第3話 冬里の習い事
この間、フェアリーワルドのゲーム企画に参加して久々に剣に目覚めたシュウのもとに、ちょっと不思議な巡り合わせで太陽月光流の復活を知らせるチラシが届き、シュウは150年ぶりに剣術のお稽古を始めた。
とはいえ、とうの昔に免許皆伝してたから、実際行ってみると今の師範より腕が良くて、ほぼ教える立場になってるって苦笑いしてた。シュウらしいよね。
で、教える立場って言うと、僕も今、お弟子を4人も持ってるお茶の先生なんだよねー。
「はい、良く出来ました。じゃあ次、夏樹、お手前してみてくれる?」
「はい!」
元気にお返事して、夏樹は準備すべく部屋を出て行く。夏樹は正座したくて始めた茶道だけど、結構はまってしまってるね。
日本の道とか、術がつく習い事って、背筋を伸ばして呼吸を整えてって言うのが基本だから、なんて言うのかな、気持ちに1本筋が通るって感じ? なんだか心地いいよね。
え? 僕は何か習い事しないのかって?
うーん、そう言われてもなあ。
先に言っておくけど、決しておごっている訳じゃなくて。
僕に限らず、千年人ってさ、1回体験すれば(国宝級のすごく難しい事なら、まあ3回くらいかな?)大体何でも習得しちゃうんだよね。
だから、今は特に習いたいこともなく。
つまらない人生だって?
ぜーんぜんそんなことないよ、毎日楽しいし。
でも、何でこんなに楽しいんだろ? あれ、考えたことなかったな。
「………」
(珍しく、冬里が考え込んでおりますので、しばし待たれよ)
あ、そうか。
わかった、これだ。
パシィ!
「ちょっと夏樹! それ私が取っておいたマロンロールの細後の一切れよ!」
「へ? だってここうちの家で、これが置いてあったの、うちの冷蔵庫ですよ」
「この間まで私も住んでたじゃない。だったらここは私のキッチンで、私の冷蔵庫よ」
「由利香、さすがにそれは、へりくつが過ぎるんじゃ」
「だよな、椿の言うとおりですよ!」
「お黙りなさい。この家では私がルールブックよ」
と、さっき夏樹が嬉しそうに冷蔵庫から取り出したマロンロールは、由利香のお腹へと消えたのだった。
「ひでぇー」
ちょっぴり泣きそうな夏樹を、なぐさめる椿。
「悪いな、夏樹。今度来るとき、忘れず持ってくるよ」
「ありがとう、やっぱ椿サイコー」
とか。今のは単なるサンプルの出来事だけど。
どこにいても、いつも何がしか興味を引かれる出来事がある。
人間観察。
面白いよね、何百年見てても飽きないよ?
神様って、なぜこんな面白いものを世に出現させたのかな。
今度聞いてみようっと。
で、今はそういうのが僕の習い事。
え? ちょっと意味が違うって?ま、いいんじゃない?
で、僕にとって習い事の先生はね、百年人。そう、きみだよ。だ・か・ら、間違ってもつまらない生き方は、しないでよね。
だって僕はね、楽しんでるきみたちが、大好きなんだから。
お次は冬里の習い事、ですが。まあ、冬里らしいっちゃ、らしい展開ですね(笑)
で、本人は、千年人が一度体験しただけでなんでも習得できると言ってますが、まあそれは人によりけりかと。冬里が優秀すぎるのかも? ですね。
おかげで? 超!ショートストーリーになってしまいました。今後もシリーズは続くかと思われますので、どうぞのんびりおつきあい下さいませ。