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緋の扉  作者: 緋龍
彼女、あるいは彼等の何とか通常であろうとする日常
47/61

43話

襲撃者さんの正体をどうするかかなり悩みました。ちょっとお約束っぽい気もしますが、深く考えないでいただけると助かります。


所用により明日と明後日は更新ができません。すごく気になるところで終わってますが、月曜日までお待ちください。

あと数日ぶりに双子探偵をアップしました。

 ライカたちも襲撃者の後を追って森に入る。森の中に入った瞬間、今まで降り注いでいた日光が遮られ、かなり涼しくなった。多少薄暗いが馬を走らせるのには十分な明るさで、襲撃者の姿もちゃんと見えている。ダレスは森に入っても速度を落とさなかった。



 もし追いかけている人物が自分の思っているとおりだったら私はどうすれば……ダレスに掴まりながらその事をずっと考えていると、突然ダレスが手綱を引いて馬を止める。


 「っ!」


 馬は声高くいなないてから止まったが、止まるときに両前足を地面から上げたのでライカは振り落とされそうになった。咄嗟にダレスの腰を強く掴んで堪える。


 「す、すまん、大丈夫か」


 「はい、失礼いたしました」


 ダレスの声が多少動揺しているように聞こえたが、ライカは気にすることなく辺りを見渡す。


 考え事をしていて気付かなかったが、目の前には高くそびえ立つ岩山が迫っていた。ダレスが馬を止めるのが遅かったら衝突していたかもしれない。振り返ると森の出口付近には背の高い雑草がたくさんあり、それが視界を遮っていたのだということが推測できた。


 「どこへ行った」


 ダレスが辺りを警戒しながら馬からおりる。


 左右に広がる岩山は、馬どころか人間でも登るのは難しそうだ。近くにいるのは間違いないはずなのだが…


 ライカも馬から降りようと足を動かすと、ダレスが手を差し出す。一人でもおりられるのだが、行為を無下にすることはできない。その手を握るとダレスがそっと地面におろしてくれた。


 「ありがとうございます」


 「いや」


 ダレスの顔がほのかに赤いような気がしたが、馬を全力疾走させたせいだろうと納得する。


 ガサガサッ


 『!!』


 少し遠い森の中で何かが動く音がした。二人はいつでも戦えるように警戒しながら素早くそちらを見る。


 森から姿を現したのは一頭の馬だった。鞍が取り付けられているので野生でないことがわかる。


 「奴が乗っていた馬か」


 「おそらく…」


 では襲撃者は一体どこに?そう考えた瞬間、いきなり頭上から殺気を感じた。


 シュシュシュシュシュッ


 「避けてください!」


 ライカとダレスは左右に大きく跳んでかわす。ライカは地面で一回転しながら腰の後ろから暗器を取り出し、素早く体勢を整える。ダレスも同じように剣を抜いて構えている。


 二人が一瞬前までいた場所の地面には、小さな黒い石のようなものがいくつもめり込んでいた。当たれば軽く骨が砕けるであろう威力だ。


 (黒曜石……やはり…)


 バサッとマントをはためかせて、二人のちょうど中間の場所に襲撃者が着地する。


 「生きて…いたのですね……セアルグ………兄さん」


 ライカは絞り出すような声で喋る。疑問形ではなく確信を持った聞きかただった。


 「…………やっぱり覚えてたか」


 しばらくの沈黙の後、そう言って襲撃者は静かにフードを取った。


 「―――っ!!」 


 フードを取って中から現れたのは30代後半に見えるがっしりとした顔つきの男だった。褐色の肌に銀髪と紅い眼。ただし片方の眼は眼帯で覆われていた。


 「久しぶりだな、セーレ。いや、今はライカだったか」


 セーレと呼ばれたライカは悲しそうな表情になる。


 「ライカ、こいつは何者だ。お前の兄なのか?」


 ライカにセアルグと呼ばれた男を睨みつけながら、ダレスが問いかける。


 「……いえ、違います。セアルグと血は繋がっていません。彼は私が幼いころ面倒を見てくれた人で、兄のように慕っていました。唯一信頼していた人と言っても過言ではありません。…ですが、彼は10年前に死んだはずなのです」 


 「闇」が騎士によって壊滅されたときに、私を庇って。ライカは心の中で言葉を付け加えた。苦い思い出が蘇ってくる。毎日が命懸けだった、暗いくらい過去。何の疑問も抱かずにただ命令に従って人を殺めていた日々。セアルグに逃がしてもらった後、違う騎士と戦って深手を負い、自分はここで死ぬのだと感じた瞬間。もう思い出すことはないと思っていたのに。


 「確かに俺は一度死んだ。お前たち騎士に斬られてな!」


 セアルグはダレスに向かって叫んだ。ダレスが騎士なのは服を見ればすぐわかる。


 「??どういうことだ?」


 ダレスはライカが「闇」にいたことを知らない。


 「はんっ。なんだ、お前こいつの過去を知らねえのか。親しそうにしてたからてっきり教えてると思ったんだが。信頼されてねえんだな」


 セアルグが馬鹿にしたように嘲笑う。ダレスの殺気が一気に膨れ上がる。今にも斬りかかりそうな雰囲気で、いつもの冷静なダレスではなかった。


 「じゃあ俺がかわりに教えてやるよ。セーレと俺はな、「闇」の生き残りだ」


 「!!!!………ライカ、本当なのか?」


 ライカの様々な能力を考えればありえないことではない。そう思うのだがダレスは信じられずに当人ライカに問いかける。

    

 「……はい。隠していて申し訳ございませんでした」


 ライカは悲しみと辛さが入り混じった表情でダレスに謝る。


 「………そうか。知っているのは?」


 「姫様と陛下だけでございます」


 レヴァイアがライカの過去を隠蔽したのだろうと、ダレスは察した。


 「何故私を襲うのですか」


 10年前油断していた自分を庇って斬られたセアルグ。生きていたことには驚いたが襲ってくる理由が判らなかった。


 「知りたいか?知りたきゃ俺を倒すんだな!!」 


 「セアルグ!!」

    

セアルグはダレスさんに言ってはいけないことを言ってしまったのでした。

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