終末旅行。
一面灰色の広がる世界。
空は雲に覆われ。風が寒々しく吹く。
街は破壊された建物と瓦礫の山。
無事な建物を見つける方が困難な程。
時折聞こえる瓦礫の崩れる音が耳に届く。
「ゼノー。知ってるかい? 昔の空って言うのは青かったらしーぞ」
隣を歩くユスタの間延びした声が聞こえる。
どうせまたそこらに転がっている本から得たばかりの知識なのだろう。
ユスタの手には大分古びた本が握られている。
表紙の大部分は色あせていた。だが、そこに写る綺麗な女性や、毒々しい程に黄色い液体よりも。
一面に広がる青い空に目を奪われる。
「知らなかった。こんなにも綺麗だったんだね、空って」
「だよねー。僕ら灰色の空しか見た事無いもんねぇ」
「ユスタ、その本どうする?」
「”ちょーろー”に見せてみるよぉ。せっかく拾った本だし。僕のコレクションに加えるんだ」
”ちょーろー”は僕らの住むコロニーの少し変わった爺さんの事だ。
いつも、しかめっ面で不機嫌そうだし、本当に怒ると鬼の様に怖い。
白髪頭に長い事、手入れのされていない髭。それを見た子供達が付けたあだ名が”ちょーろー”だった。
本来の名前はシュウイチと言うらしい。大人達はシュウ爺と呼ぶ事が多く、僕もそう呼ぶ事にしている。
僕はそれほどでもないが、ユスタは仲が良い。地上で新しい拾い物を持ち帰ってはシュウ爺に見せに行っている。
この日も地上探検からコロニーへ戻るとシュウ爺の所まで一直線に向かっていた。
ユスタがシュウ爺の所から戻ると急に膝を着き、倒れ込んだ。
倒れた衝撃で、防寒帽が脱げ、転がる。
うつ伏せのまましばらく動かないままだ。
ユスタは食い意地を張ってよくお腹を壊す事がたまにある。
だから今回もそれだろう。
「ユスタ? お腹でも痛いの?」
「違うよー」
「ならなんで?」
ユスタは顔も上げずに先ほどの表紙の下の部分を指差す。
「ゼノー。空だけじゃなくて、”海”も青いんだって」
「そもそも”海”って何?」
「すごくしょっぱい水のとーーーってつもなく広い池なんだってさー。僕らの時代の”海”も青いのかなぁ?」
「さぁ?見に行ってみる? 」
僕の何気ないこの一言で。
僕らは二人、海を目指して旅をする事になる。
代わり映えの無い灰色の中。
ただ一つ。青を探して。




