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第42話:国境付近

「ヒューゴ様、周囲を探索しましたが、怪しい者はいませんでした!」


 部下の報告にヒューゴは顔をしかめた。

 アーデル橋に着いた時にはもう敵の姿はなく、ヒューゴは周辺を部下たちに探させたが何の成果もなかった。


「……単に国境部隊を襲っただけというのか」

「そのようですね。国境部隊が思いのほか手強(てごわ)く、逃げてしまったのでしょう」


 ヒューゴは考え込んだ。


「わざわざこんな僻地に来てむやみに襲撃して逃げ帰るとは……。橋を支配したいのであればわかるが……」

「敵国の様子見でしょうか?」

「そんな情報は回ってきていない。不自然すぎる……」


 幸い死者はなく、数人の怪我人が出ただけだ。

 それもまた、引っかかる。


(まるで遊びでちょっかいをかけたような……)


「国王軍が来ました!」


 アーデル橋に着いて一晩を明かし、翌日の昼前にようやく援軍がやってきた。


「これで後は任せられるな」


 嫌な予感が(つの)るなか、ヒューゴは引き継ぎの手続きを済ませた。

 王から感謝の言葉が届いていたが、心は浮き立たない。


「すぐに城に帰るぞ!」

「はっ!」


 騎士団を率いたヒューゴは城へと急いだ。

 馬を走らせながら、ヒューゴは考えを巡らせる。


(何か引っかかる……。こんな茶番のような国境襲撃……)

(まさか俺たちを国境へ誘い出すために?)

(そんな危険を冒してまでなぜ……?)


 馬を飛ばし、ヒューゴは昼過ぎに城へ着いた。

 城門を通ると、すぐさまジャレッドが駆け寄ってきた。物見台からの知らせを受けたのだろう。

 ジャレッドの表情を見て、ヒューゴはすぐさま異変に気づいた。


「何があった。まさか――」

「アイリス様が行方不明だ」

「は?」


 いきなり殴りつけられたような衝撃がヒューゴを襲った。


「どういうことだ!」


 ヒューゴは思わずジャレッドの胸ぐらをつかんだ。


「すまない。知らせるのが遅れた」


 ジャレッドから話を聞いたヒューゴは、ふつふつと煮えたぎるような胸の内を抑えられなかった。

 アイリスは侯爵家からいなくなり、義母たちの姿もなく屋敷はもぬけの殻だったという。


「殺す。エイダとデボラが企んだに違いない」

「ダメだ、殺すな。話を聞き出してからだ」


 たしなめるジャレッドに、ヒューゴが鋭い目をやった。


「そう言うからには、もう目処はついているんだろうな?」

「ああ。コディが責任を感じて頑張ってくれた。遠方に逃げていたが、捕らえて城に連れてくる手筈になっている」


「……アイリスを売り飛ばしたあいつらが取り返そうとするはずがない。考えられるのは――」

「ああ。アイリス様を欲しがる誰かにそそのかされたんだろう」


 ヒューゴは唇から血が滲むほど噛みしめた。


「くそっ、やっぱり俺がついていくべき――」


 言いかけてハッとする。


「俺はついて行けなかった……。タイミングが良すぎやしないか? 国境付近、よりにもよってウチから近いアーデル橋で騒ぎが起こるとは」


 そう考えると、不自然な襲撃も納得がいく。

 すべてはアイリスをさらうための計画の一環だったのだ。


 ジャレッドも同じ考えに至ったようでうなずいてきた。


「おそらく全部繋がっていると思う」

「だとすると、かなりの資金とツテを持った奴だな……」


 アイリスは没落した令嬢で財産はない。だが、彼女には聖女の力がある。


白磁草(はくじそう)の件を知った人間かもしれないな。あれは一財産を築ける」


 ジャレッドが厳しい表情になる。

 ヒューゴは舌打ちした。


「エイダたちから聞き出すしかないな……。地下牢を空けておけ」

「もう既に準備はしてある」

「そうか」


 ヒューゴの目に凄惨な光がともるのを、ジャレッドが気づいてたしなめる。


「くれぐれも殺すなよ! アイリス様の行方がわからなくなる!」

「わかっているさ」


 ヒューゴは獰猛に微笑んだ。

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