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姉が悪役令嬢だった件  作者: おしどり将軍
銀髪の貴公子ジュリアン・ヨーク

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王太子の変化

「いよう、二人とも」


 入るなり、アーサー王太子はにこやかに挨拶してきた。


「ところで、ポピーはどこに?」


「あ、僕の部屋にいます。すぐに連れてきますよ」


「そうか」


 僕がノノアさんに頼んで連れてきてもらって、しばらくの間、姉の部屋でアーサー王太子は子猫のポピーと戯れていた。そのあと、ポピーはいつものように僕の膝の上に乗るとすやすやと寝はじめた。


「だいぶ慣れたみたいだな」アーサーは穏やかな顔をしてそう言った。


「ええ、今や我が家のアイドルですね」僕はポピーをなでながらそう答えた。膝から暖かさが伝ってくる。


「私が正式な飼い主なのに、なかなか寄ってこないのよね」


 姉は少しすねたような顔をしている。


「まあ、俺がこうして会いに来ているじゃないか」


「そうね、婚約阻止するまではつきあってあげるわよ」


「なんか、ひでぇな」


 アーサーはちょっとおどけたあと、真面目な顔でこう言った。


「来週、試練を受けることにした。それを報告に来たんだ」


 ◇


「試練とは魔の山の試練ですね。かつて、王位継承者を選ぶために実施していたという」


 僕がそういうとアーサー王太子はうなずいた。


「そうさ、そろそろ、自分の力を試して見てもいい頃になったと思う」


「そうですか、ついに」


「ちょっと本当に大丈夫なの?」

 姉は少し心配そうにしていた。


「ああ、剣術の方はジョージがずいぶん稽古をつけてくれて、だいぶ動きは良くなったと思う。それに魔術の方は最近だいぶ上達したんだ」


 あの王宮でのパーティに参加した後から、彼は魔法を本格的にやることにしたらしい。元々、初級呪文しか使えなかったらしいが、だいぶ習得は進んでいるという。彼にはもともと王家の血が流れているので、本気にさえなればなんとかなるものだったのだろう。


「お前のおかげだよ、ウィリアム」


「え、僕がですか?」


「ああ、この子を救ってもらった時、よく分かったんだ。努力というものは、普段からやっておかないと、本当に必要になった時に後悔するってね。あの時、俺は何もできなかった」

 アーサー王太子は猫のポピースヤスヤと寝ているところを見ている。


「そうですか」


 僕は改めて彼を見た。少し彼の表情が大人びて見えた。多分、彼はこれから、王に相応しい男になっていくのだろう。


「それより、魔の山って、本当に今は大丈夫なの?」


 魔の山。それはかつて魔王軍の重要拠点の一つでもあった。魔王が討伐された後、山頂にある砦は改修されて、魔王討伐の記念館となっていた。今では道もある整備され、付近に現れる魔物も年々少なくなっているという。


 魔王が拠点にする前から魔物がよく出るところで有名な場所だったので、魔王が出現する前は、王にふさわしいことを証明するために魔の山に挑んだという慣習が伝えられていた場所であった。


「今はもう、それほど強い魔物は出ないらしいよ。全くいないわけでもないけれど。まあ、少しは出ないと試練にはならないけどね」


「でも、王の息子って、あなただけなんでしょう。いくら危険がないからって言っても」


「まあ、試練といっても度胸試しみたいなもんよ。魔物が出たってやっつけてやるさ」


「油断していると足元すくわれるわよ。小物しか出なくても囲まれたら大変なんだから」


「よく、王妃様も許可出しましたね」


 試練はたった一人で受けにいくものだと聞いている。魔物が少なくなったとはいえ、道が険しい場所もあるし、何かしら危険があることには変わりない。


「まあ、俺の努力が認められたってことだろ。もしかして、心配してくれてる?」


「別に。あなたが死んだら婚約しなくて済むしね」


 姉は冷たく言い放った。


「ひでぇな、お前の姉さん」


「まあ、そうですね」


 そう言い合って皆で笑い合った。暖かな午後のひとときだった。


 ◇


「それで、いったいどういった試練なんですか?」


「ああ、試練の条件は、①頂上の砦にある印を一人で取りにいくこと。②誰かの助けを受けてしまった時点で失格となる。③その日のうちに帰還する必要がある。の三点さ。道が険しいところもあるから、急がないと間に合わない」


「結構大変ですね」


「だから、日が昇ってからすぐに出発して、日が暮れる前に帰ってくる必要がある。あまり暗くなると魔物が出るかもしれないしな」


「それで、試練を突破したら、王妃は本当に婚約阻止を認めてくれるのかしら」


「まあ、母さんは何でも一つだけ、いうことを聞いてくれるって言っていたからな。絶対に守らせるさ。俺もいつまでも子供じゃないんだ」


「任せたわよ」


「ああ、信頼して待っていてくれ」


 アーサー王太子は自信満々で、うなずいた。

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