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緋の扉  作者: 緋龍
彼女、あるいは彼等の何とか通常であろうとする日常
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32話

フェリシアさんの衣装が上手く説明できてません(汗)イメージは昔話に出てくる天女とギリシャ神話に出てくる女神が着ている衣装を合わせた感じなのですが……。


活動報告におまけの話を載せました。会話文だけなのですが、よろしかったらどうぞ。

 フェリシアが剣舞の練習を始めて3日目。少しづつではあるが彼女の動きはよくなっていた。昨日から普段着ているドレスではなく、剣舞用の白い衣裳を着ている。この衣裳は、袖がなくドレスより身体のラインが出ないようになっている。そして長い青色の布を身体の後ろを通して両腕に掛けていた。


 そんな恰好をしたフェリシアは神話に出てくる女神の様に美しかったが、剣舞をするには動きにくそうに見えた。


「そこで前に踏み込んで、前かがみになりながら左手は上に伸ばしてください。右手は斜め後ろです」


 ライカが一つ一つの動きを丁寧に教える。


「え、えっと……こうかしら」


「もう少し指先に力を入れて下さい。……はい、お美しいです、姫様」


「そ、そう? それにしてもこの格好、動き難いわ……。ねえライカ、少し休憩しない?」


 今日はお昼を食べてから始めて、すでに一刻ほど練習をしていた。


「かしこまりました。では、お茶の用意をしてまいります。マール、貴方も休憩してください」


 ライカは部屋の隅で椅子に座って横笛を練習しているマールに声をかける。


「え~っと、ここは強めに吹いてここは静かに……っと」


 練習に必死なマールはライカの声が聞こえていないようだ。少し吹いてはぶつぶつ呟きながら譜面になにやら書き込んだりしている。


「マール、聞いていますか!」


「ひゃいっ! す、すいませんライカ様、聞いてませんでした!」


 ライカが少し強めに言うと、マールは変な声を出して座っていた椅子から飛び上がった。


「……私はお茶を入れて来ますので、貴方はこちらの準備をお願いします」


 物事に集中すると周りが見えなくなるのはマールの数少ない短所の一つだとライカは思っている。何度注意してもあまり改善されないので、彼女の心境はもはや諦めの境地に近かったが。


「はい、休憩するんですね! すぐに用意します!」


 マールは横笛を専用の箱に戻すと、すぐに動き始める。


 (仕事は問題ないのですが……)


 マールの動きを目で追いながらライカは部屋を出るとお茶の用意をするために城の厨房へと向かった。





 フェリシアの提案により三人でお茶を飲んで四半刻ほど休憩したあと、再び練習を始める。


「姫様、まだ途中ですが一度最初から舞ってみましょう」


「そ、そうね。頑張ってみるわ」


 今まで教えてもらった内容を必死に思いだしながら、フェリシアは最初の構えの姿勢をとる。


「いくわよ」


 深呼吸をして気持ちを落ち着けると、フェリシアは舞い始めた。それはぎこちないものではあったが、動きや仕草はライカの教えたとおりに舞えており、充分剣舞として成立していた。たった3日でここまで舞えるようになるのはなかなかできることではないだろう。まあ、いくら苦手にしているとはいえ、毎年舞っているのだからこれくらい出来て当然と言われればそれまでなのだが。


「ど、どうだったかしら」


 舞い終えたフェリシアは大きく息を吐いてから、ライカに尋ねる。


「大変ようございました。途中何度か息を止められておりましたが、大丈夫でございますか」


「緊張すると忘れてしまうのよね。だからすぐに息が上がってしまうのかしら」


「考えなくても舞えるようになれば、自然と呼吸を止めずに出来るようになります」


「つまりまだまだってこと。ふう……じゃあもう一度やってみるわね」


「はい、姫様」


 そうして彼女たちの練習は、夕二の鐘がなるまで続けられたのだった。





「今日もぐっすり眠れそうだわ。ライカ、お風呂上がったら身体揉んで頂戴な」


「畏まりました。炎症止めの塗薬もお持ちいたします」


「お願いね」


 練習室から自室へと戻る廊下を歩きながら、フェリシアは手首をくるくるを回している。剣の持ち過ぎで痛くなってしまったようだ。


「ライカ様、私夕食の用意をして参りますね~」


「お願いします」


 そう言ってマールは早足で進んで行き、遠くにある突き当りを右へと曲がったのだが、しばらくすると来た道を走って戻ってきた。かなり慌てているように見える。


「どうしたの、マール。忘れ物?」


 フェリシアの問いにぶんぶんと勢いよく首を横に振って否定すると、マールが興奮したようすで話しだす。


「違います! 大変です、姫様! グレアス様です! 第二騎士団長のグレアス様がこちらに向かって歩いてこられます!!」


「え! ほんとなの!!?? ど、どうしよう、こんな恰好で会えないわ!!」


 普段あまり慌てることがないフェリシアだが、グレアスのことに関しては別だった。顔を赤くして動揺し始める。今、彼女は剣舞用の衣装を着ており化粧もあまりしていない。髪も軽く纏めてるだけだ。好きな男性には完璧な状態で会いたいと思うのは全ての女性に言えることだろう。「いくさもり」と言えども例外ではなかった。


「姫様、こちらへ」


 おろおろするフェリシアを、ライカがすぐそこにあった部屋へ連れて入る。入った部屋は会議室のようだが、今は使われていないらしく無人だった。


「姫様、少し屈んで頂いてよろしいですか。失礼致します。マール、紅をお願いします」


「は、はい! 姫様、失礼致します。動かないでくださいね」


 ライカはフェリシアの纏めていた髪をほどくと、懐から取り出した櫛でとき、同じく懐から取り出した髪紐で横髪の一部分を結わえた。


 マールも懐から紅を取り出し、フェリシアの唇を赤く仕上げている。


 二人は何が起きてもすぐ対応できるよう、普段から色々な物を持ち歩いていた。


  「姫様、姿勢をもとに戻してくださいますか」


 直立の姿勢に戻ったフェリシアの腰に青色の布を巻くと、後ろで蝶の形になるように結んだ。白一色の衣装に青が加わり、一気に見た目が華やかになる。


「この布って、もしかして……」


 そう、ライカが使ったのは先ほどの練習でフェリシアが腕に掛けていた布だった。


「姫様、大変お美しゅうございます」


「ほんとです! これならばっちりですよ!!」


「ふ、二人とも、すごいわ」  


 驚くべき二人の早技にフェリシアが感動しながら無断使用していた部屋を出ると、前方から一人の男性が歩いてくるのが見えた。 




  

ついにグレアスさんが登場です。

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