37話
ヴォードさんの設定がちょっと・・・(汗
明日は双子探偵だけのアップになるかもしれないです。
馬車が王城の正門に近づくにつれて、次第に歓声がはっきりと聞こえてくるようになった。
そして先頭を行く騎士が正門の外に出ると、人々の興奮は最高潮に達する。
『フェリシア様~~~!!』
『「戦の護様~~~!!』
『きゃ~~!ヴォード様~~~!!素敵~~!』
『グレアスさま~~!!蒼氷の君~~!!』
『黒雨の君~~!俺はあんたのことが好きだ~~~!!!』
王城から王都の外へと続く大通りに集まった大勢の民が声をからさんばかりに歓声の声を上げている。ごく稀におかしな声も交じっていたが……。
三人の騎士団長の対応の仕方はそれぞれ違っていて、ヴォードは笑顔で手を振り、グレアスは軽く微笑むだけ、ダレスは無反応だ。
フェリシアは民の声に応えるべく笑顔でずっと手を振り続けている。たとえ心の中で、もっと早く進んでほしいとか腕がだるくなってきたから手をふるのやめたい、とか思っていたとしてもだ。心の中で何を思っていても顔に出さずにいられる彼女は、間違いなく父親の血を受け継いでいるといえよう。
(姫様は今頃心の中で、もっと早く進みなさいよ! などと思っていらっしゃるのでしょう)
ライカはフェリシアの心情を正確に理解していた。
フェリシアの我慢が限界に達しそうになったころ、ようやく一行は闘技場に到着した。
闘技場の中も人で溢れているようで、時々大きな歓声が聞こえてきた。
この時間は一般部門に申込んだ人間が参加資格を得るために、己の実力を観客に披露しているはずだ。毎年参加希望者が大勢来るので剣武大会が開催される前に、参加資格があるかどうかを見極めるテストが行われることになっている。実力のない者が出場して怪我するのを防ぐのが目的だ。まあ、希望者が多すぎて剣闘祭の5日間で大会が終わらないという理由もあったりするのだが。
テストは二つあり、かなり太った大人の男性ほどの重さがある土が入った袋を一定時間持ち上げるというのと、もう一つは自分の得物を使った技の披露だ。判定はくじ引きで当たった騎士六人が行う。
参加者の中には土袋を片手で持ち上げる者や、上に放り投げたりする者、珍しい技を披露する者などがいて、毎年観客を沸かせている。
「フェリシア様、お疲れ様でございました」
グレアスが馬車の扉を開けフェリシアに手を差し出す。
「ありがとうございます。皆様もご苦労さまでした」
馬車から下りたフェリシアが護衛の騎士を見渡す。
「もったいないお言葉でございます」
ライカとマールも馬車を下りる。扉を開けて手を差し出してくれたのが、ダレスではなく赤い騎士服の第一騎士団の騎士だったことにライカは少しほっとした。
騎士にお礼を言って、二人はフェリシアの傍に行く。
「お疲れ様でございました、姫様」
「ああ、ライカ、マール。腕の感覚がしばらく戻りそうにないわ」
ライカとマールにだけ聞こえる声でフェリシアが本音をもらす。
「それではフェリシア様、陛下の元へとご案内致します」
グレアスの先導で闘技場の中へと入る。入口を入ってすぐは太陽の光が届かない場所の様でかなり薄暗かった。グレアス、フェリシア、ライカとマール、ヴォードとダレスという順番で奥へと進んでいく。
「姫様、お足もとにお気をつけください」
「ええ。マール、貴方も気をつけなさいよ」
「はい、ひめさ、まぎゃっ!」
慣れないドレスで恐る恐る歩いていたマールは、自分のドレスの裾を踏んでつまづいた。
「おっと、大丈夫か?」
地面に激突しそうになったマールを咄嗟に受け止めたのは、ヴォードだった。
「ふえっ!?……うぎゃ!! は、はい、大丈夫です! すみませんでした!!」
一瞬何が起きたのかわからなかったが、ヴォードの腕の中にいるという状況を理解したマールは即座に彼から離れ、わたわたと何度も頭を下げる。
「気にしなくていいぜ。もうちょっとで可愛い顔が台無しになるとこだったな」
そう言ってにやりと笑うとヴォードは後ろに戻って歩き出した。
「だから気をつけなさいって言ったのに」
ヴォードが離れた後フェリシアがマールのすぐ横に並んで、彼女にしか聞こえない声で話しかける。
「はい……申し訳ございません」
マールは歩きながらしゅんと項垂れる。
「彼は貴方に気があるって前に言ったでしょう」
「はい……申し訳ございません」
「何人もの女性に声をかけてるらしいから、あなたも危ないわよって警告してあげたのに」
「はい……申し訳……姫様? 何のお話ですか??」
「何って、ヴォード様に気をつけなさいって言ってるのよ」
「え?? ドレスの裾を踏まないように気をつけろってことじゃなかったんですか!?」
「違うわよ、もう」
ふう、と溜息を一つ吐くとフェリシアはマールの隣から離れた。
(……?気があるというのは好きという意味なのだと聞いたことがありますが……ヴォード様がマールに? 本当なのでしょうか?)
耳がいいライカは二人の会話が全て聞こえていたが、内容が理解できずに部屋に着くまでずっと心の中で考え続けるのだった。




