6 再会
2人がこちらへ向かってくる音が聞こえる。
来た、木之下!
「初めまして。」
芹はやっと会えた彼を目の前にして緊張でしばらく顔を上げることが出来なかった。
「初めまして、私は独活山...」
しかし、彼の顔を見た瞬間に言葉が詰まる。
予想外だ...
「...独活山芹です。仲也さんにはお世話になっております。」
「いえいえ!私は木之下拓也と申します。それで...その、何かご用でしょうか?」
彼は木之下や仲也とは全く似ても似つかない容姿をしていた。
まさか、仲也の弟と木之下が
"別人"だったとは。
「いえ、弟さんがいらっしゃると聞いてご挨拶に、すみません」
「そんな!全然、大丈夫です。」
あまり会話が耳に入ってこない。木之下がここにいないと分かった今、この場所に立っている意味が無かった。
(さっさと帰ろう。また木之下の居場所を探らなければ)
芹は突然思い出したようにソファから立ち上がった。
「あ、大変!すみません、少し急用が...」
「あ、いえいえ!全然。今日はわざわざありがとうございました。」
「はい。お邪魔しました。」
玄関まで向かうと仲也も後を付いてくる。
どうやら送ってくれるようだ。
仲也は少し古めかしいドアを開けた。
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(もう仲也も役立たずか...)
肩を並べながら歩く男を横目で見た。
仲也の弟が彼では無いと分かった今、仲也に用はなくなった。
木之下、お前はどこにいるんだ?
芹は木之下に会いたくて仕方がなくなった。こんな時に木之下がいたらどれだけ嬉しいだろうか?
もう一度、仲也を見た。
その顔、一つ一つが彼に見えてしまった。
「仲也、公園に寄らないか?」
「貴女が望むのなら」
「......じゃあ、公衆トイレでヤろう」
ご褒美だ。仲也
彼じゃないと分かっている。仲也とセックスしたって利益がないことも
芹は仲也と関係を持ってしまった。