15
まだ夜が明ける前に自然と目が覚める。
ベッドから起き上がりゆっくり準備運動をして体をほぐしていく。
こうすることによって体の調子が良くなる気がする。
あくまで気がするだけであって実際どうなのかは分からない。
ある程度体が暖まってくると二階からルゥナさんが降りてきた。
順調に成長し男らしくなってきたある日ギルさんが「こんな男臭い奴と同じ空間でルゥナ様を寝かせるわけにはいかない。神樹の内装拡張工事を行う」と急に言い出しルナエルフの村から数人引き連れあっという間に3階まで作り上げてしまったのだ。
広々とした一階だけの空間が…なんということでしょう。
匠の手によって3階まで拡張されました。
新しく作られた2階と3階は匠の粋な計らいにより大きな窓が取り付けられ太陽の光が取り入れやすくなっております。
更に2階の寝室は天蓋付きベッドが置かれ、棚にはクマやウサギなど様々な動物のぬいぐるみが所狭しと収まっています。
お洒落な螺旋階段は手摺の細部まで装飾が彫り込まれ最高の一品に。
って3階まで作る必要はあったのだろうか。
そんなこんなで3階は現状物置となり、2階がルゥナさん用の階、1階の隅に置いてあるベッドが僕の場所という感じになっている。
「おはよう、アルバ。15歳おめでとう」
慣れた手つきでお茶を入れ始めるルゥナさん。
僕が手伝う間もなくあっという間に2人分のお茶がテーブルに置かれる。
向き合うように椅子に座りお茶をいただく。
「おはようございます、ルゥナ様。それとありがとうございます」
少しだけ気恥ずかしくはにかんでしまう。
その様子すら楽しそうに笑ってくれるルゥナさん。
「あっという間に大きくなっちゃって。拾ったときはこーーんなに小さかったのに」
そう言いつつ差し出した親指と人差し指はほぼくっついていた。
「いやいやそれどんだけ小さかったんですか」
思わずツッコミをいれてしまう。
「ふふっ」
笑って誤魔化された気がする。
2人でのんびりとお茶を堪能する。
お茶を飲みながらチラッとルゥナさんを盗み見る。
今日の髪形も結い紐で後ろに緩く結っただけのシンプルな髪形。
少し臥せた目は長い睫毛が強調されている。
服装は古代ギリシアのキトンによく似ており、ゆったりとしているのにどことなく色気が洩れている。
何度見ても綺麗な人だな。
性別不明だけど。
「どうしたの?」
首を傾げ僕を見つめる。
「あ、いえ、その今日は15歳のお祝いがあるとギルさんが言っていたので何があるのかなと思いまして」
咄嗟にそう言うとあぁと納得したように頷き笑顔で
「15歳になったからルナエルフの村に入れるようになったんだって。それで村を上げて盛大に
祝うってギルが言ってたよ」
んんー?村に行けるのは嬉しいけど村を上げて盛大に?
何でだろう。素直に喜べないのは。
「そうですか。楽しみです」
ぎこちなく笑い少し冷えたお茶で喉を潤す。
ルゥナさんはニコニコしている。
「日が出たらギルが迎えに来るから朝ご飯は村で食べようね」
いつもより楽しそうなのは僕の15歳のお祝いがあるからだろうか。
今日はどんな一日になるのか予想がつかないけれど、楽しい時間が過ごせればいいなとぼんやりと思った。