婚約阻止同盟
「姉さん。ここは一つ王太子殿下に協力してみてはどうでしょう?」
僕の提案に、姉は驚いた顔をしてこっちを見た。
「でも、色々と作戦の方が……」姉は少し渋っている。
「婚約イベントを先送りにして、王立学校まで持ち込めば、殿下がシャーロットとつきあう可能性は非常に高くなります。そうなったら、他の3人とつきあう可能性がなくなりますし、姉さんにとって最も平穏なルートになると思いますよ」
「シャーロットって誰?」アーサー王太子が不思議そうな顔をした。
「そのうち分かるわよ。細かいことは気にしないの」
「いや、だって」
「いいこと、アーサー。あなたに協力することに決めたわ。でも私にも条件があるのよ。私が頼んだら、なんでも一つだけ言うことを聞いてちょうだい」
「えっ、何を、まさか王位を譲ってほしいとか」アーサー王太子はマリアの方を驚いて見つめた。
「馬鹿じゃないの。それなら王妃になって裏で権力振る方が楽しいわよ。ふふふ、影の実力者も悪くはないわね…… そうじゃなくて、4年後、わたしたちが王立学校に入った時、ピンチに陥ったら助けてもらいたいのよ」
「そんな未来の話? 大体どうしてピンチになるって思ってるんだ」
「いいから、その時に頼んだら、何でもこちらの言うことを聞いてもらいたいのよ」
「うん、わかった」
あまりわかっていない様子だったが、それでもアーサー王太子は約束してくれた。まあ、普通、わからないよなあ。
「じゃあ、協力することにするわ」
「本当か、本当に協力してくれるのか?」
王太子の顔が急に明るくなった。
「まあ、でも婚約話を断る理由がねぇ。公爵家の方からお断りするとなると、かなり失礼になっちゃうし、両親ともに大反対するだろうし、現実的ではないわよね」
「まあそうですね。公爵家という立場上、こちらから断るのは難しいですね」
「あっ、そうだ。私があの時あなたに魔法で攻撃されて、とても恐ろしい目にあったから、絶対結婚したくないって言うのはどうかしら、嘘じゃないし」
「そ、それはダメだ。内緒にしておいてくれ」
アーサー王太子があわてて言った。
「じゃあ、どうするのよ。こちらからは断る理由なんて全然ないわよ」
「やっぱりそうか」
アーサー王太子は肩を落とした。
「じゃあ、エマでもマーガレットでもいいから、好きな子ができたって言えばいいじゃない。他の人とは結婚したくないって言えば」
姉は王太子の婚約者候補と世間で言われている人たちの名前を挙げた。まあ、ゲームの主人公シャーロットの名前を言っても分からないだろうしなあ。
「それも難しいですよ。姉さん。ディアナ王妃が晩餐会の始まる前に言ってましたよ。ウェイクフィールド家は武門の家系なので、これからの時代にはそぐわない。ヨーク家は魔族の血が入っているから、とんでもないって」
「そう…… でもねえ、他にどういう言い訳があるのよ」
「いや、その、マリアさんと結婚したくないっていうんじゃなくて、自分は本当に好きな相手じゃなきゃ結婚したくないんです。だから、適当に別の人と結婚するっていうのは意味がないんです」
アーサー王太子もそう言った。
「じゃあ、どうしろっていうの」少し姉は頬を膨らませた。
それからしばらくみんな黙り込んでしまった。やがて僕が口を開いた。
「王妃殿下の考え方を何とか変えるよう、説得するしかないですね」
「どうやって?」
王太子は身を乗り出したが、僕にもまだいい案は浮かんでこなかった。
「それはこれから考えていきましょう。彼女をうまく説得できる方法がそのうち見つかるかもしれません。今は情報が足りないので、何とも言えませんが」
「そうか、じゃあこうしよう。これから、定期的にここに来るから、その時に相談し合おう。母さんもこの家なら喜んで、外出許可を出すだろうし」
「そうしましょうか」
「しょうがないわねえ」
ここに、アーサー王太子と姉さんの婚約を阻止するため、奇妙な協力関係が出来上がった。
だが僕は、この機会に殿下と仲良くなるのことは、いつか役立つに違いないと思った。
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