3 いとこ
叔母宅には4歳年上の従兄弟、
間山 正義がいる。
久しぶりに会った正義は変わらず真面目で正義感が強く、芹をよく気にかけていた。
「ごめん正義、高校の準備手伝ってもらって。」
両親が逮捕され数ヶ月、思い通りに計画が進み、芹の銀行口座には慰謝料が入った。
精神的ショックも回復してきた(設定)ため、休学していた学校の準備のため買い物を正義に手伝って貰っていた。
「大丈夫!気にしないで。休学も仕方ない事だし、僕は芹が心配なだけだから!」
にこりと笑う好青年に芹も首を傾げてにこりと笑う。正義は照れたように目を逸らした。
「じゃあ帰ろうか。伯母さん達が待ってるし」
「う、うん!」
芹は知っている。正義が芹に好意を抱いている事も、その中に性的な感情が混じっている事も。
帰宅後、芹は正義の前で驚いた声を出した。
「芹、どうしたの?」
「買い忘れた物があって...買ってくる」
少し困ったような表情で微笑んで正義を見た。
「じゃあ着いてくよ。もうすぐ雨も降るみたいだし心配だから。」
「...そう?じゃあ着いてきて貰おうかな。」
たわいもない会話をしながら2人で道を歩く。
正義は芹に頼られるのが好きだった。まるで芹が自分だけしか頼りにできないように見えるから。芹には自分しかいないんじゃないか?そんな感情に陥る。それを利用されることも知らずに。
しばらく歩いた後、頬に小さな水滴が跳ねる。雨だ。2人は傘を差し濡れない様にしっかりと身を守った。
「ねえ正義」
「ん、どうしたの?」
「雨が降るとさ傘なんて放り捨ててすべて吹っ切れて走りたくならない?」
いつも真面目な芹から出たやんちゃな言葉に正義は少し驚いて笑った。
「少し分かるかも。芹からそんか言葉が出るなんてびっくりしたなぁ」
あははと爽やかに笑う。完全に冗談だと思っているようだ。
「もう、私は本気だよ」
芹はいたずらっぽく笑って傘をゆっくり閉じる。黒い髪と服には水が染み込んで肌に張り付いた。それはなんだか色っぽくて薄いワイシャツからは黒い下着が透けていた。
-----------------------------------
「...!?」
正義は黒目を小さくして驚いた。
それは本気でやると思っていなかったのか、それとも芹が身に着ける下着が意外だったのだろうか?そんな表情を芹はみてニヤリと笑った。
「ねえ、正義。私ね貴方しかいないの」
「...?」
「頼りになる正義が大好きだよ。正義は私の事好き?」
「............え?」
もしかしたら今、世界には芹と自分の2人しかいないのかもしれない。
そう思わされる程、ロマンチックな計算され尽くした展開だった。
「ぼ、僕...」
少しの沈黙が流れる。雨の音など分からないほど心臓の音がした。
「...もしかして、私の事嫌い?」
「そ、そんな!そんなわけ無い!僕は...」
芹の手を包むようにして握る。どうやら決意ができたようだ。
「......僕、芹のこと好きだよ。愛してるんだ.........なんて」
雫がついた芹のまつげがパチリと動いて微笑む。正義は顔を真っ赤にした。
「嬉しい。ありがとう正義」
そのまま首に手を回して体を密着させた。
正義は我慢に耐え切れず芹の桜色の唇に口付ける。
「吹っ切れようか、正義」
伯母夫婦には決してバレないように近くのラブホテルに2人で入った。