表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
緋の扉  作者: 緋龍
彼女、あるいは彼等の何とか通常であろうとする日常
42/61

38話

なかなかライカさんが活躍しませんね・・・。開幕式の剣舞が終わるまでは仕方ないんですけど。

 階段を上り最上階にある王族専用の部屋の前に辿り着く。


 扉の両脇には王の護衛である近衛兵が身動き一つせずに立っていたが、フェリシアたちの到着で敬礼の姿勢を取る。


 「フェリシア様、陛下がお待ちでございます。我々は隣室で待機しておりますので」


 「ありがとう。また後でお願いします」


 三人の騎士団長は敬礼をして、フェリシアの前から下がる。


 ライカが部屋の扉を叩くと中から応対の声があり、フェリシア到着の旨を告げる。


 数呼吸の間の後、目の前の扉が静かに開かれた。





 「おお、フェリシア。遅かったな」


 広い部屋の中央にある豪華な応接用の長椅子にレヴァイアがくつろいだ様子で腰かけていた。くつろいだというのは態度のことだけではなく、せっかく侍女が完璧に整えていたであろう式典用の豪奢な服もすっかり着崩されてしまっていた。


 この部屋のバルコニーからは会場が一望でき、毎年レヴァイアとフェリシアはここから剣武大会を観戦している。


 部屋の中は調度品がほとんど置かれてなく、少し大きめの絵画が壁に2枚飾られているだけだ。彼の執務室からも窺えるが、レヴァイアは過度な装飾が好きではないらしい。


 「お父様が早すぎるんですわ」


 フェリシアがレヴァイアの向かいに腰を下ろす。すぐに王付きの侍女が彼女の前にお茶の用意をする。レヴァイアの前にはどう見てもお茶には見えない琥珀色の液体が入ったグラスが置かれていた。


 ライカとマールは少し離れたところで控える。


 「この剣武大会は私の数少ない楽しみの一つだからな。・・・今年の剣舞の衣装はいつもとは雰囲気が違うな。よく似合っているぞ」


 「お褒めにあずかり光栄ですわ、陛下。でもこれ、なかなか動きにくいんですのよ?」


 腕を左右に振り、長い袖がぱたぱたと揺れるところをレヴァイアに見せる。


 「仕方あるまい。剣舞は見た目も重要だからな。その衣装で舞えばかなりの迫力があるであろう」


 「そんなことは承知しています。この衣装を用意したのはラ・・・私の信頼している人ですもの」


 ライカのことは極秘事項なので、フェリシアは表現をぼかす。この部屋には王付きの侍女がいるのだ。彼女は何も知らされていないので、ライカのことをただの侍女だと思っているだろう。


 「そうであったな。今年は剣武大会よりもフェリシアの剣舞の方が気になるぞ。後ろの侍女が演奏するのか?確かマールだったか」


 「ええ、彼女一人だけです。マールの横笛は素晴らしいんですのよ」


 話題に出てきたマールは、慌ててレヴァイアに頭を下げる。


 「ほう、奏者は一人か!ますます面白い!」


 早く剣武大会が始まれと言わんばかりに、レヴァイアが長椅子から立ち上ってバルコニーがある方へ歩いていく。


 バルコニーに出るのは剣武大会の開幕式からなので、テスト中の闘技場の様子は窓の内側からしか見れない。近くで見たいレヴァイアはそのことに対して少なからず不満を抱いていたが、参加者の集中の妨げになるので絶対におやめ下さいと側近に言われてしぶしぶ従っていた。


 「おおっ、あの槍使いなかなか良いな!あちらの者は棒術か、珍しい!」


 部屋の中から参加者たちの様子を見ていたレヴァイアは、剣武大会が始まる前から興奮気味だ。


 「まったく、いつまでたっても子供みたいなんですから」  

 

 溜息をついてフェリシアは目の前に置いてあるカップに口をつける。


 



 「陛下そろそろお時間でございます」


 「ああ、もうそんな時間か」


 ライカたちがこの部屋に来てから四半刻が経過していた。


 「陛下。陛下がお乱しになられたお召し物を再度整えますので、次の間へお願い致します」


 「わかったわかった。しかしジナよ、もう少し優しく言ってくれてもよいのではないか?」


 「それは無理な相談というものでございます」


 王付きの侍女が遠慮のない口調で、レヴァイアと言葉を交わしている。レヴァイアは諫めるような言葉を口にしてはいるが顔は笑っており、このようなやりとりを普段からしていることが窺えた。


 「レジーナ、お父様に優しくする必要なんてないわよ」


 フェリシアが侍女を後押しする。レジーナが彼女の本名であり、ジナという愛称で呼ぶのはレヴァイアだけだ。彼女は王付きの侍女になって10年以上になる。フェリシアも子供に何度か遊んでもらったことがあり、親しくしていた。


 「フェリシア様の心温まるお言葉を胸に、このレジーナこれからも職務に励んでいきたいと思います」


 フェリシアに向かってレジーナが笑顔で優雅に礼をする。


 「お父様の傍にいるのは苦労が絶えないと思うけど、その調子で頑張ってね」


 「もったいないお言葉でございます」


 「いや、俺は全然心が温まらないんだが・・・」


 「さ、私たちもそろそろ行きましょう。マール、心の準備はよくて?」


 「は、はい~!今にも心臓が止まりそうですけど、なんとか頑張ります~!」


 「ではお父様、失礼しますわ」


 軽く礼をしてフェリシアは部屋を出るための扉に向かって歩いていく。


 ライカはほんの少しだけレヴァイアのことが気になったが、フェリシアのために扉を開け自分も退室する。


 扉を閉めるときに中から、レジーナがレヴァイアを急かす声が聞こえてきた。 


 


 

レジーナさんは30代後半の元貴族の既婚女性です。10代半ばに家を飛び出し城で働きだした彼女は、色々な出来事を経て陛下の侍女になったのでした。

今後登場するかどうか分からないので一応ここで紹介しておきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ