もうひとりの僕?
とりあえず、なんとか熊から逃げ切った?俺は現状をしっかりと把握することにした。
幸い、俺の脳の頑張る方が、俺が無我夢中で逃げていただけにたいして熊が何を喋っていたかなどを記憶していてくれたらしい、凄いぜ、俺の脳。
『せやで、褒めてくれてもええんやで』
「そうだな、褒めてやるよ俺の脳」
『おう、ほんでな、熊が言うには、4人おるらしいで、人間』
「ほう、ということは、いや、もう俺もある程度察しはついてたけど、やっぱり親父が持ってきたあのチラシが原因なんだろうな」
『せやな、多分そうやろ、4人ってのはまだ確定とは言えんが、お前……いや、俺か、がおる時点で後の3人は俺等の家族やろうし、俺等家族が巻き込まれたんなら可能性があるんはあのチラシだけやしな』
「せやな……って、移っちまったじゃねぇか方便」
『いやぁ……移るもなんも、俺はお前やねんけど……』
「じゃあ何故お前は関西弁なんだよ……」
『心の闇……やな、人間の神秘やで』
ひとまずこれ以上脳と話すと、俺がおかしな人になりそうだったので、ここらで閑話休題
とりあえず、俺が目を覚ましたであろう場所付近を拠点として(といっても別に目印があるわけでもない)
俺以外にも飛ばされて?来たと言う家族を探すことにした。
一応、上着を脱いでわかりやすい位置にあった樹の枝に干しておき、他の家族がここを通った時、俺がここに居たとわかるようにはした。
そして、しばらくそこを中心としながら、必死に方角を見失わないように少しづつ捜索範囲を広げていった。
しかし、めぼしい成果もなく、日も暮れてきたので仕方なく俺は完全に日が落ちる前に拠点に戻ることにした。
「どうしよう、俺このままここで死ぬんだろうか、というかここ、結局どこなんだろう、日本にこんな場所絶対ないよな……」
『せやな、日本はまず熊しゃべらんしな』
「脳も喋らないけどな」
この世界(ひとまず俺が居た場所とは確実に違うであろう場所)に来てから、俺の身体、というかもとい脳、なんかどんどんおかしくない?あ、でもそれはつまり俺がおかしいってことに……
軽く意気消沈していると、ここから少し離れたところから煙が上がって来た。
煙……?いや、あれはいわゆるのろしって奴なんかじゃないか?
『のろしっていうか、あれもはや文字やねんけど……』
脳の言うとおり、その煙は徐々に形づくられていって、そして、こんな形になった。
【ごはんよ~】
あれは、多分、うん、きっと母さんだろう、母さんしかありえない。
遂に家族(だと思いたい)の手がかりを見つけた俺は、直ぐ様その煙の火元目指して走るのだった。




