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緋の扉  作者: 緋龍
彼女、あるいは彼等のそれなりに通常ではない日常
19/61

17話

 「ありがとうございました」


 ライカは剣を鞘に納めて一礼をする。


 完全に決まったかに思われた一撃はダレスによって止められてしまった。剣先が喉元に当たる寸前で、ライカの手の上から柄を握って止めたのだ。 


 うおおおぉぉぉぉっっっっ!!!


 いつの間にか周りに集まっていた騎士たちから大きな歓声が上がる。


 「すっげえぇぇ!団長と互角にやり合ってたぞ!」

 「違うね。団長は本気だしてなかったよ」

 「いやでも、あいつもまだ余裕があるように見えたぞ」

 「俺、目で追うのがやっとだった」

 「俺も…」


 興奮したり落ち込んだり、騎士たちの反応は様々だったが全員が共通に思ったことがあった。


 つまり、


 『で、結局あいつは何者なんだ?』


 ざわつく騎士たちの中から一人が意を決して、二人の打ち合いを見て放心していたフレイエに近づいていった。


 「副団長、団長の相手をしていたのは誰なんですか」


 答えを聞こうと、それまでざわついていた騎士たちが一気に静まり返る。


 「え?ああ、彼はライルと言って今日からしばらくの間団長の従者をする者です」


 「従者って…何でまた急に?」


 「従者だって?」「そんな話聞いてたか?」「いや初耳だぞ」「なんで従者があんなに強いんだ?」

 

 フレイエの発言に周囲がまたざわめきだす。


 「それは…陛下のご意思だそうです。詳しいことは私にもわかりません。直接団長に聞いてみたらどうです?」

 「い…それは……」


 絶対に無理です。フレイエにライルのことを聞いた騎士は、ぶんぶんと勢いよく首を横に振った。


 団長に直接聞くなんてことできるわけがない。そんなことをしようものなら、気まずい沈黙の中、感情のないあの鋭くとがった眼で睨まれ続けなければならないのだ。たとえ本人に睨んでいるという自覚がなくとも、騎士たちにとっては一人全裸で敵陣に突っ込む方がましと思えるほど、ダレスの無言目線は恐怖を感じさせるものだった。


 それを想像して騎士が青くなっていると、ダレスとライカが騎士たちの方に近づいてきた。


 「フレイエ副団長、ありがとうございました」


 そう言ってライカは借りていた剣をフレイエに返す。


 「どういたしまして。扱いにくくはありませんでしたか?」

 「少しだけ…。ですが扱いにくいというほどのことでもなかったです」

 「そうですか」


 フレイエは返ってきた剣を腰にもどす。


 「ライルだ」


 何の前触れもなくダレスが騎士たちにライルを紹介した。


 突然のことにダレス以外の人間が、えっ?という表情になる。


 「ライルと申します。本日よりダレス様の従者を仰せつかりました。第三騎士の皆様、よろしくお願い致します」


 フレイエにしたときと同じように補足の自己紹介をする。が、騎士たちの疑問はあまり解消されなかったようだ。


 「フレイエ」


 そんな騎士たちのことはお構いなしにダレスは、懐からいつの間にか取り出していた用紙をフレイエに渡す。


 「はい。…新しい訓練ですか。・・・・・!!?」


 渡された用紙を読んでいたフレイエが驚愕の表情にかわる。


 「団長。これは本当なんですか!?」


 「ああ。明日からだ」


 「でも、いくらなんでもこれは…」


 「問題ない」


 フレイエが動揺しているのに対し、ダレスはどこまでも無表情だ。用紙に書かれている内容を考えると、フレイエの反応はけして大げさではないだろう。


 「わ、わかりました。第三騎士は全員そろっていますか?…全員いるようですね。これから名前を呼びますので呼ばれた者はこの後集まって下さい。新しい訓練を言い渡します。他の騎士は解散して、通常どおりの訓練をしてください」


 特定の騎士だけが選ばれるということに、おそらく重要な任務につながる訓練なのだろうと、騎士たちの間に緊張がはしる。当たり前だが騎士たちは、総じて自分が活躍できる機会をうかがっている。


 「では呼びます。ヴァン・エイヘム、バルフレイ・ドゥバ……」


 呼ばれた騎士は皆、高揚した雰囲気で前に出てくる。


 「以上です。では解散!」


 言葉と同時に呼ばれなかった騎士たちが一斉に訓練に戻って行った。   

  


 

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