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緋の扉  作者: 緋龍
彼女、あるいは彼等の何とか通常であろうとする日常
56/61

52話

51話に少し加筆しました。作者がうっかり書き忘れておりまして、申し訳ございません。読み直さなくても問題はないと思います。ん?と思う箇所がありましたらそこを加筆したんだなと思っていただければいいかと……。

今回は血なまぐさい描写があります。

「理由だあ?そんなもんねえよ。誘われたとき面白そうだと思ったから、この集団の一員になっただけさ。第一、俺は国王に何の恨みももっちゃいねえ。一員になるには動機が必要だったから恨んでる振りはしたがな」


 男の口から出てきた言葉はライカに衝撃をもたらした。ただ面白そうというだけで国王を暗殺しようとするとは!ライカの中に沸々と怒りの感情が湧いてくる。


「そんな考えを持ってるのは俺だけじゃねえ。ここにいる大半の連中がそうさ! 暴れたいだけなんだよ。俺たちには戦いが必要で、奴は国王を殺したかった。利害の一致ってやつだな」


 かなり酔っているのだろう、男は機嫌良くぺらぺらとしゃべり続ける。


「だがよ、あいつも哀れな奴だよな。国王を殺すってことだけしか頭にねえ。世の中にはもっと面白れえことがたくさんあるのによ。しかも集めた連中は何のこころざしも持たねえ俺みたいな人間ばかりときた! まあ、最初のころに仲間になった奴は違うみたいだがよ。それにしたって数人だけさ。10年かかって集めた結果がこれとはな! これを哀れと言わずに何と言えばいい?」


 (…………許せない)


 ライカは溢れ出そうになる殺気をなんとか押さえこむ。そして隠しておいた暗器を袖から取り出し、手首を縛っている縄を切断しはじめた。男は話すことに夢中になっており全く気付いていない。 


「死んだ女の復讐だか何だか知らねえけど、世の中に女なんて腐るほどいるだろうに。美人が声かけてきても見向きもしねえときた。誘いに乗らねえなんて男としておかしいだろ!?」


 お前らもそう思うよなあ、と男が後ろにいた二人に同意を求める。三人はまた大声で笑っていたが、ライカの耳には入ってこなかった。


「それによお、本気で国王を殺れるわけねえじゃん? 王の周りには化け物みたいに強え騎士がいるんだぜ。無理に決まってんのがわからねえのかねえ? 俺たちは適当に暴れたらとんずらするけど、あいつ絶対に死ぬな。死んだ女のために死ぬなんて哀れというより馬鹿だろ!」


 ぶつり。手首を縛っていた縄が音をたてて切れる。それと同時にライカの中の何かも切れた。


「彼を……セアルグを、哀れと言うのか」


 ライカはゆっくりと上体を起こすと静かに立ち上った。いつもの丁寧な口調ではなくなっている。この話し方になるのは、彼女が「闇」にいたとき以来だった。男はライカの変化に一瞬戸惑ったが、それでもまだ余裕の表情でいた。同じように立ち上るとライカの顎に手をかける。


「お前、あいつを知ってるのか?……もしかして奴の女か?だったら残念だったなあ、奴ならいないぜ?3日前から姿が見えねえんだよ。どっかでくたばっちまったのかもなあ。あんな奴より俺の女になれよ。可愛がってやるからよ! しっかしセアルグにこんな美人の女がいるな――――――」


 ライカに迫っていた男は、突然首から大量の血を撒き散らしながら息絶えた。自分に何が起こったのかもわからなかっただろう。

 

「お前のような人間がセアルグの名を口にするな、穢らわしい」


 ライカは目を見開いて息絶えた男に向かって吐き捨てた。彼女が暗器で彼の喉を切り裂いたのだ。


 部屋の入口でその光景を見ていた男二人は、自分の見たものが信じられなかった。首を切られた男はかなりの猛者で、簡単に殺されるような奴ではない。たとえ酔っていたとしてもだ。それが油断していたとはいえ、何の力もなさそうな女に一瞬で殺されるとは!


 二人はしばし茫然としていたが、我に返ると剣を抜いて構えてきた。


「き、貴様ぁ!! よくもやってくれたな!!」


「ここから生かしては帰さねえぞ!!」


 二人が大声で叫ぶ。すると少し離れた場所、この建物の中央辺りからこちらに向かって来る人の気配をライカは感じた。かなりの人数のようだが、今の彼女にはどうでもよかった。


「居場所と人数さえわかれば後は騎士に任せるつもりだったが……お前たちに生きる価値などない。今すぐ死ね」


 そう言って男たちに向けたライカの顔には、何の感情も浮かんでなかった。普段の彼女は無表情ながらも少しは感情が面に出ている。だが、今の彼女は違う。完全に「無」の表情だ。


「うるせえ!! 殺されんのはお前だ!!」


「ここには20人以上いるんだぞ! 勝ち目はねえぜ!!」


 『死ねええええぇぇぇぇぇっっ!!!』


 二人が叫びながら同時にライカに斬りかかってくる。


「遅い」


 そう呟くとライカはあっさりと横に攻撃をかわし、すれ違う瞬間男の喉に暗器を突き刺した。


「ぐ、がはっ!」


 刺された男はうめき声もろくに上げられずに床に倒れる。そして何度か痙攣した後、動かなくなった。


「お、おのれええええええ!!」


 残った一人が目を血走らせて突進してくる。男は怒りと恐怖が混じり合った表情をしていた。ライカは倒れた男が持っていた剣を拾いあげると、向かって来た男に対して無造作に振るった。


「ぎゃあああっっっっ!!!」


 狙った動きには全く見えなかったが、ライカの剣は確実に男を肩から斜め下に斬っていた。男は叫びながら床をのたうちまわって死んだ。


「セアルグを侮辱するものは許さない」


 何の躊躇いもなく三人を殺したライカの瞳は暗く濁り、何の感情もそこには浮かんでいなかった。 

 


ライカさあああぁぁぁぁ!(泣)

すいません、書いていてちょっとへこんでしまいました。

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