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ゆっくり更新ですみません。

ルナの森という楽園を見つけた。

そこは光の神獣様のルゥナ様が恵みを与え、エルフ達が守る森だ。

番と子を残している森よりも人の手から逃れ育児をしやすい場所だ。

ようやく見つけた条件的に最高な場所。

早く戻って、己の番と子を連れて巣を移動しよう。

自分が探していた理想の巣の条件が見つかったせいか。

それとも嫌な予感がする虫の知らせか。

父であるクァールは妻子が待つ第一大陸へと足を向ける。

ここなら圧倒的統治者、いや守護者である神獣様がいる。

だから胸の高鳴りは未来への希望が零れだした鼓動だと信じて走り出す。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


クァール親子が住んでいる森は今や炎が歓喜の声を上げ、全てを燃やし尽くさんとしている。

母であるクァールが身重ながらも気丈に立ち上がり唸り声を上げ、眼前の敵を睨み付ける。

その横には目を丸く見開き、口を半開きにする若いクァール。

住処にしていた洞窟を囲むように鎧を着た男達が剣を構えている。

熱い炎を背に背負って立つのは若きクァールの友の男。


「悪しき魔獣よ、今こそ我がアヴェーツァ家が成敗させてもらおう!!」


腰に引き下げた鞘から剣を抜き出し、むき身の刃を向けてくる。

若きクァールは男の言動を見て、内心クエスチョンマークでいっぱいだった。

何故あの泣き虫は牙を剥く?

何故あの泣き虫は敵を見るような眼差しで僕と母を見る?

何故?

なぜ?


『人間は私達の言い分は聞かないのよ。如何に人間が得をするか。

それしか考えていない悪しき生き物なのよ』


母であるクァールは重たい腹を抱えながら警戒を緩めず我が子に囁く。

額から生える角に魔力を集め、すぐにでも人間なぞ簡単に薙ぎ払える威力を持つ魔法を準備する。

それに待ったをかけるのは若きクァール。


『ま、待って!!あいつは悪い人間じゃないんだよ!すぐに泣くし、弱音みたいなこというし!!

いつもうじうじしてるし!本気で僕等が対抗したら殺しちゃうよ!!僕が説得するから!!!…お願い母様!お願い…』


目と耳を伏せ母に希う子の願いを跳ね付けるほど母は強くなかった。

子の友であるなら、矛を収め立ち去ってくれるならば…と母は威嚇の牙を収める、

若きクァールはいつものように友である男に甘えるような声である説得を投げかける言葉でゆっくりと近づく。


「お前…こんな時でも…俺を「放てー!!!」なっ⁉」


男が泣き出しそうな顔で剣を下げると同時に副官である男が無慈悲な号令をかけた。

号令に従い、放たれる矢と魔法。


あっという間の出来事だった。


濛々と立つ煙が晴れた時には全てが終わっていた。

人と魔獣が手を取り合い生きていく未来が。

若きクァールと落ちこぼれだと自分を呪う人間との友情が。



若きクァールを庇い矢を受け、魔法の余波を受けた身重のクァールはその身をズタズタにされていた。

母であるクァールの屍から滴る血が落ち葉に包まれた森の地を鮮明な赤に染めていく。


『「あ…あぁ…」』


人間を率いてここまで来た男の驚きの声と若きクァールの嘆きの声が重なった。



「ち…違っ…!」


男は顔色を失い真っ青にしながら許しを請う様に若きクァールに視線をやり息を飲む。

毛を逆立てながら、既に命の炎が消えた母クァールを舐める若きクァール。

凛々しく雄々しく天を向き伸びていた角は蝋燭の様に解け短くなり、アメシストのような透き通る瞳は血の様にどろりとした赤に染まり始めていた。


「俺はこんなことしたくなかったんだ!!だが、父上が…っ!」


男が紡ぐ音は若きクァールに言葉は無意味だった。

愛する母が死んだ。

愛する母の腹の中で育っていた兄妹も死んだ。

何故死んだ?

自分が人間を気まぐれに助け、情を寄せたから。


あぁ…人間が憎い…。 


だがそれ以上に人間に情を寄せた自分が一番憎い。


若いクァールの理性が黒に塗りつぶされ、残る思考には〈人間を殺せ〉しか残らなかった。


最後に己を取り戻した時には、至る所に人の血肉と臓物が巻き散らかされた生臭い風景。

木々は焦げて、消し飛び、激戦の後を物語っていた。


そして


「ごめんなぁ…」


と泣きながら己が胸に剣を刺しているともの泣き顔だった。

楽しい内容ではないですが、続きが気になる!って思ってくれた方は評価をしてくださると更新速度が上がりますのでよろしくです( ˘•ω•˘ )

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― 新着の感想 ―
[良い点] クァールが抗わず、そのまま倒されていたら…男は 後悔の念に苛まれながらも仕方ないと、 納得していたのかなあ。 とか、男が討伐に走ったのは名誉の為なのか、 止められない環境だったのかなあ……
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