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緋の扉  作者: 緋龍
彼女、あるいは彼等の何とか通常であろうとする日常
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36話

終わり方が中途半端になってしまいました・・・。


明日は多分外伝をアップするので、こちらはアップなしになる予定です。

 大階段を下りた先、一階の大広間と呼ばれる場所には騎士団長三人が整列して立っていた。大階段は城の中央にある一番大きな階段で、三階まで続く長い階段とその先へ続く螺旋状の階段は、見る者を圧倒させる迫力があった。


 フェリシアが階段を下りてくるのが見えると、三人は敬礼をして彼女たちを迎えた。


「ごきげんよう、騎士団長様方」


 一番下まで下りてくるとフェリシアは、右の手のひらを左の胸に当てて左手でドレスをつまんで軽くお辞儀をする。これはフェリシアが公の場でしかしない仕草で、相手を信頼していますという意味も含まれていた。


「ご機嫌麗しゅうございます、フェリシア様。いつもお美しいですが、今日は一段と輝いていらっしゃる。神話の女神も貴方様の美しさに跪くことでしょう」


 三人を代表して濃い赤色の騎士服を着た赤毛に黒い目をした熱血好青年といった感じの男が答える。第一騎士団団長のクレイ・ヴォードだ。騎士を慕う会の間では、その燃えるような赤い髪と情熱的な性格から「紅炎こうえんの君」と呼ばれている。


「ありがとうございます、ヴォード団長。貴方からそのような言葉が聞けるとは思いませんでしたわ」


「そうですか? 寝る間を惜しんで考えた甲斐がありました。いつもグレアスに株を持っていかれるんで負けてられないと思いまして」


 そう言ってにやりと笑みを浮かべる彼は、どうやら相当な負けず嫌いの様だ。


「ヴォード! 無礼ですよ!」


「問題ありません、グレアス団長。ヴォード団長らしくてよいと思いますわ」


 グレアスがヴォードを諫めるが、それをフェリシアがやんわりと止める。この二人は仲が良いのか悪いのか、会えばいつも口げんかが始めるのだ。そしてそれを止めるのは、意外にもダレスだったりする。彼のいいかげんにしろの一言で二人はぴたりと口を閉ざすのだった。


 そのダレスはといえば、一言も話すことなくじっと立っており、目線はフェリシアの後ろに控えているライカに向いていた。気のせいかもしれないが、微かに残念そうな表情をしている。


 (……? ダレス様はどうされたのでしょうか?)


 ライカはダレスの表情に気付いたが、理由が思いつかなかった。


 実はダレスは、フェリシアとマールがそれぞれ衣装を身に纏っているのに対し、ライカがいつも通りの侍女姿なのでしょんぼりしていたのだ。


 それはさておき、時間が迫っているのでフェリシアが皆を促す。


「そろそろ参りましょうか。お父様……陛下は先に行っていらっしゃるのかしら」


「はい。四半刻ほどまえに闘技場へと向かわれました」


「本当にお祭りが好きなんですから……では、私たちも出発致しましょう。皆様よろしくお願い致します」


『はっ!』


 三人の団長はもう一度敬礼をすると、踵を返し大扉へと歩き出す。フェリシアたちがその後に続く。





 外に出ると30人ほどの騎士が馬を従えてそこにいた。第一、第二、第三の騎士がそれぞれ10人ずついるようだ。服の色が違うので一目でわかる。


 今日のために特別にあつらえた特大の馬車もあった。「いくさもり」の紋章が描かれたこの豪華な馬車は屋根がなく、乗っているものの姿が見えるようになっている。


 フェリシアたちが出ていくと騎士が一斉に敬礼をする。


 遠くの方からは歓声のような声が聞こえてきていた。城下での民の声がここまで届いてきているのだろう。


「皆様、今日はよろしくお願いします」


『はっ!』


 騎士を見回してフェリシアが言うと、30人分の声が返ってくる。騎士の顔はどれも少し赤くなっているようだ。


「フェリシア様、どうぞお乗り下さい」


 グレアスが馬車の傍で恭しく手を差し出す。


 フェリシアは少し緊張した顔になったが、ありがとうと言ってその手を取り馬車に乗り込んだ。


「ライカ、マール、後でね」


「はい、姫様」


 ライカとマールは違う馬車ですぐ後ろを行くことになっている。彼女たちが乗る馬車にも紋章は入っているが屋根は付いていて中は見えない。いつもは同じ馬車に乗るが、城下をパレードするときなどは別々に乗るのが決まりだった。


 二人が自分たちの乗る馬車の前に行くと、なんとそこにはダレスがいて扉を開けて待っていた。


「……」


 驚く二人に何か言いかけたが、結局何も言わずに手を差し出した。


 (まさか……手を取れということなのでしょうか……)


 ダレスの行動にどうしようと固まっていた二人だが、このままでは出発できないと、意を決してライカがダレスの手をそっと取り馬車に乗る。

 

「ありがとうございます、ダレス様」


 ダレスは何も言わずに、一瞬だけライカの手を強く握りすぐに離した。


 (……?)


 ライカは彼の考えが読めずに、座席に座ると握られた自分の手を見つめた。マールがすぐに乗ってきてライカの隣に座る。


 二人が座ったのを確認するとダレスが馬車の扉を閉めた。


「びっくりしましたね~、ライカ様。ダレス様にエスコートしていただけるとは思いませんでした~」


 騎士を慕う会の人たちには内緒にしなくちゃ! などとマールが一人で話しているが、ライカはあまり聞いていなかった。


「出発!」


 ヴォードの声が聞こえた後、しばらくすると馬車が動き出す。


 ここから王都の外にある闘技場まで一刻ほどかけて移動するのだ。

ダレスさんは……やってしまいました。

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