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小鳥の囀りが聞こえ、朝の訪れを教えてくれる。
考えることに集中し過ぎたようだ。
急いで小屋に戻らなければ百合子さんに心配をかけてしまう。
考えがまとまってスッキリした頭で僕は走り出す。
今僕が浮かべている笑顔はどんな笑顔なのか、それは僕にも分からない。
「おはよーさん。朝ご飯出来てるでー。キノコしこたまぶち込んで焼いたパンと薬草と肉スープの心も体もあったかメニューや」
小屋の外で小さな鉄鍋をかき回しているマキシさんがいた。
昨夜の発言は幻だったかのようにいつも通りだ。
風に乗って鍋から美味しそうな匂いが漂う。
空腹だったようでお腹が元気な音を上げた。
「おはようございます。食事の準備していただきありがとうございます。今日のご飯は美味しそうですね」
僕がそう言うと何度も頷きながら
「わしは料理するのが趣味なんよ。美味しいんは当たり前やん。パンは小屋の中に置いといてるからこれ持ってさっさと食べーや」
ニンマリ笑って僕にスープをよそった器を渡す。
スープは僕の分で売り切れのようだ。
「あれ?マキシさんはもう食べ終わってるんですか?」
何気なく聞くと笑みが深まり
「スープは坊ちゃんだけの分しかないで。わしと百合子はんはパンで十分や」
その笑顔を見てこれは匂いは美味しそうだけど味はダメなパターンだなと食べる覚悟を決める。
味はアレだけど効果は絶大だからある意味凄い。
そう思いながら小屋に入ると、百合子さんは待っていたのか置いてるパンに手を付けた様子がない。
「おはよう、百合子さん。考え事し過ぎて戻ってくるの遅くなっちゃってごめんね」
百合子さんの隣に座り空いている手で頭を撫でる。
百合子さんは少しの間僕の顔を見て、目を細めた。
≪どうするか決めたのね。食べ終わったら教えて頂戴。もうここまで来たらアタシ達は一蓮托生の相棒よ≫
そう言って優雅にパンを尻尾で持ち上げ口元に運び食べ始めた。
心強い相棒の言葉に僕の口元は思わず緩む。
小さい頃からずっと一緒にいてくれる頼りになるおね…ん?おに、いややっぱりお姉さん的存在だ。
スープの器に口をつけた途端に味の暴力が口内を暴れまわった。
「んぐふっ!」
百合子さんとのやり取りで小屋の前で決めた覚悟をすっかり忘れていた。
咄嗟に手で口を押え目尻に涙を溜めながら飲み込む。
これは食べる薬食べる薬。良薬口に苦し。
何度も心の中で唱えながら残りも一気に飲み干していく。
「おー、自力で飲み干すとは中々やるやん」
いつの間にか小屋に入ってきてたマキシさんにサムズアップされる。
僕はマキシさんを恨めし気に睨みつつパンに手を伸ばす。
恐る恐るパンをかじるとコリコリとしたキノコの触感と小麦の香ばしい味が口の中を浄化していく。
…美味しい。パンに抱いていた警戒心なんて放り出し、本能のまま無我夢中にパンを胃袋に収めた。
一気にパンを平らげ満たされた食欲の満足感に浸る。
流石にお茶はないので水魔法で喉を潤す。
全員が食べ終わったのを見計らって僕は口を開く。
「僕は今後人間を完全に敵だと判断します。だけど敵だからと無暗にこちらから手を出すようなことはしません。
人間と無用な問題を起こして時間をとるよりルゥナ様が言っていた太陽の通り道にいる古い友人という方に会いに行くことを優先したいので。
そこがどこにあるのか、そもそも僕はこの世界がどれぐらい広いのかどんな大陸があるのか等の基本的なことすら知りません。
なので人の町に寄りつつ情報を集め旅に出ようと思います」
僕がそう言うと百合子さんは尻尾で僕の背を軽く叩き頷いた。
マキシさんは腕を組みいつもの胡散臭いニンマリ笑顔を浮かべた。
「それなら冒険者になりゃええ。冒険者ギルドで百合子はんと二人で冒険者登録と従魔登録すりゃ金稼ぎつつ情報も集めやすくなるし、百合子はんが街に入ってもいいようになる。
んでもって船に乗って大陸を移動する時もそこそこの高ランク冒険者ならスムーズに出国出来て一石四鳥や」
有難い助言を頂いたが、ここでずっと気になっていたことを聞く。
「マキシさんは何故僕と百合子さんを手助けしてくれるんですか?そもそも何故あんな土砂降りの中あの場所を通りがかったのか。土砂降りの中を進まなければならないほど切羽詰まった用があったようにも見えません。それに貴方は…人間ですか?」




