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~拝啓前世の僕の両親へ~
僕は今異世界で頑張って生きております。
夢と現実の狭間とやらで案内人と称する謎のショタボーイに強制的に転生させられたのが事の始まり。
転生人生開幕早々川に流され桃太郎ならぬ籠太郎で始まりました。
神獣と呼ばれている性別不明の美人さんに拾われアルバという素敵でオシャンティーな名前を付けていただきました(三年ほど名前ないことに気づかなかったのはご愛敬ということで)
ルナエルフというこの森に住むこれまたどえらいイケメンエルフギルさん(正式にはギルバード・ルナ・シルワというらしい)に凄まれ最初の頃は滅茶苦茶怖かったです。
僕は育ててくれたルゥナさんの力になるべく強くなることを選び、自ら望みました。
思いは全力フルスイングで空回りして森の一部をぶっ飛ばし、危うく自分が黄昏の向こうに行きそうになりました。
あ、黄昏の向こうに行くっていうのはそちらの世界でいう天国に行くっていうような意味です。
簡単に言うとあの世に行くってことでしょうかね。
その後魔法禁止令が出て魔獣達と野生児生活が始まりました。
角がないのが普通の獣で、角があって魔法を扱えるのが魔獣という分け方らしいです。
魔獣達はとてもとても頭が良く僕が分からないことや教えてくれたことが出来ないと鼻で笑ってバカにしてきます。
鳥系の魔獣などは糞を爆撃機の如く空から降らしてきます。
しかしそのおかげで僕の身体能力やサバイバル能力は飛躍的に上がったように思えます。
10歳を迎えてルゥナさんから魔法の訓練再開が許可されました。
久しぶりにギルさんとの特訓が始まって僕の決意はあっさり砕かれそうになりました。
魔法の使い方の復習などはなくぶっつけ本番魔獣達からの魔法の多重攻撃。
活き活きとした瞳で僕に魔法を放っていた魔獣達の何とも小憎たらしいことか。
更に次の日からは剣や弓の扱い方や体術まで訓練を受けることになりました、
これまたギルさんは情け容赦なくフルボッコにしてくれました。
何度黄昏の向こうに行きそうになったことか。
丁度いいタイミングでルゥナさんが光魔法で治療してくれたおかげで生き残ることが出来ました。
そんなハードモードな日々を過ごして僕は明日15歳を迎えます。
拾われた日から15年が経つということです。
この世界では15歳で成人という扱いらしく、今まで誕生日を祝うとか無かったのですがその時だけは祝うらしいです。
祝うとみせかけてギルさんが特別訓練だ!とか言い出さないか正直怖いです。
未だギルさんには手も足も出ず右へ左へ地面に転がされていて辛いです。
今世でサッカーボールの気持ちが分かったように思います。
さて長々とお手紙を書きましたが最後に。
転生があるってことは僕自身が証明済みです。
きっと父も母も生まれ変わって二人はまた恋に落ちていることでしょう。
二人のこれからの人生の幸せを遠い異世界の地から祈っております。
運が良ければ二人もこの世界に転生していてどこかで出会うかもしれませんね。
そうなったら楽しいなとこっそり思っています。
それではまた機会があれば手紙を書こうと思います。
~不出来な息子より~