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1-33 罪満たされし蜜と罰3

 


 ミゼラティを見送った男たちは、すぐさま行動に移っていた。

 隠蔽魔法を掛けて忍び込んだは悪王と魔女が巣窟――その別棟。

 ここへ来たのは、宴に参加しない子供たちがこちらに集められているようだとヴェルジェに聞いた為だった。

 情報元は内通者か、使い魔か。どちらにせよ、これは好機だと考えた。

 感知されない程度の弱い魔法を重ね掛けて個々の存在感を薄め、潜めて、人気の少ない内部を駆ける。廊下に敷かれた絨毯は上質だったが、ところどころに嫌な色の染みが落ちていた。

 刺繍では決してないだろう大小の黒っぽい染みがついた赤い絨毯に顔を顰めるが、足を止めている場合ではない。

 途中で施錠されていない小部屋を見つけたので、子供がいるかと覗いたがハズレだった。

 しかし無人であるのをこれ幸いにと中へ入り、そこで作戦内容の確認と隠蔽魔法の掛け直しを行うことにする。


 大娼館を出る前に、彼らは一つの作戦を立てていた。

 それは、一人が目立つ囮になって魔女の目を引き付けている間に子供たちを救出する、という単純なもの。

 けれど、囮役を申し出たのがミゼラティだったものだから、ヴァイスリヒトとヒューグウェンリルが盛大に反対し、幼女の前に立ちはだかって娼館部屋から出るのを阻止するというひと悶着が起こってしまう。

(あのチビは、何でああも自己犠牲に躊躇いがないんだかなあ……)

 手練れの暗殺者ではあるが、今はそれ以上の有能者がいる為に『鴉』は哨戒以外にすることがない。なので、その時のことを思い出して束の間の手持ち無沙汰を解消することにした。


 過保護者たちに引き止められたミゼラティは、当然ながら引き下がりはしなかった。

 ドレスの裾をちょっと持ち上げると、爪先で軽く床を叩いて過保護者たちに噛みつく。

「わざわざ着替えてここまで来たのに、何もせずに帰れと? 子供たちは見殺しにするのか?」 

 目の前にそびえる「壁」を見上げながら、じとりと睨んで抗議を続ける。

「そうなると、私は単に娼館でドレスを着てはしゃいだだけで帰るという、素敵な性格破綻者になるわけだが……それについては何も思わないのか」

「ですが、我が君。手を貸さずとも、そこの女と子供のみでどうにかなるのではないでしょうか。見たところ、それなりに平均以上の力を持ち合わせているようですし」

 ミゼラティには片膝をついて丁寧に控えながらも、傍らの少年と館主の女には侮蔑するような視線を向けて語るヒューグウェンリル。

 多分、初回の対面において少年と館主とが悪手をとった為に、ヒューグウェンリルの中で彼らの印象が最低値まで下がっているのだろう。

 ミゼラティもその心情を汲み取ってはいるが、それでも溜め息を吐いて言った。

「既に上級妖魔の力が関与していることを、私と君は知っている。その上でその判断ならば、私は君の手を離してでも単独で行動するつもりだ」

 そう言い返すと、途端にヒューグウェンリルがミゼラティを勢いよく見上げた。

「それは……っ、お許し下さい、我が君! 私の全ては貴方様のもの。失言、いや愚かなる具申をしたことを深くお詫び致します! ですから、忠誠を誓った下僕を捨て置くなど、どうかそのようなことは……!」

「あ、ああ。いや、うん……?」

(危険度が高いから無理して付き合う必要はないよ、と言ったつもりなんだが)

 なのに、この反応。ともすれば縋りついて懇願でもしかねない青年の勢いに、ミゼラティは慌てて落ち着かせる。

「だ、大丈夫だ、咎めたわけじゃない。……手を貸してくれるなら助かるよ、ありがとう」

「――はい! こちらこそ、お許し頂いた上に愚考たる願いを受け入れて頂き、ありがとうございます!」

 喜色の笑みを浮かべて見つめてくるヒューグウェンリルに気圧されながら、次にミゼラティはその隣に立っている――対応を待っている――青年のほうへも、渋々ながら話を振った。

「……あー。……騎士殿、君は――」

「――私は魔女を恐れない、と言っただろう? ああ、心配してくれてありがとう。君は本当に優しくて良い子だな、お嬢さん」

「……いや、その…………うん。助勢に感謝するよ」

 内心で頭を抱えたくなりながら、穏やかに微笑む騎士からそっと目を逸らしたミゼラティは最後に『鴉』を見遣る。

「――と、まあ、こんなふうにこちらの参加意思は纏まったわけだが、君の方は問題ないな?」

「……ないわけねえだろ」


 ここで『鴉』だけが否定の意見を口にした。

 ミゼラティを睨み付けて、強く顔を顰める。

「勝手に話を進めてたが、危険なのは分かってんだろ? オマエは赤の他人だし、この国の人間じゃねえ。……『キレイなまま』でいたいんならここが境界線なんだぜ、チビ」

 無遠慮にミゼラティに近づいた『鴉』はその目の前に立ち、小さな存在をわざと見下す様にして悪態をつく。ヒューグウェンリルが即座に立ち上がり、前に出ようとするのを片手で制してミゼラティは言葉を返す。

「これも乗りかかった舟だ。小舟だろうとも沈まないよう尽力するよ」

 睥睨を受けた幼女が返したのは子供らしからぬ苦笑。

 それを見た『鴉』は――少年は、本当に馬鹿な子供がいたもんだと笑い、笑い続け、そして……最後には、深く頭を下げたのだった。



 ◇  ◇  ◇



(全く、お人好しというか、なんというか……)

 部屋の片隅――壁を背につけた形で入り口付近に立った状態――から、『鴉』の少年は今もまだ「支度中」でいる同行者たちを眺めていた。

 魔法に手が掛かっているのか、それとも作戦内容に修正を掛けているのか。青年二人はお互いに、目線や手ぶりで何かをやりとりしている。

(こうして見ると、ほんと、おかしな組合せだよな)

 青年の内、ひとりは外道実験塔に踏み込んだ時の格好――軽装ではあるが騎士の礼装を身につけたまま――なので『鴉』の目にも、銀の髪をした青年のほうが騎士であることは分かっていた。

 けれども、得た情報はその一つだけ。

 高慢ながらも(いや生意気というべきか?)目を瞠る美を持つ幼女と、美しいが無表情に近い騎士と、それからこちらもまた見映えのいい相貌をした青年とが、一体どういった関係なのかはまるで見当がつかなかった。

 偉そうにしている幼女に、一回りの年の差はあるだろうと思われる青年たちがまるで従僕が如く付き添っているものだから、当初『鴉』はミゼラティ達を「気紛れに観光しに来た甘っちょろい貴族」と踏んでいた。

 甘やかされた我儘な子供と、そのお遊びに付き合わされている憐れな従僕共。

 そんなバカな貴族だったら大層な金品や宝石を持っているんじゃないか?と思ったので路地裏に居た彼らに襲撃を仕掛けたのだが――。

 ――結果は、無血開城ならぬ無血停戦。

 何も奪えないどころか、妙な縁にて仲間でもあり家族でもある子供たちの救出作戦にいつの間にか加わっているというこの流れが本当に奇妙だな――と、そう考えたところで思わず微苦笑が零れた。


(あの時は、バカなことを言い出すガキだと思ったが……)

 慌てもせずに対話を持ちかけてきた幼女に、『鴉』は戸惑いと苛立ちを抱いた。

 だから、当初はそのキレイな顔を少しだけ傷つけて脅してやるつもりだったのだが、幼女の瞳に怯えや恐怖がないことと、刃を持つ手をつと引き止める何かを感じたので、その凶行は取り消されることになる。

 その判断は実に正しかった。

 いま思うと本能が警告していたのかもしれない。

 幼女を抱えて元の場所に下りた時、下にいた青年の一人が禍々しい緋色の魔術を発動しかけていたので、ぞっとした。

 血で描いたような色はどう見ても狂気の呪術。凶行を引き止めた正体を垣間見た気がして、腑に落ちた。


 ――ああ、こいつらは触れてはいけないモノだ。


 その時はそれを理解しただけで充分だった。なにせ、隠れ家でもある教会に案内するつもりはなかったのだから。

 けれどもなぜか別れがたく、時刻的に明るすぎることもあって――この来訪者たちはそれぞれが妙に美しい容姿でいたので、魔女の目を警戒したのもある――結局は、教会へと引き込んでしまう。

 一緒にいた子供たちは先に戻っていた。……その内の一人が去り際に幼女を気にかけていたのを見て、『鴉』の胸がぎゅっと詰まる。

(アイツの妹は、確か……恐らくは、もう……ああ、クソッ――!)


 仲間内で一番、可愛らしい少女だった。良い働き口を見つけたくて小奇麗にしていたのが、まさか仇になるとは。

 ある昼上がり、教会に戻る途中の小道で一人で歩いていたところを暗愚王の醜悪な手下に捕まり、それきり。

 行ってきます、と出掛けて行って、ただいまと帰ってくることはなかった。

 子供たちを率いる『鴉』たる少年は、当然ながらすぐさま城へ侵入して少女を探す。あちこち探し回ったが、痕跡一つ見つからず、そのまま――それきり。

 何も見つけられなかったのは、魔女の仕掛けた幻術の罠があったから。それに欺かれていたのだと、後に相談したヴェルジェの指摘によって明かされたが、その時には時間が経ちすぎていた。

 ――少女は未だに行方不明のまま。


 異邦者たちにこの国の現状について語っている内にその時の思いがぶり返したのか、気づけば一方的な愚痴大会となってしまったのは反省している。

 個人の怒りを、土産にもならぬ下らない話を、全くに無関係な「観光ご一行様」にぶちまけてしまった。

 けれどもどうしたことか、唐突に幼女がその魔女へ会いに行くと言い出し、同行者も引き止めようともしないで一緒に出て行ったものだから、慌てて追いかける羽目になったのは自分でもどういう流れなのかと思う。

 教会を出る際に、呼び止めてきたシスター・フィリアから宣託を預かり――幼女を怖がっていたのは何だったのか、そういえば聞きそびれたままだ――余所者三人へそれを渡すついでに、仲間へと加わることにした。

 託宣内容が「大娼館へ行けば道が開かれる」というものだったので、一先ず城から大娼館へと移動先を変更して向かったのだが……そこで『鴉』は二度目の「本能からの警告」を受け取ることになる。


 二度目の警告、それは大娼館にて館主の「歓迎」を受けた幼女が見せた「返礼」だった。

 どこに隠していたのか、手にした白い杖で床を叩いたは一度。

 魔法の詠唱は聞こえなかった。

 魔術の呪式を描いた様子も無かった。

 なのに、幼女の目の前には緋色の花が落ちていた。

 花の名は大娼館の館主ヴェルジェ。闇色の茨棘に緩やかに拘束された格好で膝をつき、項垂れた彼女を見た『鴉』は自身が感じていた予感が真実であったことを知る。


 実のところ、ヴェルジェは「真緋の薔薇(フランヴェルジュ)」の名を持つ魔女で、『鴉』が知る中で最も強大な力を持つ存在だった。

 だからこそ今までに暴君の魔女に対抗出来ていたし、この館も侵食を免れていたのだ。

 ミゼラティたちにそのことを隠していたのは多少の警戒もあったが、詳細はヴェルジェが現れたら明かすつもりでいた。なのに……。


 ――その頼りになる魔女が、幼女に「悪戯」を仕掛けて返り討ちに合うなど、誰が想像しよう?


 強大な力を持った子供と、底が見えない美しい騎士と、子供に心酔している邪悪な魔法を使う青年と。最終的に謝罪は受け入れられて何事も無く済んだが、自分もあの時、ミゼラティの提案を受けずにあと一歩踏み込んでいたら今この場にいたのかどうか。

(……いや、確実にオサラバしていただろうな)

 騎士の方はともかく、魔術師らしき青年は『鴉』を躊躇いなくあの赤い呪陣で殺していただろう。

 狂信者と揶揄したのはからかい半分、本音が半分であった故の真実。

 あの緋色の先に、どんな死が手を広げていたのかは知らない。

 けれども、気配だけでとんでもない怖気を抱いたことから、知らぬままでいいとだけは即座に理解した。



 ◇  ◇  ◇



(……バカは長生きできねえ、ってやつだな。自分の生存本能に感謝しとこう)

 血の色を漂わせた回想を拭い、『鴉』は失笑する。

 その上で、しみじみと思う。

 彼らとやり合わなくて良かった。――本当に良かった、と。

 ふーっ、と静かに息を吐きだして、顔を上げる。

 部屋の中央では一人が魔法を細かく重ねる傍ら、もう一人が作戦内容について確認しているままだった。

 騎士と、魔術師と。――『鴉』は、ここでふと気になっていたことを口にする。


「なあ。オマエたちは、あのチビとどんな関係なんだ?」

 唐突な質問を投げた『鴉』に、他の二人が怪訝そうな顔を向けた。


「何故そんなことを?」と質問を返したはヴァイスリヒト。

 今更なにを?といった目をしていた。

 そんな話をする必要が?とも言っているような気がした。

 もう片方の魔術師?の青年に至ってはとても冷えた視線を向けられたが、本能的に単なる好奇心からだと明かすのは憚られたので、『鴉』は言い方を変えて会話を繋ぐことにした。

「いや、なんとなくオマエたちとチビが気になってな。やりとりを見ていたが、家族じゃねえのは確かだろ?」

 家族じゃない、と『鴉』が断言した瞬間にヴァイスリヒトが僅かに表情を曇らせたが、『鴉』は気づくことなく己の推測を語る。

「――で、だ。そうなると、仲間か?と思ったがそれも外れっぽいしな。特に――」ここで『鴉』がヒューグウェンリルに視線を投げる。

「そっちのやつは、あのチビに心酔してんのか、どうにも狂信者めいてるしよ」

「狂信ではない、敬愛と言え。我が心は彼の方のみのもの。塵芥の下らぬ信徒のそれと同等に見るな」

 不愉快そうに眉を顰め、ヒューグウェンリルが『鴉』に冷たい視線を向ける。

 それは実験塔にて、かつての同僚に向けた睥睨の瞳。ミゼラティに寄せる好意の欠片すらも一切見せない態度が示しているのは対話の拒絶。

 だが当の主たる幼女に「思うところがあっても今は飲み込んで協力するように」との命を受けている為に、渋々ながらも答えを返したのだった。忠実な下僕として。冷ややかさはけれどそのままに。

 しかし『鴉』はそんな態度には慣れたのか、眉を顰めたりすることもなく少し肩を竦めて「そうか、それは悪かった」と形ばかりの謝罪を返したのみ。

 少年ではあるが、その対応は擦れた大人のそれ。子供の欠片は少ない故に。

 ともかくも答えを一つ得た『鴉』は、残ったほうにも矛先を向ける。


「……で? そっちはどうなんだ。オマエのほうは、やれ騎士殿やら長兄殿やらと曖昧に呼ばれていたが……」

 やっぱり家族じゃないんだろ?と再度、確認するように目線だけで問う。

 ヴァイスリヒトの端整な顔に一瞬ばかり陰惨な影が差したが、それはすぐに消え去りいつもの硬質さを戻して口を開く。

「私は……彼女の中で、どういう存在なのかは知らない。だが――」

 僅かに視線を下げた拍子に、後ろで束ねた銀の髪が騎士の鎧を包む外套の上を滑る。


「――彼女を、守りたい。側に居て、全てから護りたい。……今は側を離れてしまっているが、彼女の提示した作戦を遂行することで、叶うだろうと考えている」


 片手を心臓に当てて、ヴァイスリヒトが薄い苦笑を浮かべる。

 この場にいない彼の存在を金の目に映して微笑んだそれは、親愛なる家族に向けるものではなかったか。

 『鴉』も、騎士の青年の言葉には頷けるものがあった。

(確かに、あのチビはどうにも危なっかしいから、守ってやりたくはなるな)

 生まれ持った性分故に警戒心を解くことは無い。

 しかし、血と死の匂いしかない魔窟に飛び込んでくれた他人でしかない彼らは信頼に値する、と『鴉』が考えを纏めた時だった。


「……支度は済んだ。そろそろ作戦に戻ろうか、少年。君の自省も終わったようだからな」

「…………。えらく時間をかけてやがるなと思ったら、計算ずくかよ」

 ヴァイスリヒトからそんな言葉を掛けられて、少年は苦笑する。

 どうやら内心で考え込んでいた悩みを見抜かれていたらしい。

 幼女に倣って「さすがは騎士殿」と言うべきか。

「気遣ってもらったようで悪いな。オレはもう大丈夫だ。敵と味方の判別はついた」

「そうか。……では、子供たちを探しに行こう。こうしている間にも、彼女は独りきりなのだから」

「あ、そうか――悪い。そうだよな、チビが頑張ってくれてるんだ。ガキども解放して、チビのところに戻ってやらねえとな」

 そこまで言ってから、『鴉』はヒューグウェンリルの方を見る。

「オマエも黙って待っててくれて、ありがとな。こっからは真剣に動くから任せてくれ」

 皮肉でもなく素直な言葉を告げれば、ヒューグウェンリルが目を丸くしたがすぐに冷めた表情に戻って背を向ける。

「無駄口は結構です。……彼の方の敵にさえならなければ、私から何かすることはありませんので、どうぞご自由に」

 態度は依然として素っ気ないものの、丁寧な口調でもって返されたそこに冷淡な敵意はない。

「では、館主殿から得た情報を頼りに子供たちを全て救い出そう」

 ヴァイスリヒトの言葉を合図にするかの如く、音も無く部屋を出た三人は再び緋色の廊下へ身を滑らせた。



 ◇  ◇  ◇



(……まさか私の方でも見つけてしまうとはなあ)

 子供を装い見事に大人を欺いた結果が、ミゼラティの前にあった。

 中程度の獣を入れる檻の箱が、数えて三つ。

 一つの檻に、子供が三人。押し込められて、泣いて――は、いない。恐らくは散々に鞭を振るわれたのだろう。

 一泣きするごとに、何振りか。それですっかり大人しくなってしまった子供たちが、そこにいた。

 みんな一様に膝を抱えて蹲り、顔を伏せて震えている。

 身なりは整えられているが、何の役にも立っていないことは子供たちの様子から窺い知れた。

(こっちが「宴」用か……それにしても、九人も子供を弄り殺す気で――……ん? 隅の方にもう一つ檻が……)

 顔を顰めて部屋を見回していたミゼラティは、忘れられたようにぽつんと置かれた檻を片隅で見つける。


(こちらにも子供が……一人だけ、か。なんでまたこんな隅の方に、別に置かれて――?)

 子供はミゼラティに背を向けた格好で座っているので、様子が良く窺えない。

 それ故にミゼラティはそこへ近づき、子供に声を掛けようと檻に触れた――その手を、掴まれた。

「なっ……!」

 子供はいつの間にかミゼラティの真正面にいて、檻越しに見つめ合う格好となる。


「遅かったじゃないか。待ちくたびれたよ」

 紅玉を思わせる美しい色を持った髪をなびかせて、見知らぬ子供が鮮やかに笑いかける。



隠れたる罪は顕われての罰

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