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のんびり更新ですー⊂⌒~⊃。Д。)⊃
目を開けると白い天井が見える。
手入れが行き届いているからか、埃一つ見当たらない。
ぼうっと天井を見つめていると、漸く意識がはっきりしてきた。
「百合子さん!!」
飛び起きて、掛け布団を跳ねのける。
何故僕はこんな悠長に寝入ってしまったのか。
頭を抱え込みたくなるが、そんな時間も惜しい。
視線を部屋周囲に回すと、テーブルの上に置かれた綺麗にされた防具と服が見えた。
即座に着替える。
一刻も早く百合子さんに会いたいと思っていたのに、何故こんな所で寝てしまったのか。
奥歯を噛み締めて、最短ルートである窓を開ける。
寝ていた部屋の高さから三階と推測。
百合子さんが走り、なぎ倒された木々が遠くに見える。
この高さなら何も問題はない。
迷わず窓枠を蹴り、地上に飛び降りる。
窓から見えた方向に迷わず走る。
あの方向には百合子さんが通った道がある。
「ちょ、ちょっと待つっすよー!!」
後ろからケタの声が聞こえる。
軽く後ろを振り返ると息も絶え絶え、フラフラな足取りで僕を追いかけてきていた。
仕方なく減速し、足を止める。
「何であんたはそんなに猪突猛進なんすか…」
あきれ顔のケタ。
首を振って応える。
「俺は少しでも早く百合子さんと合流したい。無駄な時間を既に過ごした。
俺が寝てしまった一秒、一分、一時間は何にも代えがたいものだ」
僕の答えにケタは苦笑いを浮かべる。
「分かってるっすよ。あんたがあの従魔が可愛いのは。でも、ただ追うだけなら遠回りっすよー。これを持って行って下さいっす。」
右手に差し出された物は地図。
「あんたなら人では通らないであろう場所も関係なくいけると想定しての道順でさぁ。
さっさと追いついて無謀な復讐劇を止めるっすよ」
頬を伝い顎に流れた汗を左袖で拭うケタ。
僕は受け取り、軽く目を通す。
ここから最短で百合子さんが向かったであろうパールティアの場所までの道順が示されていた。
「早く迎えに行ってやって下さいっす。大事な存在なんすよね?」
少し寂し気に目を伏せながら笑うケタ。
「お前は…」
僕は続く言葉を紡げなかった。
「お前は大事な存在を迎えに行けなかったのか」など今言った所でこの男の古傷を抉るだけは。
「早く行くっすよ!」
無理やり浮かべた笑顔には痛みが隠れていた。
頷き、地図を握りしめる。
「ありがたく受け取る。」
胸ポケットから布袋を取り出しケタに投げる。
無造作に投げた布袋をケタは危なげもなく受け止めた。
「情報には報酬だ」
僅かに口の端を上げ、笑みを作る。
一瞬呆けた表情を浮かべたケタは、ニンマリを商売人の笑みを浮かべる。
「毎度ありっす」
その言葉を背に僕は走り出す。
大事な存在である百合子さんに会いに。
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