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緋の扉  作者: 緋龍
彼女、あるいは彼等のそれなりに通常ではない日常
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24話

 フェリシアの部屋を後にし、ダレスの執務室で今日の訓練について話し合いを終えたライカは、王城の正門前にいた。彼女の他にダレス、フレイエ、5人の騎士もそろっている。


 騎士たちは騎士服ではなく私服を着用している。城下で目立たないためなのだが、5人ともそれなりに整った顔をしており、服もきっちり着こなしているので一般人には見えない。


 とりあえず偵察にはむかない格好なのだが、ライカは進言するべきか迷った。表向きはダレスの従者なので、従者としてふさわしくない発言は控えた方がいいと思ったのだ。


 「お前たち、髪と服をもっと乱せ。目立つ」


 ライカがどうするべきか考えていると、彼女の心を読んだかのようにダレスが言葉を発した。


 「そうですね。その格好では城下で浮いてしまうでしょう」


 フレイエにも言われて、慌てて騎士たちは整えていた髪をくしゃくしゃにし、ぴっちりと留めていた服のボタンをはずした。


 (先程よりはよくなりました。あれでは騎士か貴族にしか見えませんでしたから)


 顔を変える方法もありますけど騎士の方々にそんなことはさせられないです、とライカは騎士たちを見ながら思う。「闇」にいたときに様々な変装術を学んだライカは、貴族から物乞いまで、どんな身分の人間にも自在にその姿を変えることができた。


 「少しはマシになりましたね。では今日の訓練について説明します」


 お互いを見合いながらあーでもないこーでもないといろいろいじっていた騎士たちは、フレイエの言葉でぴたっと動きを止め整列する。


 「貴方たちには2人と3人に分かれてもらい、交代で彼を尾行してもらいます。ライル」


 「はい」


 呼ばれてライカは騎士たちの前に出る。


 「彼が今から城下へ向かいますので、2人は昼一の鐘が鳴ってから城下へ行き、彼を見つけ出して後を追って下さい。昼二の鐘が鳴ったらここへ戻ってきて3人と交代です。3人は2人からライルの情報を聞いたうえで彼の行動を予測し、彼を見つけて下さい。昼三の鐘が鳴ったら終了です。以上ですが質問はありますか」


 誰も何も言わないところを見ると質問はないようだ。


 「では始めます。ライル行ってください」


 「はい。では失礼します」


 一礼するとライルは正門をくぐり城下へと向かう。ライカがいなくなった後で組分けするので、彼女は誰が後を追ってくるのか分からないのだ。


 (さてと、まずはどこに行きましょうか)


 最初に向かう場所を考えながら、ライカはのんびりと歩みを進めた。





 

 騎士たちがライカを見つけられたのは、昼二の鐘がなる四半刻ほど前になってからだった。


 ライカは城下でも人気の髪飾りを売っている店(マールからの情報だ)に、恋人に渡すプレゼントを探している男を装って入り、フェリシアとマールに似合いそうなものはないかと置いてある商品を眺めていた時だ。


 店内に置いてある鏡に、通りの向こうからこちらを窺う2人の男性が映っているのが見えた。


 (ようやくです。時間までに見つけてもらえないかと少し心配してしましました)


 ライカは白と青の石が付いていて様々な色糸が編み込まれたな髪紐と、赤い石が付いたシンプルな髪留めを買い、騎士たちに気付いていない振りをして店を出る。


 そろそろ昼二の鐘が鳴りそうなので、昼食を食べることにしたライカはすこし考えた後「空翔ける兎亭」に足を向ける。そこの定食が今人気なのだとマールが言っていたのを思い出したのだ。


 (しかしマールはどうやって城下の情報を得ているのでしょう。キールから聞いているのでしょうか)


 マールが城下の流行りに詳しいことを少し疑問に思うライカだった。実は騎士を慕う会繋がりで親しくなった城仕えの侍女や商人の娘などが情報源だったりする。


 「空翔ける兎亭」は、髪飾りを売っていた店と違って、大通りからすこし外れたところにあり、羽の生えた兎が描かれた看板が目印だ。中に入るとすでにかなりの人で賑わっていた。残り少ない空席の一つに腰かけると、すぐに店員が注文を取りにくる。


 「いらっしゃい!今日の定食は白身魚の香草煮と鶏肉の甘辛炒めだけど、どっちにする?」


 ライカが白身魚と答えると、店員は厨房がある方に向かって「魚一つ!」と叫んで去って行った。


 しばらくするとパンと卵が溶かれたスープ、白身魚が机の上に並べられた。どれも出来たてで美味しそうに見える。


 いただきます。と言ってライカが食べ始めようとすると昼二の鐘が聞こえてきた。騎士たちの交代の時間のようだ。


 (後半の3人も見つけてくれるでしょうか)


 そんなことを思いながらライカは食事を始めた。


 


  

騎士は身なりに気をつけるべし。と入団したときに教えられるのです。

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