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あけましておめでとうございます。

人間は憎むべきモノで、僕と百合子さんは人間を憎みながら旅をしていたんだ。

だって、人間は自分達の欲望のままに僕と百合子さんから幸せを奪ったから。

人間はゴミ以下の存在だから僕は今まで出会った人間に何も思わず、むしろ不愉快に思いながら接し、殺してきた。

でも、僕も人間だって百合子さんは言って立ち去った。

僕も人間(ニンゲン)…?


考えを纏めようと思考を巡らす。

グルグルと巡らす思考は、僕をどんどんと見たくなかったコトに導く。

僕は川に流されていてルゥナさんに拾われた。

ルゥナさんは何て言っていた?


ー己が生んだ我が子すら捨てるとは人間というものは何とも理解できぬ生き物ですねー


ワスレテイタ…。


僕は人間の両親に捨てられて捨てられて…人間の子供だった…。

僕はニンゲンだった。

都合よく忘れていタ。


「あ、まっ…ゆっ…っ…ごめんなさい…」


もう立ち去ってしまった百合子さんに届く言葉はありもせず。

僕は締め付けられる喉を掻き毟る。


「…ニンゲンでごめんなさい。」


絞り出した言葉は血の味がした。









何時間も僕はその場から動けずにいた。

嘘に決まってるじゃない、と百合子さんが現れるのではないかと淡い期待と圧倒的絶望が鎖となってその場に僕を雁字搦めにして動けない。

掻き毟った喉から流れていた血はとうに止まって固まっていた。

血の匂いに誘われた魔物が来ればいいのに。

魔物に襲われて殺されて二度と目が覚めなければいいと。

重たくなった瞼を閉じて、毎日見る悪夢の世界に落ちていく。

もう怖くないよ。

百合子さんに見捨てられた僕に怖いものはない。


「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


誰かの絶叫のような慟哭。

あぁ、いつもの悪夢だと思うと安心する。

いつもの顔が見えない誰かが何かを抱え、空に向かって吠えている。

それはまるで遠吠えをしている狼の様な。

あまりにも獣臭い行為に見えて、滑稽にも思えた。

悪夢の男は大事そうに何かを抱きかかえたまま離さない。

いつもは良く見えない男が抱えているモノが今日はやけにはっきり見えた。

夢の中なのに,鼓動が急に早まったのを感じる。

それはゆっくり振り返って、口を開く。


「こうなりたくないなら急ぐがよい」


目から血の涙を流すそれは…。



「っ!」


目が覚める。

残念な事に魔物に襲われることなく僕は目を覚ましたようだ。

忙しなく動く鼓動が、僕に急げと告げているようだ。


「百合子さん!!!!!」


起き上がり、一気に走り出す。

ただのいつもの悪夢だと切り捨てられるほど生易しくない悪夢。

いつも慟哭をあげているそれは





血にまみれた百合子さんを抱きかかえていたからだ。

今年も亀更新よろしくお願いいたします。

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