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姉が悪役令嬢だった件  作者: おしどり将軍
王太子アーサー・カーライルの憂鬱

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晩餐会の行方

 皆が勢揃いでテーブルを囲み、始まりの合図を今か今かと待ちかねていた。


 王妃は訪問時から一転して、鮮やかな赤いドレスを身に纏っていた。周囲の女性たちもそれぞれ着替えはしていたが、訪問時よりも控えめにしている様子がうかがえた。皆、誰が主役なのかをわきまえているのだ。


 王妃は周囲を見回し、そして満足げな顔をしてうなずいていた。


 席順は王妃を中心に左隣に王太子が上座、そして王太子の隣に姉、僕、王妃の隣に父、母を配置し、王妃・王太子を挟んだような形になっている。あとは格付けの順番で交互に男女が並ぶように配置されていた。


 食事が運ばれ和やかに進む会食。執事を始め、給仕を行う人たちが客の合間をせわしなく行き交っている。僕は王妃の反応を確かめた。彼女はかなりご機嫌で父と話をしている。王太子から何かを言いつけられた様子には見えなかった。


 次にアーサー王太子の方を見た。彼はどこかぼんやりと正面を向いており、一言も話しをしていなかった。食事には手をつけず、少し血の気がひいたような青白い顔をしていた。


(だいぶショックを受けているのかもしれない)


「姉さん」


「ん、何よ」


 姉の方はというと、食事に夢中になってそれどころではないようだった。もしかしたらさっきの話を忘れているのかもしれない。僕はささやくような声で話しかけた。


「彼は自分のやってしまったことに相当ショックを受けているみたいです。うまくフォローできれば、こじれた関係を修復できるかもしれませんよ」


「あっ、そう」


 姉はあまり気にしていない様子だった。


「このままだとちょっと、まずいんじゃあ……」


 なおも話を続けようとする僕を制して姉はこういった。


「大丈夫、大丈夫。私に任せて」


 姉は右手の親指を立ててニヤリと笑った。


 すると突然、父と話をしていた王妃が、王太子に話しかけてきた。


「ねえ、アーサー。さっきはどうだったの」


 おそらく、先ほどの姉の案内の時、二人っきりだったので、その時の状況に関して聞きたいのだろうと思われた。


「ああ、うん」

 いきなりの質問に、言葉をにごすアーサー。


「大変素晴らしいひとときでした」

 姉が代わりに話に割って入っていった。僕は何か嫌な予感がした。


「アーサー殿下はとてもお優しくて、つたない私の案内にも決して怒らず、それはそれは、もう、夢のような時間でした」


 ディアナ王妃は満面の笑顔を浮かべた。


「そうだったのアーサー。さっきからマリアさんと会話の一つもないので大変気になっていたのですよ。もしかしたら、うまくいかなかったのではないかと心配しました」


「《《うまくいかなかったなんてとんでもございませんわ》》、王妃殿下。ただ、私の案内がうまくいかなくて、大変失礼だったのではないかと、とても心配で私の方から話しかけることができなかったのです」


 姉は少しうつむいてため息をついた。


「そんなことはありませんね、アーサー」

 少しピリピリした顔で、アーサー王太子を見る王妃。彼は明らかに慌てた様子を見せた。


「もちろんです。母さん。俺はそんなことは思っていませんでした」

 最後の声はちょっと弱々しい感じになっている。


「そうでしょう。ねえ、マリアさん。この子は、とても優しいんだけど、ちょっと不器用なところがあって、いつもヤキモキしているんですよ。本当は実力があるのに、うまくいかないことが多いのです」


「あら不器用だなんて、とんでもない。アーサー殿下は私に魔法まで見せていただけたんですのよ。風の呪文だったかしら。いきなりで私、びっくりしちゃいました」


 僕は制止しようとしたのだが、遅かった。ディアナ王妃はちょっとぽかんとした顔をしていたが、急に厳しい顔つきになりアーサー王太子を睨みつけた。


「マリアさんの前で、良い格好をしようとしていたのかもしれませんが、王族の人間がみだりに人前で魔法を使うなんて、とんでもありません。ましてや、あなたはまだ安定して魔法を使うことができないのですよ。マリアさんに危険が及んだらどうするつもりだったのですか」


 周囲の人間がただならぬ様子を感じ、会話が一斉に途絶えてこちらに視線が集中している。


「大丈夫ですわ、王妃様。私には《《全く》》当たりませんでしたし。だから、アーサー殿下を責めないでください」


「ああ、なんて優しい子なんでしょう。ますます、気に入りました。ブラッドフォード家はこんな素敵な後継者がいるなんて安泰ですね。さあ皆さん、大変失礼しました。楽しい会の続きをいたしましょう」


 ディアナ王妃は皆に笑顔を振りまき、安堵の空気が流れ、場はやがて賑やかな声で満たされていった。しかし、僕は王妃がこっそりアーサー王太子に声をかけていたところを聞き逃さなかった。


「アーサー、あなたには後でお話があります」


 その言葉を聞いて青ざめるアーサー王太子、そして、隣ではすっかり満足した顔をしてデザートに取りかかっている姉。


(これはまずいな)


 僕はやれやれとため息をついた。

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