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木の匂いがする。

意識が浮上して目を開けると神樹の中にある僕用のベッドの上だった。

ぼうっと天井を見つめていると記憶がフラッシュバックした。

魔法の暴発、荒れ果てた土地、消えた…ギルさん…。


「あっ…あぁあぁぁぁぁぁぁあ!!!」


両手で顔を覆い叫ぶ。

そうでもしなければ自分がしてしまったことに押しつぶされてしまいそうだから。

自分が壊してしまったのだ。

美しい自然を。大事な存在を。


「あぁああああぁあぁあぁぁぁあぁぁ!!!!」


「騒がしいぞ!寝起き早々何を騒いでいるのだ!!夜泣きをする赤子の方がまだ静かだ!」


激しい音と共にギルさんの怒鳴り声が聞こえた。


「…ふえっ?」


混乱しつつゆっくり起き上がれば、玄関の扉を開けた状態でギルさんが立っていた。

いつも通り眉間に皺を寄せたイケエルギルさんがそこにいる。

夢遊病患者のような足取りで近づきギルさんに抱き着く。

戸惑うギルさんに構うことなく温かくて草の香りがする身体を堪能する。


「生きて…たの…?」


そのまま顔を押し付けながら聞いてみた。

一つため息をついたかと思うと体から力を抜けたのが分かった。


「この私がお前の未熟な魔法で死ぬわけがないだろう?」


そう言って僕の頭をいつものように撫でてくれた。

それからあの時起こったことを教えてくれた。

ルゥナさんが言った通り僕は水蒸気爆発を起こした。

ギルさんは風の魔法壁で咄嗟に自分の身を守っていたらしい。

そしてすぐにルゥナさんが来てこの爆発は事故であり人からの攻撃ではないことを村に戻ってルナエルフ達に伝えるようにとギルさんに言った。

ギルさんはルナエルフの村に行き、その間に僕はルゥナさんの光魔法で事無きを得た。

そのちょっとしたすれ違いで僕は自分の魔法でギルさんを殺してしまったと勘違いしてしまったと…恥ずかしい。


さっきまで泣きじゃくっていた顔は今は赤面しているのが分かる。

あんな大声で泣き喚いたのが恥ずかしくてたまらない。


「ふっ」


鼻で笑ったかと思えば僕を抱き上げ額と額をくっつけた。

イケエルは間近で見ると心臓に悪いよ、僕男だけどドキドキしちゃう。

初めて見る柔和な笑顔は破壊力抜群。


「私はエルフでお前は人の子だ。寿命でいえばお前の方が早く死ぬだろう。最後は私が看取ってやるから安心しろ」


つまり僕より先に死ぬことはないから安心しろってことかな。

分かりづらいけどギルさんの心遣いが嬉しい。


「…分かった」


ふにゃりと笑うとギルさんも笑顔を返してくれた。

最初の頃の怖いギルさんの面影は今はない。


「それで話は変わるが、お前の魔法訓練は一旦中止となった。」


一瞬で消えた笑顔。


「お前はいくら呑み込みが早く優秀とはいえまだまだ幼い。心身ともにもう少し成長してから再開することに決まった。これはルゥナ様が下した決定であり覆ることはない。再開する時はルゥナ様が決められる。分かったな?」


あんな事をやらかしたんだから当然といえば当然だ。

これは頷くしかない。


「それとだな。今まで神樹の周りで一人で遊ぶか、私やルゥナ様と近くの川へ行くか魔法の訓練をするかぐらいしかさせていなかったな。それだけだと退屈だろうからと今まで離れてもらっていた魔獣達を呼び戻すことになった。これからは魔獣達と遊んでもらえ」


「魔獣ってなに?」


首を傾げるとそこから説明が必要かと小さく舌打ちをするギルさん。

さっきの優しいギルさんはいずこに。


「この世界には獣、魔獣、魔物がいる。獣は獣だが、額に角を持つものを魔獣という。魔獣は普通の獣と違いその角で魔力を操ることが出来る。それと比較的知能が高いものが多い。簡単に言えば角がなければただの獣、角があれば魔獣だ。それから魔物は体内に魔石を持っているものを魔物という。魔物は魔獣と違い悪意の塊だ。魔物は魔物以外の全ての存在を敵とみなし襲ってくる。意思の疎通など不可能だ。出会ったら即殺せ」


角がないのが獣、あるのが魔獣。魔物は即コロ。よし覚えた。


「えっと、この森に魔物はいるの?」


「この森にもいるが我等が見回っているから数は少ない。」


つまり殺して歩いていると。なるほどなるほど。


「とりあえず外に出るぞ。魔獣達がお前に会いたくて待ちわびている。」


抱き上げられたままの状態で外に連れていかれる。

外にはたくさんの魔獣達がいた。

モフモフパラダイスここにあり!

豹やトラなど猫科の魔獣から鷹や鷲の猛禽類っぽい魔獣、馬の魔獣や、犬の魔獣も。

僕はギルさんに降ろしてもらい即座にモフパラへ駆けていくのであった。


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