表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
緋の扉  作者: 緋龍
彼女、あるいは彼等の極めて通常な日常
5/61

4話

ようやく噂の内容がでてきました。

「じゃあ、マールが帰ってくるまで噂の整理でもしましょうか」


「畏まりました。ではお茶の用意を致します」


「そうねお願いするわ」


「エルは何か召し上がりますか」


「フム…デハ林檎ヲ」


「わかりました。少々お待ち下さい」


 ライカはお茶の準備をするために庭園から城内に戻る。長い廊下を歩きいくつもの扉を通り過ぎると、ようやく目的の部屋にたどり着いた。扉を開けるとそこは小さいながらも設備の整った厨房で、ライカは手早くお茶の準備をはじめる。


 しばらくして用意ができ、部屋を出て行こうとしたライカだったが、何か思いつたように棚の前に戻り小皿を手に取った。


「もしかしたら必要になるかもしれませんしね」


 そう呟いてライカはお茶の用意と小皿を持って来た道を戻っていくのだった。




「お待たせ致しました。本日はセリエ産のお茶になります」


 言いながら完璧な所作でお茶を入れ、フェリシアの前に置く。


 セリエはローディスの南にある農業と牧畜が盛んな村だ。ここで取れた作物はどれも品質が良く、王都でも人気が高い。


「ありがとう、相変わらずいい香り。セリエのお茶は好きだわ。まあ、ライカが入れると何でも美味しいんだけどね」


「恐れ入ります。エルは林檎をどうぞ」


「ウム」


 好物の林檎を目の前に置かれて、エルは嬉しそうな表情になる。もっともその変化は微々たるもので、わかるのはライカだけなのだが。


「じゃあ始めましょうか。まず噂の内容についてだけど、騎士が城下の酒場で男性に殴りかかったっていうのと、二人がかりで少女を強か――」


「姫様、その言い方はお止めくださいませ」


「だってマールがそう言ってたんだもの」


「お止めくださいませ」


 マールとは後で話し合う必要がありますね、とライカは心に誓った。


「もう、わかったわよー。二人がかりで少女に乱暴した、これでいいでしょ」


「はい、姫様」


 全くもう、ライカは堅いんだから…ぶつぶつとフェリシアが呟く。


「何か仰いましたか」


「いいえ何でもないわ。それで、この二つの噂どう思う?」


「騎士たちは酒場に行ったことは憶えているのですが、その後の記憶が曖昧になっていて思い出せないと言っているようです。さらに、目撃者もいるらしいので、状況はかなり不利だと思われます」


「そうなのよねぇ。でも騎士がそんなことするとは思えないし、第一被害にあった男性と少女の行方も分からないんでしょ。そのうえ三人が三人とも記憶がないって、そんなことあるのかしら」


「今のところ考えられるのは三通りあるかと。まず何者かによって、真実ではない噂がつくられた可能性。この場合は意図的な犯行でございます。二つ目は騎士たちと顔立ちが似た者が、それらの行為を行った可能性。この場合は意図的と偶然の両方が考えられます。そして最後は噂が真実である可能性。可能性として低いとは思いますが、ないとは言い切れないのが実情でございます」


 あまり考えたくはありませんが。ライカは心の中で呟く。

 もし噂が真実だった場合、騎士団の信用は地に落ちるだろう。この国の戦力の要である騎士団の信用がなくなれば、最悪の場合他国と戦争になりかねない。それほどまでに、騎士団の存在は重要なのだ。


「最後の可能性は考えたくないわね」


 ふぅ、と溜息をついてフェリシアがお茶を飲む。


「今日の夜、酒場に行ってみますので、そこで何がしかの情報が得られるでしょう」


「お願いね」


 


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ