2話
「何なりと…陛下」
そう言って深く頭を下げるライカの前には、一人の男がいた。陛下と呼ばれたことからわかるように彼は、この国ローディスを治める君主、レヴァイア・ローディスその人だ。
20歳になる前にローディスの王となったレヴァイアは、歴代の王が残してきた悪法や忌むべき慣習などをただちに改善していき、目覚ましい勢いで国を発展させていった。稀代の名君として民に慕われている王は、在位22年、40歳を過ぎた今でも国を豊かにしていくその才能に翳りをみせることはない。
初めて会ったときと変わらない強い意思が宿った眼差しでライカを見つめている。
「今、騎士団のよからぬ噂が城下で広まっているのを知っているか」
(やはりそのお話でございましたか)
騎士団とは、家柄・貧富に関係なく入団試験に合格できれば入れる、完全実力主義の集団のことである。ただし、その入団試験は超難関で、合格できるのは毎年数人しかおらず、その実力は、一般兵100人にも200人にも匹敵すると言われているのだ。
そんな常識から少なからず外れている騎士団なのだが、変わっているのはそれだけではない。多くの国で騎士と言えば、王に仕えるものだというのが通常の認識だろう。
だがローディスの騎士団が仕えるのは王ではなく「戦の護」と呼ばれる存在。この世に生を受けてからその命尽きるときまで「戦の護」という役目を負う存在に、彼らは忠誠を誓う。
この仕組みは建国当時から行われていたといわれており、現在では国民に至極当然のこととして認識されている。
そして現在その役目を負っているのが、ライカの主であるフェリシアなのであった。
代々の「戦の護」は王女と定められており、当代の「護」がその生を終えた後、一番最初に生まれた王女が次代の「護」となる。
「護」は生涯婚姻することが許されず、子を成すことができない。
「存じております」
「そうか。なればあまり多くを語ることもないな。これ以上の被害は騎士団の信頼を貶めることになりかねん。早急に原因を究明し、事態を収拾してほしい」
「御意のままに」
「事が事だけに騎士団を動かすわけにもいかぬのでな。だが、いざというとき動ける騎士も必要であることも事実。ゆえに第三騎士団長だけにはお前が動くということを伝えてある。」
「第三騎士団長…ダレス様でございますね」
騎士団は第一から第三までで構成されており、それぞれ得意とする域がある。第一は海域(海上戦)、第二は空域(空中戦)、第三が陸域(陸上戦)だ。
その第三騎士団を束ねるのが、団長ルークウェル・ダレス。
「報告はダレスにすればよい。あれに処理を任せてある。ライカ、頼んだぞ」
「畏まりました」
レヴァイアの命を受けて秘密裏に問題を解決する、それが「緋の扉」なのだ。
騎士団は「護」に忠誠を誓ってますが、王の命令を聞かないということはありません。基本的に王族の命には従います。誰の命令を最優先するのかといえば、もちろん「護」になりますが。




