6話
楽しい時間は過ぎるのも早く、黄昏時をむかえようとしていた。
「姫様、そろそろお部屋に戻る時間でございます」
「そうね、少し肌寒くなってきたし戻りましょう」
ライカの言葉にフェリシアが椅子から立ち上りながら答える。
「肩掛けをお使いになられますか」
「ううん、そこまで寒いわけじゃないから必要ないわ」
「かしこまりました」
ライカたちは城内に向かって歩き始める。
「我ハココデ休ムコトニスル。時間ニナレバ姫ノ部屋ニ行ク」
三人の背中に声がかけられる。振り返ってみると、エルがゆっくりと庭園の奥の茂みに向かって歩いていくところだった。
「そう、じゃあまた後でね」
エルは振り返ることはせず、尻尾をぱたぱたと振って去って行った。彼は部屋の中より外にいることが好きなので、ほとんどの時間をこの庭園で過ごしている。曰く、部屋の中は土の匂いがしないので落ち着かないとのことらしい。地の民の一族なので、当然といえば当然のことだといえよう。
広くて長い廊下を歩き階段を上ると、フェリシアの部屋がある。ここは庭園よりもさらに高い7階で、他に第一王子と第二王子の部屋があるのだが、二人とも他国との外交を任されているので城にいないことが多い。
もちろんそれぞれの部屋は遠く離れており、警護も厳しいため簡単に行き来はできないようになっている。王子たちが年中外国を飛び回っているので、警備の兵もさぞ仕事のやりがいがないことであろう。
ライカも王子たちに年に一度会うか会わないかだった。
マールが部屋の扉を開け、フェリシアが中に入る。部屋は大変広くつくられており、ところどころに品の良い調度品が置かれていた。フェリシアの部屋は風呂などを除いて三つに分かれており、それぞれ応接室、寝室、衣装室となっている。今ライカたちがいるのは応接室だ。
応接室といってもこの部屋にレヴァイア以外の人間が訪ねてくることはないので、豪華な応接用の長椅子の上にはフェリシアが読んだ本などが置かれていたりする。もちろんライカがすぐに片づけるが。
「さてと、お風呂にでも入ろうかしら」
長椅子に座りながらフェリシアが言う。
「畏まりました。姫様、ご夕食はどうされますか」
「そうね、今日はここで食べることにするわ」
食事は部屋か王族専用の食堂で食べることが決められている。
「では、そのように。入浴の準備を致しますので、しばらくお待ちくださいませ。マール、夕食の準備をお願いします」
「わかりました。では行ってまいります!」
マールは元気に返事をして部屋から出て行った。
「ご馳走様でした。今日も美味しかったわ」
「今お茶をお入れいたします」
「ありがとう。でも、そろそろ時間になるのではない?」
「はい。夜一の鐘が鳴ってエルがこの部屋に来ましたら、城下に赴こうと思います」
「別に一人でも大丈夫だけど。もうすぐマールも戻ってくるし」
マールは食器を片づけに行っている。
「エルが来るまではおりますので」
「はいはい、わかりました」
全く心配性なんだから。そうフェリシアは不満げに、でも嬉しそうに呟いた。




