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ヨゲンジャーズ/YOGENGERS

作者: 近澤史

ある日、突然集められた”預言者”たち。彼らに託されたのは世界の命運だった!?

彼らは迫り来る“大魔王”を倒すためにチームを結成する。

その名も・・・

『ヨゲンジャーズ/YOGENGERS』

第一章 予言

第二章 未来を視る者

第三章 同じ

第四章 集結

第五章 過去

第六章 アカシックレコード

第七章 前夜祭

第八章 ヨゲンジャーズ

第九章 大魔王降臨

第十章 勝利

第十一章 誕生日



第一章 予言


 「恐怖の大魔王がやってくる」

 本棚の前に立っているスーツ姿の男はそう呟いた。その本棚がある部屋の壁は石でできており、日が当たっておらず、明かりにはろうそくが使われていた。言葉にできないような圧迫感があった。

「先代の無念を晴らさなければならない」

 男は決意に満ちた表情でそう言った。その直後、男のポケットの中にあるスマホがブーっと鳴った。

「ああ、私だ。どうした?・・・うん、わかった。今すぐに行く」

 男はそう答え、その部屋から出ていき、もう一人の秘書のような男とともに車に乗った。

「アトスさん、何か手掛かりは見つかりましたか?」

 運転しながらもう一人の男は言った。

「いや、見つからなかった。どの本にも詳しいことは書かれていなかった」

「そうですか・・・。ですが、ご安心ください。〝先代の片割れ〟がインドにいるという情報を入手しました。」

「そうか!でかしたぞ、エリック」

 アトスはガッツポーズをしながらそう言った。その後、アトスとエリックを乗せた車は空港に着いた。二人は慣れた手つきで飛行機のチケットを機械に読み込み、荷物点検を終え、飛行機に乗った。

「よし。これで全てのピースが揃うことになる」

「やっとですね、アトスさん」

 二人の表情は長年の努力が報われたかのように明るくなっていた。しかし、二人の表情はすぐに険しくなり、次なる目標へと進んでいった。


第二章 未来を視るもの


 アトスとエリックは深夜のインドに着いた。

「アトスさん、そろそろ待ち合わせの時間です」

 彼らが今いるのは深夜に営業しているバーだ。バーの周りの様子は真っ暗で、人けがなく、明かりは街灯一本だけである。そして、そのバーはとても奇妙な場所にある。その場所というのは自販機の中だ。正確にいうと、自販機が扉となっており、決められた、回数・位置のボタンを押すとその扉が開く。おそらくそこは一般人では出入りできないバーだろう。それを示すかのように、バーテンダーのいる後ろの棚には見るからに高級そうな酒が置いてあり、壁には猟銃のようなものが飾ってある。

そして何より一番気味の悪いものがある。それはダーツの的に刺さっているナイフだ。普通、ダーツに使われるのは小さい矢だが、ここではナイフだ。そのナイフには赤い液体が固まったかのような跡がみられる。

そのバーの雰囲気はインドではなく、まるで中世ヨーロッパのようであった。

「さすが元CIA職員だ、スティーブ。いい店を知っている」

 ワインを飲みながらアトスは言った。

「まだ仕事中だろ、アトス」

 呆れた表情でスティーブは腕時計を見た。

「では、そろそろ彼を連れてくる」

とスティーブは言い、来ている黒色のスーツを整え、そのバーを出ていった。

 数十分後、彼はオレンジ色のターバンを被ったいかにもインドという30代くらいの男を連れてきた。

そして、スティーブ、アトス、エリックは彼に目を合わせ、アトスが先に話し始めた。

「悪いな、こんな夜遅くに出向いてもらって。申し遅れた、私の名前はアトス・ダム、ノストラ財団10代目会長だ。」

「どうも、アトス会長。私の名前はルドラ・アナンド。元インド陸軍少尉です。そして、お気になさらず、こういう場は慣れておりますので。この店だって来るのは三回目ですから」

 ターバンを巻いた180cmくらいの男はこの状況に戸惑わずにそう応えた。アトスは、彼の優しい声のおかげで少し緊張が解け本題を口にした。

「信じられないかもしれないが、君はノストラダムスの生まれ変わりの一人で・・・」

 アトスが話を続けようとしたその時、ルドラがその話を遮りアトスの話をルドラが続けた。

「〝あなたは六つに分裂したノストラダムスの生まれ変わりの一つであり、この地球をノストラダムスが予言したあの『大魔王』から守らなければならない。だから力を貸してくれ〟ですよね?アトスさん」

 ルドラは自信満々にアトスの目を見た。

「おおお、さすが、インド一の予言者。やはり見ておられましたか今日のことを」

 アトスは驚きつつも、納得した様子でルドラにそう言った。

「はい、ちょうど一週間前にこのヴィジョンを夢で見ました。一緒に世界を救うために戦いましょう、アトスさん、エリックさん。そして、僕と同じミスタースティーブ!」

 4人は固い握手を交わし、酒を飲んだ。そして、カレーとナンを食べた。


第三章 同じ


 ルドラはインドからアメリカ行きの飛行機の中で、窓を見ながら考え事をしていた。アトスとエリックはルドラから見て右斜めにある席に座っている。二人は隣同士で、今はぐっすり眠っている。スティーブがトイレから戻ってきてルドラの隣の席に着いたとき、キャビンアテンダントが、飲み物はいかかですか?と聞いてきた。スティーブはコーヒーを二つと言い、コーヒーを二つもらった。

「今更だが、ルドラ、お前コーヒー飲めるか?」

「ああ、もちろん。ありがとうスティーブ」

 スティーブは左手にあるコーヒーをルドラに渡した。その後、スティーブはルドラにこう質問した。

「どうした、ルドラ。さっきまであんなに元気だったのに。何か悩み事でもあるのか?」

 ルドラは小さくため息をついて、答えた。

「さっき世界を救うために戦おうと言ったけど、僕はもう戦えないかもしれないんだ」

「ほう、なるほど。なぜだ、ルドラ?」

 スティーブは彼に聞き返した。

「僕は世界を救うために軍に入ってたんだ。力を持てば世界を救えると当時は思っていた。でも、救えなかった。」

 ルドラはコーヒーを一口飲み、話を続けた。

「僕はいつ世界を救えるんだろうと思いながら、戦い続けた。でも気づけば世界を救おうとしていたのに人を殺していた」

 ルドラは固くなっていた体を縦に伸ばし、時折、窓ガラスに映った自分を見つめながら再び口を開けた。

「そしてある日、敵の攻撃を受け意識不明になった。二週間ほどの治療を終えた次の日、夢である光景を見たんだ。その光景は北のほうで国と国どうしが戦っていた。そして、それは一週間後現実となった。それからというもの夢で見たものがほとんど現実となっていった。そこで僕は確信した。これは予知夢であり、戦いに救いはないと。それで僕は軍をやめ、夢で見たものを予言として世界にSNSを通じて広めている」

 それを聞いたスティーブは大きく頷き、ルドラの肩を軽く叩いた。

「お前の言うとおりだ。争いは何も生まない。だが、ここから先は否が応でも〝大魔王〟と呼ばれる謎の存在と戦うことになる。それでもお前は一緒についていくか?」

 スティーブは険しい目つきでルドラに言った。それはルドラをためしているかのようであった。ルドラはそれに屈せずに答えた。

「僕はこの力に目覚めてから戦うことを拒絶した。でも、世界を滅ぼす何かが現れたのに対処せずにいるのはごめんだ。だから僕は今度こそ世界を救いたいんだ」

 スティーブはその決意に満ちた瞳を見て、こう言った。

「お前はそういう人だと思っていた。ともに救おうこの世界を」

 スティーブはコーヒーを一口飲んだ。

「ちなみに、私もお前と同じような葛藤があった。だから〝元〟CIAなんだ。」

 スティーブは「元」という単語を強調した。

「そういえばルドラ、お前いくつだ?」

「今年で39」

「私は55だ。私もお前と同じように10歳以上年が離れている人から諭されたことがある。やはりお前がバーで言ったように私と君は〝同じ〟のようだな」

 二人は静かな機内の中で小さく笑った。


第四章 集結


 アトス、エリック、ルドラ、スティーブを乗せた飛行機はアメリカのカルフォルニア州に着いた。彼らはアトスの車に乗り、ノストラ財団本部へと向かった。ノストラ財団本部は四百メートルほどの高層ビルで、ビルの真ん中には木々が生い茂った中庭があり、日光浴ができそうなバルコニーもある。

「おお、これがノストラ財団の本部か」

 ルドラはその高いビルを見上げながら言った。彼らはビルの中に入り、5階の会議室に向かった。そこには4人ほどの人がいた。

「お前たち、新入りだ。とうとう揃ったぞ、片割れが。エリック紹介してくれ」

 アトスはその4人とエリックに向かって言った。エリックは頷き、紹介した。

「まず、この赤いワイシャツを着た男性が、エドワード・ライノス。現役の脳科学者です」

 彼はそう言いながら、英国紳士風の男に手を指した

「よろしく、ルドラ。共に世界を救おう」

 エドワードは明るく微笑み、低い声で言った。

「続いて、こちらの白衣を着た女性が、ジャスミン・ハーバー。エドワードと同じく脳科学者です」

彼女は鼻筋が通っており、聡明そうな顔立ちでどこか不機嫌そうだった。

「よろしく、ルドラ」

 ジャスミンは冷めた口調で言った。

「そして、こちらの黒いローブを着た女性はエリヤ・カリノフ。本物の魔女です」

彼女の身長はルドラより10cmほど低く、大学生くらいの雰囲気があった。

「よろしく、ルドラ君!」

 笑顔で明るい口調で言った。

「そしてそして最後、こちらの男性はかの有名なノアの箱舟伝説に出てきた、救世主ノアの末裔、ノア・オプティマスです」

 彼は赤紫色のローブを着ていて、髪が肩まで長く、この世の全てを知っていそうな貫禄があった。

「よろしく、ルドラ・アナンド元陸軍少尉。」

 どこか重みがあり、落ち着いた声だった。

「こちらこそ、よろしくお願いいたします。なぜあなたは僕が元陸軍だったことを知っておられるのですか?まだ話してもないのに・・・」

 ルドラはなんだかぎこちない声でそう言った。

「ははは、そんなかしこまるのではない、ルドラよ。お前さんのことはこの水晶玉に映っておる」

 手に持っているサッカーボールくらいの大きさの水晶玉を見てそういった。ルドラはノアの優しい声で緊張がほどけた。

「じいさん、まだ生きてたのか」

 とスティーブが突然、爆弾発言をした。

「ちょっとスティーブ、今の発言を取り消しなさい!ノアに失礼でしょ!」

 エリヤが声を荒げながら、スティーブに言った。

「ハハ、私は気にしていない、エリヤ。こいつとは長い付き合いだからな」

 スティーブはそれを聞いて、鼻でフンと笑った

「ルドラ、騒がしくて悪いな」

 アトスは申し訳なさそうに言った。

「大丈夫ですよ、アトスさん。僕はこういう空気好きですから」

 ルドラは笑顔でそう言った。

「ったく。ばかばかしい」

 突然、ジャスミンはそう呟いてこの場を離れた。それを見てエリックはエドワードに質問した。

「彼女は予言について信じるようになったか?」

「いえ、でも彼女なら大丈夫ですよ。彼女はちゃんと自分の役目を理解しているはずですから。心配無用です」

 エリックはそれを聞いて安心し、そうか・・・と呟いた。


第五章 過去

  

 翌日、アトスとエリックは彼らを会議室に呼び集めた。

「皆に話がある。なぜ我々は皆を集めたのか、目的は何かって話だ」

 ルドラ、ノア、エリヤ、エドワードは椅子に座り、ジャスミンは後ろの壁に寄りかかって、腕を組んでいる。そして、スティーブは斜めに向いているテーブルに寄りかかって座った。エリックはアトスのパソコンを操作をしてアトスのプレゼンを手伝っている。そして、アトスは話し始めた。

「私はあの有名な大予言者ノストラダムスの子孫だ。初代ノストラダムス家の長男は神と契約し、予知の力を手にした。その力は代々ノストラダムス家の長男または長女だけに受け継がれた。しかし、その代償に神は6年ごとに魔王と呼ばれるものを人間界に送り込んだ。その魔王は時代によって姿形、強さまでも変化した。あるときは猛獣、あるときは海の蛇、あるときは龍。先代たちはそれらを自分たちの力で倒した。その魔物たちは世界を破滅させる力を持っているからだ。そして、何百年がたち西暦1523年54代目ノストラダムスにその番が回ってきた。だがそのとき彼は病気で、戦える様子でなかった。だから、神と契約し自分自身の余命を削ることで、先送りした、この時代に。自分を転生させて」

 それを聞き、エドワードがアトスに質問をした

「他の人の力で倒せなかったんですか?」

 アトスは答えた。

「ええ、奴らを倒すことができるのは、予知の力を持った者だけです。残ってる文献によると、過去にノストラダムス家の人間ではない者が魔王を倒したそうなんですが、その1年後にまた魔王が出て来てしまったようです。おそらく、最低でもトドメはノストラダムス家の者が刺さないといけないそうです。そして、あなたたちは54代目ノストラダムスの生まれ変わりであり、実質ノストラダムス一族、6人で1人です。だから私たちはあなたたちを招集したのです。それに私はあなた達とは違って戦えませんから」

 エドワードに続いてエリヤも質問した。

「ねーアトス、魔王はなんで時代ごとに姿が違うの?」

「詳しくは分かりませんが、一説によると、その時代の人々が恐れるものだとか」

「アトスよ、どのようにしてその魔王とやらを倒すのだ?に何か算段はあるのか?」

 ノアは険しい顔でアトスに言った直後に、スティーブが少しキレ気味にこう言った。

「そうだ、そこのじいさんと魔女っ子を除いて俺達は一般ピーポーだ。どうしろってんだ」

 「正直言ってありません、見つからないんです。あまりにもその話が突拍子のないことだったため、それについての文献が捨てられた可能性があり・・・」

 とアトスの話を遮るようにジャスミンが口を大きく開けた。

「はぁ?倒す方法がないの?どうしろっていうの?私たちはあんたの都合で集められてるんけど。それで集まった結果、対抗策がありませんでした?ふざけんじゃないわよ!そもそも本当にそんな魔王が現れるのかもわかんないし・・・」

 黙っていたジャスミンは今まで溜まっていた不満を爆発したかのように怒鳴った。

「落ち着け、ジャスミン」

 エドワードが制止に入った。

「で、結局どうするんですか?アトスさん。情報ならスティーブに聞けば何かしら・・・」

 ルドラがそう言った瞬間、それを遮るようにスティーブが言った。

「ない。私も調べたが、ノストラダムス関連の情報はあまり無かった。ほぼゼロと言ってもいいだろう」

「そんな・・・」

 ルドラは頭を抱えて下を向いた。

「正確に言うと、その情報はある」

 ノアがそう言った瞬間周りの視線がノアに集中した。

「そ、それは、い、いったいどこにあるんですか?」

 エリックはその発言に驚いたのか、声が震えた。

「そんなに驚くでない、エリックよ。その情報はアカシックレコードにある」


第六章 アカシックレコード


「アカシックレコード?それは一体何ですか?」

 アトスが驚きながらノアに質問した。ノアが口を開こうとした瞬間スティーブが答えた。

「アカシックレコードっつうのは過去・現在・未来のすべての情報が入っているハードディスクのようなものだ。だろ、じいさん」

「ああ、そうだ。そこにアクセスすれば昔の出来事を確認することができる。ちなみに、アクセス出来る者は予知の力をもった人のみだ」

「でも、アカシックレコードへのアクセスは代償が伴うって私の祖父は言ってたけど・・・」

 とエリヤは首を傾げて言った。

「見るだけなら、そこまで問題ない」

「でも、どうやってそこにアクセスするんだ?」

「瞑想だ」

 ノアのその発言には妙な説得力と安心感があった。

「ではその時に、あなたの脳波をスキャンさせてくれませんか?」

 脳科学者としてエドワードはノアにそう言った。

「かまわん」

 数日後、ノアは研究室に連れていかれアカシックレコードへのアクセス準備をしていた。

「ノアさん、準備はよろしいですか?」

「よい」

ノアの頭部には半球状の機械がついている。その機械には無数の赤色や青色のコードがつながれており、そのコードの先には強化ガラス付きの壁がある。ガラス越しに、エドワードが座っており、ジャスミンはエドワードの横で機械を操作・点検している。他の5人はエドワードの後ろで壁に寄りかかりながらノアを見守っている。

「アカシックレコードにアクセスしたことある?」

 ルドラはエリヤにそう質問した。

「ないわ。そういえばルドラは、どんな感じで未来を視るの?」

「僕は夢で見てるよ。的中率は七割ぐらいかな」

「へえー、スティーブは」

「俺は毎晩、酒と女で酔ったときに視てる。質のいいやつだったら、的中率は十割だ」

「あーそう、あんたイカれてる」

 ジャスミンが作業をしながら呟いた。

「そういうお前はどうなんだ?」

「興味ない」

 彼女はそう言いながらテキパキと作業を進めた。

「そういえばアトスさんは、予知の能力を受け継いでいるんですか?」

 ルドラはアトスにそう言った。

「残念ながら、私はその力を持っていません。さっき言い忘れましたが、54代目ノストラダムスの息子にあたる人物が契約を解除したんです。つまりその人の代から予知の力を持つものはいなくなり、魔王も来なくなりました。54代目ノストラダムスのやつを除いて。そして、今まで襲名式だったノストラダムスの名を捨てたんです」

「じゃあ、つまり今回のを倒したらハッピーエンドってことか?」

「はい。そしておそらく、彼が残した最後の予言『恐怖の大魔王がやってくる』とは今回のことを指すと思われます」

「その予言はいつなの?」

「約一週間後の2025年7月25日午後6時30分、場所はここカルフォルニア州ロサンゼルス、このビルを含めた地域です」

「嘘だろ、ここが戦場か」

「ええ」

 それを聞いて、ルドラとエリヤは驚いた。そして、ルドラ達の会話の後、エドワードが

「よし、準備ができた」

と言った。

 それをスピーカー越しに聞いたノアは瞑想に入った。エドワードは目の前の機械やキーボードを使い、脳波をスキャンした。6人はガラス越しでノアのことを見た。

 約一時間後、ノアの瞑想が終わった。

「思ったより早かったな」

「ええ」

 スティーブとエリヤがそう話しているとき、ノアがエドワードに担がれて研究室から出てきた。そして、みんなに言った。

「過去を見てきた、魔王を倒す方法は、思ったより単純だった。渾身の一撃で屠ることだ。奴はどうやら、攻撃しても肉体を再生するらしい。つまりほぼ不死身だ。しかも、奴はアトスが言ったように時代ごとに強さを変える、つまり、その時代の世界のパワーによって変動し、現代では言わずもがな。相当強い」

 それを聞いた途端その場にいる全員が驚いた

「マジかよ・・・」

「それって、めっちゃ強いってことでしょ?」

「おい、じいさんそれはどこぞの漫画だ?」

 スティーブは呆れてそう言った。

「事実だ」

 ノアが真っ直ぐな目でそう言いスティーブは青ざめた。

「し、正直に言って、このメンバーでそいつに勝つのは厳しいんじゃないか?」

 エドワードは諦めた表情で言った。

「エリヤとアトスの魔法はどれくらい強いんだ?」

 ルドラはエリヤとノアにそう質問した。

「私は全然強くないけど、ノアは結構強いよ」

「そうなのか?じいさん?」

「まあ、そうだな。ただ、流石に最初から一撃では屠れない。だから、力を合わせて奴を削り、最後の最後で私の魔法で再生出来ないくらいのダメージを負わせる。これが今のところの最善策だ」

「よし、その作戦でいこう」

 ルドラがそう言うと、全員不安ながらも頷いた。


第七章 前夜祭


 アカシックレコードにノアがアクセスしてから、6日が経った。翌日に魔王が現れる。そして、命を落とす可能性が極めて高い。その二つのことを胸に秘めながら、前日を迎える。

「ジャスミン調子はどうだい?」

 エドワードはジャスミンをディナーに誘った。

「良いわけないでしょ。明日命を落とすかもしれないってバカげてる。そもそも何であんな予言のために・・・」

「君も見ただろ、ノアの脳波を。あれは普通じゃない。しかも君と僕を含めた、6人の脳波も調べたところ明らかに一般人の脳ではない。しかも、君も経験上わかってきてはいるんだろう、その力のことを」

「でも、未来が見えるなんて、今でも理解できないし、未来なんていくらでも変更できる」

「でも今回の件に関しては事前の行動だけではなにも変わらない。その現場を目撃しなきゃ何も始まらない。君も科学者ならわかるだろ」

「考えておくわ」

「そうか、ではもう一つ君に考えてほしいことがある。予言を信じるか自分を信じるか。答えは現場で聞かせてくれ。この話はこれで最後だ。ディナーを楽しもう」

 一方ノアとエリヤはノストラ財団のビルの中庭にいた。

「ねー、ノア。魔王はどういうの能力なの?」

「過去を見てきた限り、回復、衝撃波、雷、召喚などたくさんの能力を使ってくる」

「なるほど・・・。じゃあ明日のために、私の魔術の練習に付き合ってくれる?ノア?」

「もちろん」

 ルドラとスティーブはカレーの専門店にいた。

「アメリカで食べるカレーもうまいな」

 ルドラはナンにカレーをたくさんつけて食べていた。

「ああ」

 スティーブはルドラがナンを飲み込んだのを見計らって言った。

「正直、お前はどう思う。結局、世界を救うためには犠牲を伴う。多少一般人も巻き込まれるかもしれない。俺達の命もな」

「僕はもうそういうことに慣れてるよ。でも、自分ではない人が犠牲になって誰かが救われるよりも、自分が犠牲になって誰かが救われる方が自分としては後味がいい。今回の戦いでは僕たち以外、いや、僕以外の犠牲者をできるだけ出ないようにしたい。だから、僕は、僕だけはこの戦いに命をかけて行きたいんだ」

「いいスピーチだ、相棒。だが、俺達はチームだ。勝手に死に急ぐなよ」

 ルドラは彼の言葉に感銘を受けながらも、いつから俺はあんたの相棒になったんだと一瞬疑問に思い、相棒も悪くないなと感じながらラッシーを一飲みした。口の中がさっぱりした。


第八章 ヨゲンジャーズ


 ついにそのときが来た。

「午後5時30分!大魔王襲来1時間前!戦闘範囲封鎖及び一般人の避難完了!」

 ノストラ財団に支えている米軍兵がアトスに無線通信をした。

「よし、エリック戦闘準備だ!」

 アトスはそう言い、エリックのいる司令室へ向かった。

「分かりました。まさか、このノストラ財団のビルを中心とした半径2kmの範囲がノストラ財団の所有地だったなんて」

 エリックはそう言いながらルドラ達の元に向かった。

「これは一体?」

「これは我が財団が開発した特殊スーツです。この上からいつもの服を着ていただいても構いません。あ、でも、ルドラさんには専用の服があります」

 この特殊スーツは、伸縮性、耐久性が高く、防弾ガラス50枚分の防御力を有している。エリックは彼らにスーツと小型無線機を配り、ルドラには軍服のような服も渡した。

「なかなかカッコイイな」

 ルドラはその服を気に入った。

「それにしても、まさか軍隊がいるとはな」

 スティーブは服に着替えながらそう言った。

「あれ、ジャスミンさんは?」

 エリックが辺りを見回しても彼女の姿はなかった。

「心配入りませんよ、エリックさん。彼女は自分を信じただけです」

「俺達でケリをつけよう」

 エドワードとスティーブは彼女を責めなかった。

「エリヤ、魔法の調子はどうだ?」

「全然大丈夫よノア、あなたは?」

「久方ぶりに本気を出させてもらう」

 ノアとエリヤも準備万端である。

「アトス会長、後20分です。」

「わかった、総員持ち場に!」

 各隊員は一斉にイエッサー!と返事をした。そして、彼ら5人は魔王が来るであろう場所で待機している。

彼らと米兵たちのいる位置は500mくらい離れている。その理由は、彼らの戦いを妨げないためだ。これはルドラの案でもある。ルドラはこの緊迫した状況の中、ある提案をした。

「なあ、そろそろ俺たちのチーム名が必要なんじゃないか?」

「予言機動隊なんてどうだ?」

「エドワードはネーミングセンスがないな」

「じゃあ、スティーブお前が決めろ」

「いいだろう、俺たちは・・・『ヨゲンジャーズ』だ!」


第九章 大魔王降臨


 午後6時30分、スティーブがヨゲンジャーズと言った瞬間、ヨゲンジャーズの背後に紫色と黒色の細い雷が束になって落ちてきた。その雷はバリバリと大きな音を立てており、禍々しいオーラを放っている

「来たぞ!」

 ノアは険しい表情でそう叫び、両手を胸の前にかざし、手で円形を型取りその円形の中から水晶玉のようなものを出した。水晶玉には蒼い稲妻がほとばしっていた。エリヤもそれに反応し、手から緑色のエネルギー体を出し、落ちてきた雷にその手を向けた。

それに続き、ルドラ、スティーブは持っていた拳銃をノアたちと同じ方向に向けた。エドワードは左耳にとある装置をつけ、そこから機械がガチャガチャと変形しながら出てきた。機械は彼の頭部を覆い、彼は両手を伸ばし、手のひらを広げ、皆と同じ方向に向けた。


 この間1.53秒。


 雷が落ちて1.53秒後に雷の中から灰色のパーカのようなものを着た大柄で、2mほどの大男が出てきた。彼はフードを深く被っている。

「私が大魔王だ」

 彼は低い声でそう言った。

その瞬間、魔王を中心とした半径50mの範囲に紫色で半球状の衝撃波がヨゲンジャーズを襲った。彼らは数メートル飛ばされたが特にケガはなかった。

 「くらえ!」

 ノアは水晶玉を魔王に向けて電気をくらわせた。それを見てエリヤも緑色の光線のようなものを魔王に向けて発射した。魔王はそれを弾くかのように腕を胸の前でクロスして勢いよく広げた。

「ならばこちらも!」

 だが、衝撃波が飛んできたかと思えば、衝撃波は魔王に跳ね返った。

「ぐっ!なんだこれは!」

「見たか、これが疑似念力装置の力だ」

 エドワードは冷静な口調で言った。先ほど、エドワードの頭部を覆ったのは彼が5年以上かけて作った『疑似念力装置』だ。脳波を増幅させて念力能力の使用を可能にする。

 ノアとエリヤは魔王に畳みかけた。だが、魔王はすぐに対応し打撃を繰り出した。

「おらぁ!」

 それを見てスティーブとルドラも銃で応戦する。

「くそっ!拳銃じゃきかねぇ!」

 魔王にとって、飛んでくる拳銃の弾は豆粒同然だった。

ルドラは右ポケットから二回りほど大きい高威力の銃を取り出した。

「これでもくらえ!」

 ルドラが打った弾は魔王の右肩に風穴を開けた。

「ぐはっ!ッッッツ!!」

 スティーブはそうこうしているうちに瓦礫に身を潜め、内ポケットから、黒い金属製の箱のようなものを取り出した。手のひらよりは二回りほど小さい。それを持っていた銃に取り付け、右耳に付いている小型無線機でノアに連絡した。

「じいさん、今俺はあんたの30m後ろにいる。あと30秒したら、超小型ミサイルをぶっ放す!!」

「わかった」

 ノアはそう言って、魔王にできるだけの攻撃をしたら、ルドラとエリヤ、エドワードに向かって避けろと叫んだ。魔王はそれに気づいたが、時すでに遅くミサイルが魔王の胸元に着弾した。

「なに!?」

 魔王は今まで感じたことのない痛みに驚いた。それを見たエドワードは念力で瓦礫を操り、爆風から皆を守った。

 ちょうどその時、エリックの指示のもと約200人の米兵が現場に到着した。魔王は爆弾が当たった為、身動きが取れず、右腕、左足が吹き飛ばされていた。

だが、5分もしないうちに魔王は立ち上がり、フードを取った。その顔は赤く爛れていて、流血しており、歯ではなく牙、そして頭部には日本の鋭い角が生えていた。それは大魔王そのものだった。そして、魔王の腕、足はみるみるうちに再生していった。

「反撃だ」

 魔王は左腕を挙げた。すると、地面から空に向かって無数の紫色の雷が放たれ、そこから岩でできたモンスターが数千体現れた。

「ぐぉぉぉ~~!」

 米兵、ヨゲンジャーズはそれらに向かって攻撃した。

「多いな!」

 ルドラは少し切れ気味に言い、十発撃った中で八発外した。

「腕がなまったかルドラ。これを使え、マシンガンのアタッチメントだ」

 スティーブは金属製の黒い箱をルドラに投げた。ルドラはそれをキャッチし銃に取り付けた。

「エリヤ、溜めて下に打て」

「わかってるって・・・!」

 エリヤとノアは下にエネルギー波を打ち、モンスターを駆除していった。

 一方エドワードも巧みに念力を操り、モンスターを一ヶ所に集め、圧縮し、弾丸のように飛ばして魔王を攻撃した。

「ぐはっ!ならこちらも!」

 魔王はエドワードの元に高速で移動し、彼ををにらみ、右足で蹴り飛ばした。

「よくも、俺の体を!」

 エドワードは10m以上飛ばされたが、ノストラ財団の特殊スーツのおかげで助かった。

「エドワード!今行く!」

 ノアは水晶玉を魔王に投げたが、彼はそれをスレスレで躱した。

「フンッ!」

 だが、水晶玉はブーメランのように動き、魔王の顔面に直撃した。その瞬間、魔王には数万ボルトの電気が流れた。

「ぐあああああああああ!」

 ノアはその隙を逃さず、作れるだけ水晶玉を作り、魔王にたくさん投げつけた。魔王はそれを笑顔で躱し、電流にも耐え、自らも雷で球体を作り出し、投げ合いになった。

「この老いぼれが~~。死ね!!!」

 15分後、ノアの方が先に消耗したのか、水晶玉がノアに直撃した。その衝撃と電流でノアは気絶した。

「ノア!」

「じいさん、嘘だろ」

 それを見たエリヤとスティーブは魔王に攻撃をしたが、モンスターに邪魔をされて、攻撃が通らない。そんな中、エドワードは集中力が途切れ、脳波が弱まっていき、モンスターに腕を掴まれた。モンスターの握力は強く、腕が砕かれそうだった。

「クソッ!ここまでか!」

 ルドラとスティーブも玉切れを起こし、米兵の大半がやられ、戦局が圧倒的不利になった。

 すると突然、無数の青色の光の玉が現れ、モンスター達を一斉に殲滅した。ヨゲンジャーズと魔王は一体何が起こったのかわからなくなった。

「これは一体・・・?」

 すると、一人の女性がエドワードの前に背を向けて立っていた。

「エドワード、仲間を信じることにした」

 その女性は黒い袖のない服を着ておりズボンにはジーンズ、両腕には謎のバンドを付けている。

「ジャ、ジャスミン!?」

 あまりの驚きにエドワードは裏声が出た。

「エリヤ、今行く!」

 ジャスミンが付けていたバンドからは先ほど、モンスターを殲滅した青色のエネルギー弾が出てきた。

「はぁっ!」

 それは魔王の右足にあたり、右足を吹き飛ばした。

「ジャスミンって意外と強いのね」

 エリヤは感心したようにそう言った。ジャスミンとエリヤは魔王を攻撃し続けた。

「小娘が!」

 魔王は再び衝撃波を出し、エリヤとジャスミンを吹き飛ばした。

そして、手から無数の黒い雷を放った。

「「「「「「ぐあっっっ!!!」」」」」」 

 ヨゲンジャーズはそれに直撃した。彼らは痺れて動けない。

「お前らに俺は倒せない」

 そう言いながら、魔王は先ほどよりも、更に大きいモンスターを次々と生み出し、空から無数の雷を落とした。その雷は束になって、ヨゲンジャーズに襲いかかった。ヨゲンジャーズはその瞬間、死を悟ったが、ノアが気絶から復活し、他5人を大きいバリヤで守った。

「みな、生きておるな」

「ノア」

「じいさん」

「みな、思い出せ。我々は”預言者”だ。すなわち未来が視える。彼の攻撃を読むんだ」

「でも、この力は急には使えない」

「そうよ、突発的に来るのよこれは・・・」

 ルドラとエリヤは苦しい顔でそう言った。

「視ようとしなければ視えるものも視えない。このバリヤはあと数秒で破壊される。あとは分かるな?」

 彼らはその言葉を聞き、深く息をした。そして、目の色を変え、まっすぐ魔王に視線を移した。

「まだわからんのか」

 魔王はため息をしながら、そう言い、無数のモンスター、雷の槍をヨゲンジャーズに向けて放った。だが、なぜか彼らには当たらなかった。

「まさか!」

 魔王は大きく目を開いた。

「視ろ!視るんだ!」

 ルドラはそう自分に言い聞かせた。ヨゲンジャーズは魔王の攻撃を躱し、モンスターを次々と倒していった。

「くらえ!!」

 ルドラとスティーブは二丁の銃をリロードし、的確にモンスターの頭を撃ち抜いていった。

「おい相棒、視えるな未来が」

「ああ。来るぞ!右だ!」

「おおっと、当たらないね〜」

 ルドラとスティーブは軽い笑みを浮かべ、互いの背中を合わせ、向かってくるモンスターたちを次々に倒していった。

「この戦いが終わったら、ラスベガスに行こう」

 スティーブはそう言い、グレネード爆弾をモンスター集団に投げ入れた。

「おい、スティーブ、死亡フラグビンビンだぞ」

 ルドラとスティーブを爆風から守るために、念力で守ってくれたのだ。

「ったくビンビンなのはアソコだけにしてくれ」

「エリヤ、ノア!モンスターは私達に任せて、先行って!」

「ありがとう、ジャスミン」

 ルドラ、スティーブ、エドワード、ジャスミンは背中を合わせ、円陣を組み、モンスターたちに立ち向かった。

 ノアとエリヤは魔王に猛攻をしかけた。

「小娘が!何度も言わせるな!」

 魔王は瓦礫を球状にし、エリヤにぶつけた。

「うわっ・・・って残念。あなたの攻撃はお見通しよ」

 エリヤは緑色の縄を作り、カウボーイのように投げ、魔王の右腕に引っ掛け引っ張った。その腕をノアは蒼い閃光を纏った手刀で切り落とした。

 「ぐあっ!!おのれっ・・・!!」

 魔王は左手で、地面を思いっきり殴り、クレーターを発生させ、ノアのバランスを崩し、彼の腹を目掛けて重い拳を入れた。

「ぐはっ!!」

 ノアはうずくまり、口から血を吐いた。

「ノア!!」

「大丈夫だ、攻撃を続けろ」

 エリヤが構えた瞬間、彼女の体が一気に硬直した。

「視えたか。そうだお前の予想通り、俺はお前が攻撃した瞬間、この動けなくなった老人を殺す」

 エリヤは悔しい表情をし、思いっきり唇を噛んだ。

「確か、ノアと言ったか、お前?お前もおそらく視えるんだろ未来が。だが、行動できなきゃ意味がねぇよな!」

 魔王はそう言うと、ノアの背中を力強く踏んだ。

「ぐがっ!!」

 エリヤは魔王を鋭く睨んだ。

「避けられる前に攻撃当てればいいだけのこと」

「エリヤ、やれ!!」

「でもっ!」

「まずは1人」

 魔王がノアにトドメを刺そうと、左手を振りかざした瞬間、左腕が吹き飛んだ。

「何!?」

「つまらん遺言を遺すなじいさん」

「そうだぞ、俺達は6人でヨゲンジャーズだ」

 ルドラとスティーブが魔王の左腕を撃ち落としたのだ。そして、エドワードが念力でノアを自分のところへ移動させた。

「大丈夫か、ノア?」

「遅いじゃないか」

「知ってたくせに」

 スティーブが呆れた顔で言った。

「次は私達の番よ。ありがとうエリヤ」

 ジャスミンはエリヤにウインクした

「みんな・・・」

 エリヤは少し泣きそうになった。

「くだらん真似事は終わりだ、人間ども!!」

 魔王はそう言い、黒色と紫色の雷を体中に纏わせ、一気に両腕を再生させた。

「終わりにしようか、行くぞ!ヨゲンジャーズ!!!」 

 ルドラの掛け声とともに、ヨゲンジャーズは戦闘態勢に入った。

「これでどうだ!」

 エドワードは力いっぱい振り絞り、あたりの瓦礫、建物までも巻き込み、その全てを魔王にぶつけ、金属パイプを折り曲げ、魔王の両腕、両足を拘束した。

「3・2・1発射!」

「くらえ!!」

 ルドラとスティーブは超小型ミサイルをぶっ放した。

「立てる、エリヤ?」

「もちろん!」

 ジャスミンは青いエネルギー弾を6つほど生成し、エリヤは指を器用に動かして、ヘビのような形の掌印を結び、二頭の龍のようなものを顕現し放った。

「ぐはっ!!!っああああああ!!」

 魔王の両腕、両足が粉々に散っていった。

「古の魔王よ、これで終わりだ」

 ノアは何やら呪文を唱え、魔王と同じく、雷を体中に纏い、腰を落とし、腕を上に大きく開いた。その瞬間、ノアの頭上に大きな蒼い太陽が現れた。

「散るがいい」 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁ゛あ゛あ゛あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ゛あ゛あ゛あ゛ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

魔王は周りの建物が壊れるくらいの音量の断末魔を叫んだ。

 そして、午後9時30分、ヨゲンジャーズはようやく魔王の討伐に成功した。


第十章 勝利


「か、勝ったのか?」

 ルドラは蒼く燃え栄えてる炎を見てそうつぶやいた。

「ああ、俺達、ヨゲンジャーズの勝利だ」

 スティーブは腰に手を当てながらそう言った。

「ノア大丈夫?」

 エリヤは心配そうに表情をしていた。

「少々、体を酷使し過ぎたみたいだ。だが、安心しろ」

 その言葉を聞いたエリヤは表情が少しゆるくなった。

「ありがとう、ジャスミン。来てくれて」

「別にいいわよ、こうして生きてるんだし」

 彼らがそう話していると、スーツを着た男が二人やって来た。

「皆さん、本当に倒したんですね」

「アトス!!」

「すいません、私達はただ見守っているだけで、何の役にも立てなくて・・・」

「そんなことはないですよ、あなたの力がなければこの世界はとっくに滅んでいた。、それに、ノストラ財団の兵士がいなければ、あの大量のモンスターを処理できなかった。あの兵士たちの動き、うまく連携が取れていた。あなた達の司令のおかげだ。彼らの犠牲なしでは、この勝利は語れない。こちらからも礼を言うよ。本当にありがとう」

「本当にありがとうございます、これで先代ノストラダムスの無念が晴らせました」

 アトスとエリックはルドラの言葉のおかげで、心の曇りが晴れていった。二人の表情は長年の努力が報われたかのように輝いていた。その表情が険しくなることは決してなかった。

 

第十一章 誕生日


 一ヶ月後・・・エリックとノア、スティーブはノストラ財団のビルの中庭でコーヒーを飲んでいた。

「怪我は治りました?」

「まぁ、大体な。流石にあの大出力の技は体に堪える」

「丈夫だなじいさん」

「心はまだ10代だからな」

 それを聞いたスティーブは薄い笑みを浮かべた。

「エリックよ、これからノストラ財団はどうなっていくんだ」

「他のメンバーには話したんですが、あなた達と協力して、この世界を迫り来る危機から守りたい。力を貸していただけませんか?」

「もちろんだ。お前もそうだろ?スティーブ」

「ああ、あとそういえばエリック、例の件だが・・・」

「はい、頼まれた調査ですね。今回の戦いのデータを詳しく調べた結果、なんと戦死者は0でした」

「よし、これでパーティーの飯は不味くなんねーな」

「では、そろそろ行きましょう。みんな、あなた達の帰りを待っています」

 エリックはノア達をビルの食堂に連れて行った。そこには、アトス、ルドラ、ジャスミン、エドワード、エリヤがクラッカーを持って待機しており、二人が部屋に入ってきた瞬間、彼らはクラッカーを発射した。部屋の真ん中には大きいケーキがあり、テーブルにはおいしそうな料理がズラッと並んでいた。そして、部屋の壁の上の方には派手にデコレーションされた横長の看板が掛けられており、こう書いてあった。

『BIRTH OF YOGENGERS』


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