作戦会議 2
王宮でのパーティが終わったある日、僕は姉の部屋に久々に呼び出された。
「色々とパーティのことを聞きたいのだけど」
僕はすぐにピンときて答えた。
「ジュリアンのことですね」
「まあ、ちょっと待ってて」
彼女はそういうと絵画のかかった壁の方へ向かった。そして、なぜか壁から飛び出しているレバーをグイと下に引くと、ガラガラと絵画が上に吊り上げられていった。
「だんだん、すごくなってますね」僕は素直に感動した。
「いちいち絵を外すの面倒じゃない。執事のヘンリーに頼んでおいたのよ」
「どうやってこんな仕組みを……」
彼女はニッコリと笑って、自分の頭を指さした。
「前世の叡智……ですか」
「もちろん」
彼女は満足げにうなずくと、バンと壁を叩いた。すると反転してホワイトボードが現れた。そこの仕組みは変わってないようだ。
ホワイトボードに書かれている四人の名前が書いてある。自分の方は変わってないが、他の3人の記載が変わっていた。
アーサーの横にはキープ❤️と書かれている。
ジュリアンの横には作戦進行中。
ジョージの横には『本日の議題』と書かれてあった。
「まあ、アーサーはもう大丈夫よね。婚約するにしろしないにしろ。もう敵対関係になることはないわ」
「そうですね」
「そこでまず、ジュリアンについて、聞きたいわ」
そこで僕はパーティで起こったことを短くまとめて話をした。姉はうんうんとうなずいていたが、僕がマーガレットを助けるくだりで、少し反応した。
「あなたが、彼女をいじめから助け出したわけね」
「ええ、まあ、結局エマさんが解決した感じですけど」
「ふーん、エマ・ウェイクフィールドに会ったわけね。あのウェイクフィールド家の赤い薔薇に」
「姉さんは親交があるのですか?」
「まあ、喧嘩仲間よね。会えばいつも喧嘩ばかりしていたわね。頭を打ってからは会ってはいないけど」
まあ、なんとなく喧嘩ばかりになるのは目に見える。頭を打つ前は本当に酷かったからな姉さん……。それに、エマさんの方もぜんぜん引かない性格のように見えたし。
「ジュリアンとも、彼の家族とも親交を結びました。あとは4年後までに、ブラッドフォード家と敵対関係にならないように関係性を深められればいいのですが」
「問題なのは、4年後までに何が起こるかよね。かなり憎まれていたようだし。でも、今のところそこまで嫌われている気はしないけど」
僕はジュリアンが姉のことを結構嫌っている話はしないでおいた。頭を打って以来、姉はだいぶ性格が丸くなったので、これから、少しづつ親交を深められれば、考えが変わるかもしれないと思ったからだ。
「それにしても、なかなか隅におけないわね。さすが我が弟」
「どういう意味ですか?」
なんの話をしているかわからなかったので、僕は聞き返した。
「エマ・ウェイクフィールドは三代公爵家ウェイクフィールド家の通称『赤い薔薇』、マーガレット・ヨークは侯爵ヨーク家の通称『白い百合』、そして、この私、三代公爵家ブラッドフォード家の通称『青い……』」
「暴君」
「そうそう、『青い暴君』……って違うわよ。『青いアイリス』よ。失礼しちゃうわね。いずれ、王立学校の三大美女の代名詞になるんだから」
「青いってのは、ブラッドフォード家の紋章に使われているからですか?」
「もちろんそうよ。まあ、イメージカラーとして、意識的に服装やアクセサリーでも青を使っているんだけどね。それはいいとして、この3人とお近づきになれるなんて、なんて幸運なんでしょう」
「エマさんとは全然仲良くはしていませんけどね」
「今のうちに仲良くしておいた方がいいかもよ。シャーロットがジョージルートになったら、エマはあぶれることになるから」
「それはもしや……」
「そう、エマ・ウェイクフィールドはジョージの婚約者として、今から4年後、王立学校で登場する。シャーロットがジョージを選ぶルートの時にね」
◇
「ジョージルートのことは知っているわね」
「はい。ゲームの主人公であるシャーロットがそのルートを選ぶと、魔王イベントが必然的に発生して、協力して世界を二人で救うという話になる」
「そう、そして、私はあまりそのルートには直接関わらないけど、なぜか、魔王軍が王立学校を襲撃するイベントが発生して、それに巻き込まれて死ぬっていうことになっているのよ。シナリオライターの悪意を感じるわ」
「つまり、シャーロットとジョージを結ばせるわけには行かないということですね」
「まあ、そういうことになるわね」
「でも、どうやって?」
「そこは思案のしどころよね。エマに頑張ってもらうか、シャーロットとアーサーをくっつけるか、それとも私がジョージとくっつくか」
「ジョージの抱えている悩みってなんですか?」
僕はその点を聞いてみることにした。結局、ゲームでパートナーと結ばれるには、その相手を悩みから救ってあげることをきっかけにすることが多いからだ。
「それは、家族問題ね」
「家族問題?」
「彼の母は早くに亡くなって、今は後妻がいるんだけど、その後妻と折り合いが悪いのよ。彼の父はジョン・レスター伯爵。国王の親衛隊長にして、この国で唯一の剣聖として知られているわ」
「そうですか、それで、剣聖ジョージ・レスターとなるのですね」
「それが、ことはそう簡単ではないのよ。彼には後妻から生まれて弟、ボブ・レスターがいるんだけど、後妻の方はその弟に伯爵と剣聖の座を継がせたがっているのよ」
「そうですか」
「それで四年後、彼はエマの結婚相手として、ウェイクフィールド家の養子に出される予定な訳ね」
「なるほど、確かに家格はエマさんの家の方が上ですからね」
「彼は精神的に相当、悩んでいた時にシャーロットが現れて彼の苦悩を救うの。それから、彼の運命がどんどんと変わっていくのね」
「そのきっかけはなんですか?」
「母の思い出の品よ、ゲーム内ではシャーロットが見つけることになっていけど」
「それがどこにあるか知っているのですか?」
「どこかにあるはずなんだけど、なかなか見つからなくて。だから、とりあえず、ジョージとは親交を深めつつ、王立学校に行ったら、勝負をかけるつもり」
「なるほど」
「とにかく、まずはあなたが彼と接触してちょうだい。アーサーの友人で剣も教えてもらっているって話だし、接触しやすいと思うわ」
「分かりました」
「ところで、あんた剣の修行はやっているの?」
「一応、この間、後継者として認められたので、やってますよ。それまではほったらかしにされていたし、庶民の時にはやったことはなかったですが。もちろん、最近やり始めたばかりで、なかなかうまくいきませんけど、剣術の先生もつけてもらいましたし、それなりには」
貴族の子息は剣術の稽古が必須になっていた。魔族との戦いには先頭に立って戦うのが貴族とされていたからだ。魔王を倒してからは、長期間魔族との戦いは行われていないが、剣術や魔術の稽古は貴族として今でも大切にされている。
「まあ、あなたが剣術やっているのは想像できないけどね」
「魔術の方が好きなのは確かですけどね」
「まあ、とにかく、結構うまく行っているわね。私たち」
「このまま、うまくいくといいですね」
「結局本番は4年後だから、気を抜かずにやっていきましょう」
「分かりました」
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