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緋の扉  作者: 緋龍
彼女、あるいは彼等の何とか通常であろうとする日常
33/61

29話

この話と矛盾する箇所がありましたので28話を少し修正してます。


あと、活動報告にも書きましたが00話と0話を削除しました。そして1話を大幅に書き換えてます。ライカとフェリシアの出会いも変わってますので、よろしければお読みください。

 ライカは「緋の扉」を開けて中へ入ると、辺りを見渡し誰もいないことを確認する。ここに入れる人間はライカと王であるレヴァイアだけなので、他の人間がいる可能性はほとんどないのだが、これは彼女の癖のようなものだった。


 約束の時刻より早く着くようにしているので、レヴァイアが来るまでまだ多少の時間がある。


 ライカはそれまでの間、審問場を掃除しようと部屋の隅に置いてある箒を手に取り床を掃き始める。時間がある時は掃除しながらレヴァイアを待つことにしていた。


 そうやって掃除しながら考えるのは、もうすぐ開かれる剣闘祭のことだ。


 (何故フェリシア様は剣舞をあんなにも嫌がるのでしょう。とても美しいですのに)


 毎年彼女の舞を一目見るために来る人間も多い。彼女の舞を見たものはその年幸せに暮らせるなどといった噂もあるほどだ。例えば、彼女の舞を見て意中の女性に結婚を申し込み相手が承諾すると、フェリシア様のおかげだ!、ということになるらしい。


 もちろんフェリシアの舞にそんな効力はないが、そう思えるほど彼女の舞には力があるとライカは感じていた。音楽が流れて彼女が舞い始めると会場にいる数万人の人々は一瞬で静まりかえり、呼吸することさえも忘れて彼女を見入るのだ。


 (確か去年の舞は・・・)


 ライカは掃除する手を止めて持っていた箒を剣のように構え、舞い始めた。フェリシアが剣舞の講師に教えを受けているとき、同じ部屋の隅で控えてたりすることもあったので、ライカも舞を覚えていた。なかなか覚えられないフェリシアに頼まれて彼女の前で舞ったこともある。


 舞は毎年違ううえに動きが複雑なので、覚えるのは結構大変なのだ。


 ライカは箒を素早く前に突き出したり、両手で持って頭上に掲げたりしながら途切れることなく身体を動かす。ライカの動きに合わせて地面擦れ擦れまである侍女服の裾が膨らみ細い足首が見え隠れした。


 コトリ。


 物音が微かに聞こえたので、ライカはすぐに動きを止めた。隠し扉が開かれてレヴァイアが入って来る。手に持っていた箒を床に置き、ライカは膝を折って臣下の礼をとった。


「見事な舞だった」


 そう言いながらレヴァイアはライカに近づいてくる。


「ご覧になられていたのですか」


 まさか見られていたとは思わず、ライカは心の中で少し慌てた。


「ああ、あの扉には覗き穴があってな。ここへ入ろうとしたときにお前が舞っているのが見えたから、そこから覗いていたのだ」


 途中で見つかってしまったがな、とレヴァイアは少し残念そうだ。


「お見苦しいものをお見せしました」


「いや、先ほども言ったが見事だったぞ。箒を剣のように扱えるのは流石といったところか」


「……もったいないお言葉でございます」 

 

 頭を深くさげながら、ライカは箒で舞っていたことをなかったことにしたいと切実に思った。


「どうしたものかと思っていたが、任せて問題なさそうだな」


 頭を下げているライカを見ながら、レヴァイアが呟く。


「ライカ、楽にしてよいぞ」


 その言葉でライカは面を上げ直立の姿勢になる。


「今回頼みたいのはフェリシアの剣舞のことだ。お前に今年の舞を考えてもらいたい」


「私がでございますか? 講師の方がいらっしゃるかと思いますが」


「逃げた」


「は?」


「あやつは剣闘祭でフェリシアが舞う剣舞を考えることに重圧を感じていてな。毎年褒賞を与えることで何とか引き受けさせていたのだが、ついに限界が来たらしい。自分の弟子にも行き先を告げずに行方をくらましたのだ」


 確かに毎年胃の辺りを押さえていたが、まさかそんな理由だったとは。ライカは真実を知って驚きを隠せなかった。


 確かあの講師はこの大陸で3本の指に入る腕前の持ち主だったはず。その講師がいないということは・・・


「誰も他に講師が務まるような人物を思いつかなくてな。今日お前を呼んだのもこの事を相談するためだったのだ。問題が解決して私は嬉しいぞ」


「陛下、私は剣舞の教えなど受けたことはございません。そのような大役を仰せつかることなどできかねます」


「いや、先ほどの舞を見て確信した。お前が相応しい」


「ですが……!」


「これは勅命とする」


 なおも言い募ろうとするライカを遮ってレヴァイアが言葉を発する。


「…………御意にございます」


 勅命と言われては従わざるを得ない。ライカは了承の意を込めて礼をする。


「すまないな。だが期待しているぞ」


 そう言い残してレヴァイアは隠し扉の向こうへと消えていった。残されたライカはしばらく床に横たわった箒を見続けながら、逃げた講師を見つけ出す方法はないかと必死に考えていた。   

 

  

講師は大変なプレッシャーを感じていたのです。

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