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緋の扉  作者: 緋龍
彼女、あるいは彼等の何とか通常であろうとする日常
35/61

31話

 ライカが向かった場所は「緋の扉」の先にある審問場だった。昼間でも日差しがあまり入らず薄暗い部屋は夜になるとほとんど真っ暗に近い。さらに一昔前まで多くの人間を裁いてきた場所だけあって、どことなく不気味な雰囲気を醸し出していた。


 常人ならば一人で絶対に入りたくないと思うようなこの場所で、そんなことは全く気にならないライカは、持って来た剣を鞘から抜いて胸の前で剣先を天井に向けて構えると、目を瞑って神経を集中させる。


 しばらくそのままで微動だにしなかったが、やがてゆっくりと目を開けるとおもむろに動き出した。


 昼間に箒で舞っていた剣舞とは異なり、素早い動きが続く。上体を後ろに反らし剣を床と平行になるように腕を回す。今度は剣を前に突き出すと手首を捻って剣を真上に向ける。手を放すと落ちてきた剣を左手で取り大きな円を描くように回した。剣を手放したりしながらも足はずっと動き続けている。


 動き回りながら剣を振るい続けたライカは、最初にいた場所へと戻ると剣を頭上に放り投げた。そして両手を上に掲げながら跪くと、回転しながら落ちてきた剣がすっぽりと手におさまった。一呼吸の間そのままの姿勢でいた後、さっと立ち上ると鞘を拾い剣をしまう。


「この部屋の高さでは危険ですね。最後の部分は外で練習することにしましょう」


 審問場の天井はかなり高く、三階建ての建物ほどはあるのだが、それでもぎりぎりだった。毎年剣舞の練習に使っている部屋はここよりやや低いので、確実に剣が天井に当たってしまうだろう。ライカならともかくフェリシアがするのだからなおさらだ。


 それからライカは先ほど舞った内容を一通り確認し直し、問題ないと判断すると部屋へと戻った。





 翌日、フェリシアとマールと共に練習部屋に行く、とライカは昨日の夜に審問場で舞った剣舞を二人に見せた。この部屋は普段は王族や一部の貴族が、夜会や舞踏会で踊るダンスを練習するための場所なのだが、この時期はフェリシア専用となる。長方形の部屋はかなり広く、100人が同時に踊ってもまだ余裕があるだろう。調度品も置かれていないので、剣を振り回すのにはうってつけの場所なのだ。


「今のを私がするの!? 無理無理、絶対無理よ! 不可能だわ!!」


「ライカ様とっても綺麗でした!!」


 ライカの舞を見た二人はそれぞれ思いを口にしているのだが、その言葉と表情は正反対だった。フェリシアが顔を青くしてぶるぶると首を横に振っている後ろで、マールは興奮で顔を赤くし目もきらきらさせている。


「姫様、こちらをお使いください」


 フェリシアの心の叫びを全く聞こえていない振りをして、ライカは彼女に一振りの剣を差し出した。それは細部にまで細かい装飾が施された儀式用の剣で、刃はない。とても高価そうに見えるが、実は剣闘祭で使われているものの模造品だ。本物は厳重に管理されておりおいそれと持ち出すことができないからである。練習用とはいえとても精巧に出来ており、重さや見た目も本物そっくりに作られている。フェリシアは毎年この剣で練習していた。


「ありがとう……ってライカ人の話聞いてないでしょ! 私は出来ないと言っているのよ」


「マール、横笛は持ってきましたね。ではこれを奏でられるようになってください」


 差し出された剣を反射的に受け取ってしまったフェリシアが我に返って叫んでいるが、ライカは気にせず話を続ける。マールに渡した紙には楽譜が書かれていた。曲名は「我らが王を護りし姫」となっている。これは「いくさもり」を讃えた曲で、曲名にある王とはローディスを建国した初代国王、姫は初代「護」のことだ。もっとも、「戦の護」という名が出来たのは建国よりずいぶん経ってからのことなので、正確にはこの姫は「護」ではないのだが。


 国民なら誰でも知っている曲で人気もあるが、全体的に静かな曲調なので大々的な式典で使われることはあまりない。


「え、この曲ですか。ちょっと意外です~」


 渡された紙を見てマールも不思議そうにしている。先ほど見た舞は早い動きが多かったので、もっと賑やかな曲になるのだと思っていたからだ。


「問題ありません。3日である程度は覚えてください」


「う……わかりました」


 マールは、出来るかな~と横笛に指をおいて譜面を見ながら指を動かし始める。


 それを横目で見ると、ライカはフェリシアの練習を始めることにした。


「お待たせ致しました。これより練習を始めさせていただきます」


「ライカ……人の話全然聞いてなかったでしょ……」

 

 フェリシアがじとーっとライカを睨む。


「もちろん聞いておりました。姫様なら必ず出来るようになると、私は信じております」


 私も微力ながらお手伝いさせていただきます、とライカはフェリシアに深く頭を下げ臣下の礼をとる。


「ああ、もう……。その言葉に私が弱いって知ってて言うんだから。ライカって策士よね……」


 私は主なのに……フェリシアはがっくりと項垂れると自分の負けを悟るのだった。


 


 


 




 

審問場をでたところでダレスさんとばったり出くわす。とゆうことも少し考えましたが、真夜中にそんなところにいるダレスさんはいろんな意味でかなりコワイなと思ってやめました。

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