無言で部屋に招き入れると、テキパキとマッサージ用の台を設置し準備をする。
百合子さんがソワソワと歩き回る。
特にやることもないのでマッサージを受けている百合子さんでも見ようかと僕はソファーに腰掛け腕を組む。
「マッサージして欲しいのは俺の相棒の方だ。女性だと思って丁重にやってくれ」
僕がそう言うとギョロ目は何度も力強く頷く。
準備が整うと百合子さんはマッサージ台に飛び乗り伏せる。
ギョロ目は恐る恐る百合子さんの前脚に触れてマッサージを始める。
最初はおっかなびっくりだった手つきは時間が経つにつれ熟練の手つきになっていく。
それと同じく百合子さんの体から力が抜け始めリラックス状態になっている。
気持ちよさそうで何よりだ。
明日は僕も受けてみようかと考えながらマッサージが終わるまで見ていた。




